シリーズインデックス:キラリと光る小さな企業

【第4回】「もったいない」を世界に幸せを呼び来る原点に (株)幸呼来Japan 代表取締役 石頭 悦氏(岩手)(2017.04.26)

石頭悦社長 (株)幸呼来Japan 代表取締役 石頭 悦(いしがしら えつ)氏(岩手)

「さんさ裂き織り」の誕生

 「幸せは呼ぶとやって来るよ」。(株)幸呼来Japan(サッコラジャパン)の社名の由来は、毎年8月に盛岡で行われる盛岡さんさ踊りのかけ声「サッコラ〜チョイワヤッセ(幸せは呼ぶとやって来るよ)」にあります。

 石頭悦氏((株)幸呼来Japan代表取締役、岩手同友会会員)が岩手同友会の障がい者問題委員会で特別高等支援学校を見学に参加したときのことです。生徒たちがあまり布や古布を細く裂いて織りこむ「裂き織」に一生懸命に向き合っている姿がありました。あまりの美しさ、緻密さに感銘を受け、そのとき初めて「裂き織」という伝統技術が地元で受け継がれてきたことを知りました。同時に「技術を習得しても卒業後の就職にはなかなか結びつかない」という先生の話が耳に残りました。

 当時自分が勤務していた会社の社長に「裂き織を事業としてやりたい」と直談判。2010年7月に裂き織の生産・販売事業を自ら立ち上げました。支援学校を卒業した障がい者2名を含む、計4人でのスタートでした。

 初めに取り組んだのは、岩手を代表する夏祭り「盛岡さんさ踊り」の浴衣を使うことでした。さんさ踊りでは、さまざまな企業・団体がそろいの浴衣を着てパレードに参加します。さんさの浴衣は色合いが美しく、カラフルです。その着古した浴衣をもらい受けて裂き織にし、縫製して美しいデザインに仕上げ、ポーチやペンケースなどを作成、「さんさ裂き織り」と名付けました。

純粋に商品のクオリティで勝負したい

工房の様子  そんな折、東日本大震災が発生し状況は一変しました。影響で裂き織事業を続けられなくなったのです。震災翌日、出社してきたのは、社長と石頭氏、そして障がいを持った社員の3人だけでした。その社員の強い想いに意を決し、2011年9月に会社を設立しました。社名には、東日本大震災で大きく傷ついた岩手、東北、日本に幸せが来るようにという思いも込めました。

 盛岡市内のさまざまな会社を一軒一軒訪問し、幸呼来の理念を伝え、商品への思いを語りました。当初は盛岡のみやげ品としてのイメージがありましたが、老舗の文房具店で扱ってもらうなど、デザイン性と完成度の高さが評価され、地域に次第に浸透していきました。

 そんななか、大手の通販会社さんからも受注が舞い込み、安定した生産体制が求められました。そこで障がい者の就労を支援する「就労継続支援事業所」の認可を受け、障がいを持つスタッフを追加雇用。また、地域の障がい者施設、裂き織サークルとも連携し、数量の多いオーダーにも対応できる体制をつくっていきました。
 大量の受注に応えることは、想像していたよりも大変なことでした。石頭氏は話します。「裂き織を事業にすると決めたときから障がい者支援というフィルターを通すのではなく、純粋に商品のクオリティで勝負したいと考えていた。しかし当時はまだまだ甘い気持ちがあった」

世界中に幸せを呼び込みたい

 工房の様子  音を上げそうなとき、助けてくれたのは社員でした。受注に応えるために、障害のあるなしにかかわらず一生懸命に自分の担当する部門に向き合う社員の姿に涙が出ました。

 「何のために自分は事業を始めたのか」経営者としての自分の弱さを実感。昨年、あらためて創業の想いを確認するために、経営理念を見直しました。経営理念の一番目に、「私たちは、人と地域を織りなし世界中に幸せを呼び込みます」と掲げました。そして、10年後の自社のビジョンを社員と描きました。

パノレーチェ  経営指針の実践は、新たな事業を誕生させます。新たな柱として、アパレルメーカーのあまり布(残反・使わなくなった生地)を使い、テーブルウェアやクッションカバーなどデザイン性の高い裂き織プロダクトを提案する「Panoreche(パノレーチェ)」。そして、今回新たに立ち上げたのが、メーカーから預かったあまり布で裂き織をつくり、新たな価値が付加された生地としてお戻しする「さっこらproject」を立ち上げました。

 「世界中に幸せを呼び込む」掲げた理念は、世界への発信の糸口を生み出しました。大手のスポーツメーカーやジーンズメーカーと共同での事業が生まれました。いよいよ今年、海外へ幸呼来の製品が輸出されます。

社会から頼られるお手伝いを

 石頭氏は話します。「木綿が貴重だった時代に生まれた裂き織には『もったいない』と思う気持ちや、ものを愛おしむ気持ちも一緒に織り込まれています。眠ったままの布と、技術を生かす場のなかった障がい者たち、そして細々と受け継がれる東北の伝統工芸。裂き織によってそれぞれに光を当て、社会から頼られ、生かされるお手伝いをしたい。私たちの事業が、それを実現する大きな可能性を持っていると信じています。」
 幸呼来Japanの岩手から世界への挑戦はまだ始まったばかりです。
社員のみなさん

経営理念

一.私たちは、人と地域を織りなし世界中に幸せを呼び込みます。
一.私たちは、地域のつながりを大切にし豊かな社会をつくります。
一.私たちは、互いに認め合い共に成長し豊かな心をはぐくみます。

会社概要

設 立:2011年
業務内容:裂き織製品製造・販売
従業員数:23名
所在地:岩手県盛岡市安倍館町19-41
TEL:019-681-9166
FAX:019-681-9165
URL:http://saccora-japan.com/

このページの先頭にもどる

携帯用QRコード
携帯対応について

更新情報RSS