【第36回】コチョウランで「きずな」を届けたい 松村洋蘭(株) 社長 松村 秀彦氏(山梨)

松村社長

松村洋蘭(株) 社長 松村秀彦氏(山梨)

てのひらサイズのコチョウランを商品化

松村洋蘭(株)(松村秀彦社長、山梨同友会会員)はコチョウラン(胡蝶蘭)に特化して、ランの生産・卸・販売を手がける会社です。何万円もする大輪のコチョウランが不況の影響で売れ行きが落ち込む中、いち早く中輪、ミディ(小型)に着目し、生産・販売してきました。

このほど、さらに小型化した手のひらサイズのコチョウランを商品化しました。フランス語で「きずな」を意味する「リ・アン」と名付けられたこのランは、5月の「母の日」商戦で目玉商品の一つとして採用されるなど、あっという間に品薄となるほどの人気ぶりでした。

若い人にも気軽に

同社では、これまでは花市場を通した花屋への販売が中心でした。「リ・アン」は、これまでの高級贈答のイメージを変え、若い人が気軽にプレゼントしたり、「自分へのご褒美に」と買えるような身近な存在にしていきたいと商品化したものです。

「結婚式場には、2人のメッセージを入れて結婚式の引き出物としたり、葬儀関係には、故人のメッセージを入れた白いコチョウランを初七日の引き出物とする、などの企画提案もしていきたい」という松村社長。キーワードは「きずな」です。

キーワードはきずな

「人と人が会って話す機会が減り、きずなが弱まっているように感じる。そのきずなを少しでも深められればと、リ・アンと名付けた。『小さなコチョウランを売る会社』ではなく、『きずなを提供する会社』になっていきたい」と話します。

以前は同じ洋蘭でも、シンビジュームの生産が中心でしたが、1986年からコチョウランに特化し、88年から市場出荷を始めました。最高益は一昨年、今回の不況ではさすがに売上は落ち込みましたが、大輪中心の同業他者が売上を激減させ、生産農家も減っている中で、早くから中輪、ミディに参入してきた同社は健闘しています。

同社では、苗を購入して育てるだけでなく、当初から実生培養を手がけ、品種改良によるオリジナル品種の開発・生産も行ってきました。「NORIKA」など、自社ブランドは十種ほどあります。同社ではいちはやく小型化への品種改良を進めていた種苗業者と出会い、「消費者によいものを提供したいから」と熱を込めて話したところ、その苗を分けてもらえた5社の中に入ることができました。

ランの再生事業でビジネスモデルを特許申請

さらにはこんなビジネスモデルも構想しました。「ランの再生事業」です。コチョウランの管理は素人である消費者には無理、というのは業界での一般通念でした。高価なランを1年でだめにしてしまうことへの消費者から「もったいない」という声をずいぶん聞いていたことから、ランの再生というビジネスモデルを考案することになりました。

仕組みは、ランの鉢に生産・流通履歴を埋め込んだICタグをつけ、一定の販売期間を経過したランを、花屋さんから買い戻し、再生し、再び市場に出荷、または、消費者から再生料を受け取って鉢を回収し、一年後に再生して消費者に返還する、というもの。特許申請もしました。

3月初めには「リ・アン」販売専門の新会社「OASISコーポレーション」を設立。花市場から花屋という既存の流通ルート以外にも市場を開拓していこうと、小売や流通など異業種企業との連携も模索中です。

会社概要

創 業:1978年
資本金:1000万円
社員数:3名(パート33名)
事業内容:コチョウランの生産・卸・販売
生産規模:本社温室4000m2
八ヶ岳温室4600m2
年間生産量:15万株
所在地:山梨県中央市極楽寺
TEL:055-273-2651
URLhttp://m-youran.com