【第16回】下請けから元請けへの脱却 (有)みたこ土建 代表取締役 美田 耕一郎氏(鳥取)

美田社長

(有)みたこ土建 代表取締役 美田 耕一郎氏(鳥取)

 (有)みたこ土建(美田 耕一郎社長、鳥取同友会会員)は、主に土木工事施工会社として1999年に創業しました。美田氏は2003年に鳥取同友会入会し、「経営指針成文化を学びたい」と滋賀同友会の「経営指針を創る会」20期受講生として参加し、経営指針を成文化しました。中同協発行の書籍『人間尊重の経営』『人を生かす経営~労使見解~』などを参考に積極的に学び、経営に邁進しています。

自社分析に取り組む

社屋

 2007年秋ごろから自社の危機に悩み始めます。2008年には下請率85%に対し、元請15%となり、決算書上利益は出ているものの、実態として慢性的に資金不足の状態になっていました。借入金もどんどん増加するなどさまざまな出来事もあり、強い危機感を抱きました。

 そこで現状把握をするため、自社分析に取り組み、「集金能力が弱い」等自社の弱みとなる問題点がわかりました。「企業としても経営者としても、駆け出しのころはできなかったが、やっと過去を検証し今後を見通すことができはじめた」と美田氏は言います。

下請け体質からの脱却

 それをもとに社員と向き合い話し合いを続け、自社が元請になれるかどうかを分析しました。その際、集金の確実性から、顧客は国または地方公共団体に限定し、「そこで受注ができるのか」「請負工事を履行できるのか」「会社を維持発展させられるのか」を検討しました。
同社のスタッフは年齢層が若く、未知な部分もありましたが、社員からの「ここまでやってきてあきらめたくない。やってみましょう」の声に背中を押され、「これから生き抜くためには地域に根ざした公共事業工事の元請になろう」と美田氏は決断します。

 さらに市町村や県だけでなく、ハードルは高いが国などの受注にチャレンジしていくことを全社員で確認しました。美田氏は「『全社を挙げて下請けを一切断ち、元請一本へ向かっていく』という大英断だった」と言います。

 しかし、元請へ転換することは生やさしいものではなく、すべての資源を投入し、あらゆる手立てを尽くすことになりました。それは社長自ら当然のことながら、社員の給与削減にまでおよび、数名の解雇者や退職者を出す結果になりました。

社員と共に

社員さん

 その一方で、事業の元請化と平行して、育休の導入・管理者休暇など独自の社内規定の改革にも着手します。さらに同業他社には負けないほどのIT導入や事務所のワンフロア方式導入などによって、社員自らがワクワクして仕事へ取り組む社内風土へと変わってきました。こうしたさまざまな取り組みによって、2008年の秋ごろから元請受注が結果として表れだしました。今では下請け5%に対し、元請95%になっています。

 「元請受注は自社の現状が地域から必要とされている度合いであり、必要とされればそれに比例して会社は成長発展していく。また、『地域の質』=『企業の質』を共に高めていくことが大切で、決して一人勝ちはできない。自社が社会の一部であると認識することから、会社だけでなく社会も良くなっていくのではないか」と美田氏は語ります。

 自社の強みは?と問うと、「以前は理解できなかったが、実は今も昔も我が社の強みは社員さんだった。今の経営者と社員との関係が続く限り、この会社は潰れる気がしない」と美田氏から力強い返事が返ってきました。

会社概要

設 立:1999年
資本金:575万円
年 商:2億3,000万円
事業内容:建設業
従業員数:15名
所在地:鳥取県米子市八幡486-1 
TEL:0859-39-7173
FAX:0859-39-7175
URL:http://www.mitako.com/