【第5回】同友会は人生の生きた学校 みらい経営研究所 代表 浅海 正義氏(愛知)

浅海正義氏

みらい経営研究所 代表 浅海 正義(あさうみ まさよし)氏(愛知)

「同友会活動」は会歴に関係なく横一線

 愛知同友会の名誉会員でもある遠山昌夫氏が菊水化学工業(株)を設立した時、浅海正義氏(みらい経済研究所代表、愛知同友会会員)はその会社に在籍していました。同友会創設にかかわりましたが、当時の会社はまだ小さく、二人も同友会運動に入り込んでいては、会社が回りません。しかし愛知同友会の創立と同時に、遠山氏が代表理事となり、この最初の課題が「会員増強」となれば、否応なく会員にさせられます。「いうなれば増強会員第一号だった」と浅海氏は言います。

 サラリ-マンからの転職の浅海氏にとっては、企業経営は全くの素人でした。それゆえ同友会での勉強や、先輩経営者の厳しい指摘に、歯を食いしばって頑張りました。そこから企業経営にも反映でき、「経営者の端くれに育てていただけました」と語ります。多くの知人、友人に恵まれ、まさに同友会は人生の生きた学校だと強調しました。

弱者に寄り添い、全国初の共同作業所を

 菊水化学を93年に定年退職し、95年に社会福祉法人ゆたか福祉会に非常勤の副理事長として就任しました。
 ゆたか福祉会は1968年、作業所の名古屋グッドウィル工業と言う名の共同作業所が作られました。しかし親会社の片山工業が突然倒産したことがきっかけで、そこで働いていた指導員1名と9名の知的障害者らが途方に暮れ、困難の中で出合ったのが、愛知同友会でした。

 「仕事もつくります。出資金を集めましょう」(当時の愛知同友会会員数は230名)。この遠山氏の一言で、保護者の方々も街頭に立って作業所建設資金を訴え、そして全国初の無認可の「ゆたか共同作業所」が誕生したのです。当然、浅海氏や多数の同友会会員も当初からかかわりました。

 この活動をきっかけに、全国に共同作業所が続々と誕生し、その職員たちを先頭に、1977年創設、今日の全国組織「社会福祉法人きょうされん」に発展しました。また、全国の同友会における障害者問題委員会の活動も、愛知同友会のこれらの動きがきっかけになりました。

ゆたか福祉会の身体障害者療護施設「グループハウスなぐら」にて

財団で展望を調査 中小企業憲章の先鞭に

 そして今一つ、浅海氏は「愛知県中小企業研究財団」の常務理事を務めています。この財団は、26年前の1993年に、「中小企業のための調査・研究・教育等の事業を行い、中小企業の自主的、民主的発展と連帯に寄与すること」を目的として設立されました。

 ただちに、各種講演会や出版活動を開催し、翌年94年には、「サ-ドイタリア」の実態を知るべく調査団を派遣し、北部イタリアの中小企業とスイスを訪問しました。

 その後、東京大田区の視察やアメリカの中小企業の現状など調査し、研究の道程を経て、2002年愛知同友会40周年記念事業として研究財団の提起した「オランダ、ベルギ-への『EU小企業憲章』研究調査」を行います。このことこそ、今日の中小企業憲章運動の口火であったと浅海氏は語りました。

未来を見据えた意見

 これからの同友会運動の未来を見据えて、三点の意見があると浅海氏は言います。

 一つ目は「海外中小企業関連諸団体との交流活動」を進める。特にアジア諸国の中小企業団体とも交流を深め、政府・行政への中小企業政策の発展を強く求め、友好関係を展開していくこと。

 二つ目は「理念から決算書まで」を同じ流れの中で捉え、経営指針の理念・方針・計画を文書と実践数字に提示し、どこが問題なのかを真剣に討議し、本当の意味での「労使見解」を基盤としての各社の質的発展につなげること。

 三つ目は「中小企業家の見地から展望する日本経済ビジョン」を広めること。今日、紛争・多様性の排除など、ビジョンを根底から覆す事態が日々発生しており、なお一層の平和と多様性を基盤として確立しつつ、「多くの方々と連帯して実現をめざす」とある事を重視し、会外の方たちへの広報・宣伝を強力に押し進めることを提言しました。

中同協設立50年に寄せて

中同協設立50周年祝賀会にて登壇する浅海氏

 「労使見解」は矛盾の統一です。「人間尊重」と「利益追求」を矛盾と固定的に捉えず、常に揺れる流動的な視点で捉え、それをいかに統一し、突破して、より高い段階へと螺旋状に発展させ得るかは、経営者の同友会運動の総合実践に懸っていること。血のにじむような、各社の試みで創り上げられる同友会で言う辞書の一頁。丸写しではなく独自に発展させる、それが同友会会員企業の「自主的近代化と強じんな経営体質」の基盤となると期待を語っています。

 中同協も50年の歳月を経て今日の到達点に立ち、この間、多くの困難を乗り越えてきたこと。今は亡き諸兄、退任された方々および現役員、事務局員に敬意と深い感謝を、同時にこれからの半世紀にむかって、まい進することを願ってやまないとエールを送っています。

<プロフィール>

 1928年3月生まれ。菊水化学工業(株)発足と同時に入社、役員を歴任し株式上場の足がかりをつくる。93年定年退職後、95年社会福祉法人「ゆたか福祉会」の副理事長に就任、顧問も務める。同友会では経営労働委員会の副委員長を始め、愛知県中小企業研究財団の役員を歴任。現在は常務理事を務める。またその間、「医療生協病院」建設にかかわり、副理事長に就任。新創業がお好き。

会社概要

会社名:菊水化学工業(株)
創 業:1959年
資本金:19億円
売上高:214億円
従業員:374名
事業所:42カ所
事業内容:特殊機能性材料、建築仕上材の製造・販売
URL:http://www.kikusui-chem.co.jp/

団体名:社会福祉法人 ゆたか福祉会
設 立:1969年(無許可ゆたか共同作業所、72年法人化)
利用者:600人
職 員:619名
予算規模:28億5,000万円
URL:http://www.yutakahonbu.com/

団体名:北医療生活協同
設 立:1964年
出資金:14億円
売上高:30億円
職 員:550名
組合員:41,000名
事業所:20カ所
事 業:病院、診療所、訪問看護、訪問介護等

名 称:みらい経営研究所
所 在:名古屋市中区
設 立:2012年
職 員:同友会会員、知人友人、多数
事 業:経営にかかわる諸問題
    研究中:「現状の中小企業は、日本経済の基盤たり得るか」