シリーズインデックス:わが社の経営理念

【第22回】一人ひとりが主人公、100年後にも継続する事務所へ 弁護士法人 パートナーズ法律事務所 原 和良氏(東京)(2013.09.25)

原氏 弁護士法人 パートナーズ法律事務所 原 和良氏(東京)

独立、わかったつもりの事務所経営

事務所内の様子  原和良弁護士(弁護士法人パートナーズ法律事務所、東京同友会会員・国際ビジネス支援部会長)は独立前に12年間いた法律事務所の共同経営者トップを辞めて、2007年に現在のパートナーズ法律事務所を開設しました。

 それまでの共同経営事務所は約30人の弁護士と20名の職員がいる大きな事務所で、経営者として、また弁護士としても一定の収入を毎年あげていました。そのため、「自分は経営者としての実力がある」と自信をもっての新しい独立開業でした。しかし、開業から1~2年はまさに365日中1日の休む間もなく忙しい日々がつづき、自分がこれだけ世の中のため、顧客のために頑張っているのに、他の弁護士やスタッフはなぜそれが理解できないのか、「俺だけ働いていて、他は俺にぶら下がっているだけだ」とスタッフへの不信感が募っていきました。「忙しい自分ができるのだから他の人も苦労すべきだ、やって当たり前だと、自分のコピー人間をつくろうとしていました」と原氏は言います。しかし事務所の会議で公然と原氏への非難がなされるようになり、所属する弁護士は事務所を辞めていきました。

同友会との出合い、経営指針作成へ

 2008年9月に起きたリーマンショックにより、遺産分割事件も離婚事件も債務整理の事件も不動産処分ができなくなり、ピタッと事件解決が止まったことで、収入の見通しが大きく狂うことになりました。「リーマンショック以降の1年間は毎月、毎日、いつ資金が底をつくか、という夜も眠れない日が続きました」と原氏。2009年4月には事務所解散か、という事態にまでなりました。

 そんな時に東京同友会の先輩から「経営指針成文化セミナー」への参加をすすめられました。「事務所が大変で忙しいときに、そんなものに参加する時間などない」という気持ちはありましたが、事務所がよくなるきっかけがあるかもしれないと、2009年に「第32期経営指針成文化セミナー」に参加しました。
しかしセミナーで作った経営理念、経営指針はスタッフになかなか浸透せず、スタッフの入れ替わりもありました。それでも、原氏はスタッフに自分はこんな事務所をつくりたいということを繰り返し語り続けました。その中で原氏の思いを理解してくれる所員が少しずつ増えてきました。

 今、事務所では原氏のつくった経営理念、経営指針ではなく、みんなが参加して自分たちの「心のよりどころ」となる経営理念と経営指針を作ることに取り組んでいます。

 その実践として、2012年1月に原氏の個人事務所から法人組織にしました。個人事務所から脱皮して、個人に顧客がつく士業の世界で、個々人の構成員の個性を尊重しながらも、個人を超えた理念事務所の顧客、チームワークで活動する事務所をつくろうという取り組みです。「法律事務所を個人商店からグローバル企業、100年企業へ育てることに挑戦しています。自分のコピーをつくろうとしていた失敗を教訓に、それぞれの個々人の個性を認め、違いを認め合い、個々人の強みが最大限に発揮できる事務所であること。そして組織はトップが主人公ではなく、そこに働くみんながそれぞれ組織の主人公であり、一人ひとりが、主人公として充実した人生と職業生活を送れるように、条件を整えてあげることがホストとしての経営者の役割だ」と原氏は言います。

100年後にも継続する事務所へ

スタッフと  事務所の女性弁護士が流産をし、2度目の妊娠のときに切迫流産で再び流産の危機にさらされました。事務所ではみんなが心配し、みんなで協力して元気な赤ちゃんを生んでもらおうと、彼女が引き受けていた仕事を手分けして分担し、1カ月間の完全静養を取ってもらうことにしました。彼女からは原氏に「事務所に申し訳ないので休んでいる間の給与をカットしてほしい」という申し出がありました。でも原氏はその申し出を断り、次のように伝えました。「私はこの事務所を100年後にも継続している事務所にしたいと思っています。1人の所員がたかだか1カ月間健康上の理由で働けないからといって給与をカットしたら、100年後に私たちの孫やひ孫たちにどんな説明をするのか。100年後の子孫に、『自分たちのおばあちゃん、ひいおばあちゃんはこの事務所で働いていた』ということを誇りにもってもらう事務所にしたい。だから、カットはしません。そして、もし恩を返したいのであれば、これから10年後、20年後に同じような境遇に遭遇した後輩が事務所にいたら、そのときに同じように助けてあげて、今回の恩を返してください」と。

 10年後、20年後、100年にも継続する事務所をめざし、経営理念をもとに一つひとつの問題に取り組んでいます。

 原氏は「地域や社会全体をどうよくするか」いう観点も大切にしています。一つの事務所では解決できない弁護士業界の問題、若い弁護士の生活がなりたたない、入れる事務所がなくて困っている弁護士のための研鑚と経営を考える組織「一般社団法人弁護士業務研究所」を3年前に立ち上げ「お悩み相談会」や研修会、経営指針の勉強会に取り組んでいます。今年の3月にはOJTの機会に恵まれない若手弁護士のために、自身の失敗体験を記した「弁護士研修ノート」を出版しました。

経営理念

1. 私たちは、法的サービスを通じて人の幸せづくりのお手伝いのできる法律事務所を目指します。
2. 私たちは、仕事を通じて人間として成長する事務所を目指します。

会社概要

設 立:2007年 個人事務所(2012年 法人化)
年 商:100,000,000円 
事業内容:民事一般(相続・遺言成年後見・離婚・交通事故・借地借家)、会社関係、債権回収、債務整理、破産、民事再生、労働・刑事事件、在日外国人・在外邦人の法律相談、中小企業の海外進出支援(主に東南アジア)
従業員数:弁護士5名・職員4名
所在地:東京都豊島区南大塚3-36-7 南大塚T&Tビル4F
TEL:03-5911-3216
URL:http://p-law.jp/

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