【第38回】“発想”から“発送”まで一貫体制 武田紙器(株) 代表取締役 冨田 学氏(千葉)

冨田社長

武田紙器(株) 代表取締役 冨田学氏(千葉)

 段ボール箱・紙器の製造販売業を営む武田紙器(株)は、1962年に設立した会社で、冨田氏は3代目社長です。設立以来、設計から製造・物流の提案まで行う「一貫体制」を築いてきました。

「包む」「詰める」をコンセプトに

社内の様子

 1990年に入社し、1995年に社長に就任した冨田氏は、業界が低価格化の流れにあって、加工度が低く技術に差がつきづらいことから、より深い差別化を追求しようと取り組んできました。

 その中で“包む”“詰める”ことにコンセプトを見出し、1998年に食品、化粧品などのアッセンブル(組立)工場を設立します。「消費ニーズが多様化し、そのサイクルもますます短期化している今、商品のアッセンブル作業の効率化や品質管理は企業の大きな課題になっています。最新設備を導入し、工場の充実化を図るとともに、厳しい品質管理を徹底しています。材料の詰め・加工・組立作業をはじめ、商品の企画から在庫管理・物流のご提案まで、お客様の多様なご要望におこたえしています」と冨田氏は語ります。

 POP(販売店などの内外に展開される広告やディスプレー)や販売促進ツールの企画も手がけ、ノベルティーグッズや菓子など、メーカーと連携しながら企画・生産・アッセンブル・梱包・発送と、まさに「“発想”から“発送”まで」一貫した体制で行っています。「自社で取り扱う商品は、量産だけではありません。商品企画・サンプル・ダミーの作成など、付加価値の高いものや手間のかかるものにも対応しています」と他社にはない独自性を語る冨田氏。

 同社の強みである一貫体制は、新技術の導入・開発によって支えられています。複雑な形状の設計はCADを活用し、版下作成を内製化することで細かなニーズへのスピーディーな対応を可能にしています。また、製造工程では段ボール箱製造ラインの集積搬送結束装置(ストックデリバリーシステム・特許申請中)、段ボール検査装置を独自に開発することで、作業の効率化に取り組んでいます。

海外生産も日本同様確かな管理体制で

 2000年8月に海外での合理的な生産体制を整えるため、香港に香港武田有限公司を設立しました。設計・製造から商品の配送まで、海外ネットワークを活用した幅広い事業を展開しています。

 顧客が要望する品質・納期の厳守はもちろん、生産や検品などの管理進行は、海外の協力会社にそのまま委託するのではなく、香港武田が責任を持ち、一貫した管理を行っています。「海外生産の最大のメリットは、生産コストの削減。人件費・原価率・設備投資など、海外生産による合理化でコストを抑え、価格競争力のある商品を生産することができます。その一方で、海外生産では管理が行き届かないという不安材料もあります。このため香港武田では、設計・製造から検品・配送までのすべての過程で、当社の日本人専任スタッフが直接指導する徹底した管理を行い、お客さまに確かな商品をお届けできるよう、万全の体制を整えています」と冨田氏は言います。

化学分野に進出

アスタキサンチン乳化剤

 同社は2003年から強い抗酸化作用を持つ物質「アスタキサンチン」の製造販売に乗り出しました。この物質は、アンチエイジング、疲労回復などの効能を持つとされ注目されている物質で、食品などに使われています。柏市東部にあり、かつて水質汚濁で全国的に知られた手賀沼の水質浄化活動に取り組んだのをきっかけに、「ヘマトコッカス藻」という微細藻類から抽出する技術を開発し、オイル、乳化製材・粉末製品に加工して販売しています。その取り組みが評価され、昨年「第14回千葉県ベンチャー企業経営者表彰」で優秀社長賞を受賞しています。

常にチャレンジすること

 こうした同社の事業拡大、新分野への進出について冨田氏は、「中小企業にとって大きな損失は許されません。そうならないために、付加価値や価格競争力をどう向上していくかを常に考え、手を打ってきた結果です。その1つに支部例会での報告があります。毎年1回報告機会をもらい、自社の取り組み、立ち位置を見つめ直す機会として役立っています」と語ります。

 「社内については、段ボール工場の機械のセットや操作などに積極的に女性を登用しています。男性の得意分野のように考えられがちな作業に、女性ならではのきめ細やかさを生かすなど、『個人の主体性を尊重し、創造的な活動を楽しむ』という考えのもとで、社員にとって働きがいのある職場づくりを進めています。多角化しいろいろと取り組む中で、チャレンジする心が確実に根付いています」と語る冨田氏は、社員に熱い信頼を寄せています。

会社概要

創 業:1947年
設 立:1962年10月
業 種:段ボール箱の製造販売、POP、販売促ツールの企画製造、アスタキサンチン原料の製造販売
従業員数:100名(うちパート・アルバイト50名)
住 所:柏市高田1116-47
TEL:04-7147-2101
URL:http://www.takedashiki.co.jp/