シリーズインデックス:わが社の強みは??

【第20回】「Win・Win・Win」がビジネスチャンス (株)テル 専務取締役 竹中 ユミ子氏(京都)(2011.09.15)

竹中専務 (株)テル 専務取締役 竹中 ユミ子氏(京都)(2011.09.15)

京都で唯一の帽子メーカー

 (株)テル(竹中ユミ子専務・京都同友会会員)は、酒蔵が軒を連ね、旧い町並みの残る一角、伏見は「寺田屋」の程近くに所在するオーダーメイドを主力に帽子の企画製造販売を一貫して行っている会社です。

 創業当初は、ファッション帽子を手がける問屋の下請けとしてOEM生産を担い、業績を伸ばして社業を軌道に乗せるものの、ものづくりへのこだわりと下請けとしての立場が齟齬を来すようになります。

 自社の企画・開発力を問屋に吸い上げられ、製品化に目途が立つようになれば一方的に海外生産化される、裏地・下げ札に入れる自社ネームをカットされるなど、下請け故の難渋を経験しました。

下請け構造からの脱却5カ年計画

 そこから五年計画で下請け構造からの脱却をはかり、「生産者の顔を見せ、直接顧客に販売できる新規販路」を模索し、経営革新を進める取り組みがはじまります。創業から14年後の2005年10月のことでした。

 同社の帽子づくりを支える強みは、第一に海外生産品などの追随を許さない安定的な品質であり、これは長年培ってきた優れたパターン化技術や、職人による手作業へのこだわりで可能になっています。第二に、品質はもとより、婦人帽一筋(OEM)28年の経験により、日本女性の頭部に適した形状やデザインの帽子を企画することができること。そして第三に、豊富な経験や純国産、職人による手づくりという特徴を生かし、オーダーメイドや細やかな要望にも丁寧に応えることができることです。

 早くも翌年には、中小企業庁「経営革新計画」承認を京都府から受けたことをはじめとして、「オブジェクトハット」(帽子の柄を入れ替えることにより最大8パターンのデザインチェンジができる)で特許を取得するなど実を結んできましたが、その中でも同社のものづくり・経営姿勢をよく体現しているのが「あすなろ帽子」です。

社会貢献企業として、医療・介護・院内用帽子「あすなろ帽子」を開発

あすなろ帽子  今では全快したものの、社長である夫がガンを患い入院し、看護のために通った竹中氏が病棟で目にした光景は、強く胸を打ちました。
 そこには抗ガン剤治療により頭髪が抜け落ちたり、薄くなったりした女性患者さんの姿がありました。
 最初は気の毒に思ったものの、「おしゃれを楽しむことを通じて心安らいでほしい。帽子を被ることで気を晴らしてほしい。自社にできることはこれしかない」との一念から、患者さん用帽子製造の取り組みがはじまりました。 
 
 病棟内で要望を尋ね、敏感になった頭皮を傷つけない裏地の開発に2年の歳月を費やしました。その結果、ガーゼよりソフトでアレルギーなどの炎症にも最適な特殊裏地の開発に成功しました。
 眉毛を隠す、こめかみを深くするなどのシルエットを整え、被って寝てもよし、抜ける髪の処理も帽子の中でできるなど、ニーズを基に忠実にものづくりに反映しました。価格も5,000円以下に設定しています。

 その後、新商品を手に近畿一円を中心に約400軒の病院に飛び込み営業をかけ、その実績をもとに四国・東京・名古屋・東北にまで販路を広げました。今では約200の病院の売店や待合室にパンフレットを置き、電話一本の受注から現地に出向き、その人に合う帽子づくりをしています。

世界にひとつ、あなただけのオリジナル帽子~直販体制の安定へ

 竹中氏は「感謝の言葉を聞くたびに帽子づくりの手応えを強く感じ、教えられることも多い」と言います。「あすなろ帽子」は今では同社第2の売上を占める商品に育ちました。

 他には生地を立体縫製し、被るときの手間要らずバンダナ「蔵人」、夜間でも安全な外出ができる「反射安全帽子」などのオリジナル商品群をつくり出し、同時に商品特性に見合う販路を整えて、直販体制が安定してきました。

 それらの基本には共通して、「世の中で役立つ企業であり続ける(社会貢献企業)」との経営理念のもと、「『世界にひとつ、あなただけのオリジナル帽子』を届ける一品一品のものづくり」へのこだわりがあります。

“たすき掛け”の社員が支え、一丸となった商品づくり

商品  「ひとつのことしかできない社員はいません。生産工程の全てをすることができ、また営業担当社員も縫製ができます。お客さまの生の声を聞き、正確にフィードバックして商品づくりに反映することができる社員がいること。『たすき掛け』の社員が支え、皆がひとつになって商品づくりをしていることが強みです」。竹中氏は、自社の最大の強みをそう語ります。
 「洋服は縫えても帽子は縫えない」と言われるように、帽子の美しいシルエットは縫い代1mm~2mmの巾に針を運ぶ確かな技術が支えています。一部パーツの外注以外は全てを内製し、品質を維持向上されているゆえんです。

これからのこと~Win・Win・Winの関係を築き合う

 竹中氏は2009年3月から同友会に参加しました。現在は女性部会「ジョハリの会」で「知恵の経営報告書」づくりに取り組んでいます。この取り組みは、これまでの事業展開を振り返り、「知恵」を掘り起こして、活用する企業価値向上に向けた活動として、企業の将来性に関する認識の共有化を図ることを目的としています。

 「マス生産で同質化している市場の中で、生産者の顔がお客さまに見える立ち位置でのものづくりに臨み、買い手・売り手・作り手の三者がWin・Win・Winの関係を築き合える場にビジネスチャンスがあると、新たな商品づくりを進めています」と竹中氏は語ります。

会社概要

設 立:1979年10月
資本金:2,000万円
年 商:2億円
事業内容:帽子企画製造販売
従業員数:20名
所在地:京都市伏見区京橋町301番地
TEL: 075-612-2027
URL:http://www.telu.co.jp

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