【第13回】21世紀型企業づくりへの挑戦 (株)ダイワホーサン 取締役会長 辻本 勝次氏(奈良)

辻本勝次会長

(株)ダイワホーサン 取締役会長 辻本 勝次氏(奈良)

社屋外観

 (株)ダイワホーサンは(辻本勝次取締役会長、奈良同友会会員)、1966年に大手企業のかばんの加工を請け負う辻本縫工所として創業しました。ニクソンショックやプラザ合意を契機とした急激な円高による輸出減少に経営基盤が翻弄(ほんろう)される中、外部環境の変化に対応して輸出用製品から国内スポーツバッグなど内需向け製品の加工業に事業を転換。その後、自動車用品やインテリア用品など異業種へも事業を拡大し、1988年に法人化しました。現在は裁断・縫製を主としたかばん、列車・自動車用品、介護・介助用品、防災・労災用品の企画や製造・販売を手がけています。2016年には創業50年を迎え、2018年、代表を娘の小百合氏に承継しました。辻本氏は2001~2009年には奈良同友会の代表理事も務めました。

「21世紀型中小企業づくり」に衝撃を受けて

作業の様子

 辻本氏は1991年に奈良同友会に入会、しばらくは事業多忙を理由に同友会の活動には参加していませんでした。転機が訪れたのは、事務局長に誘われて参加した1993年札幌での中同協第25回定時総会です。当時の相談役幹事であった田山謙堂氏による「21世紀型中小企業づくり」の報告を聞き、辻本氏は衝撃を受けます。そこに自社がいかなる外部環境の変化にも揺るがない自立型企業になるための道筋を見出したのです。
 その後、居ても立ってもいられず、教えを乞うために東京の田山氏の会社を訪問しました。田山氏は初めて面会する辻本氏の話に耳を傾け、「同じ同友会の会員であるならば」というだけで自社の決算書を見せてくれました。中同協の役員である田山氏が率先して学ぶ姿勢に辻本氏は感銘を受け、「勉強しなさい」との田山氏の言葉から、辻本氏は経営の学び方を教わりました。

21世紀のグッドカンパニーをめざす

園児・小学生向けのかばん

 「時代は絶えず変化し、その変化に対応しなければ企業の存続はあり得ない」。1994年に辻本氏は「21世紀に活躍できるグッドカンパニーを目指して」とのスローガンを掲げ、それまでの加工業から価格決定権を持てる製造販売業への事業転換を打ち出しました。

 同友会の経営労働委員会で学び経営指針書を作成、全社員会議を開き、そこで経営指針を発表しました。社員は最初からすんなりと受け入れてくれたわけではありませんが、辻本氏は下請けから脱皮するため自社ブランドを確立し、自主販路を構築し価格決定権を持てる企業になることが「21世紀型企業」として存続できると確信し、「より安く」ではなく「より違うもの」を作り出す挑戦を続けてきました。そうして続けることで、少しずつ社員の意識も変化していきました。また、ISO審査でも「経営指針に基づく事業発展のビジョンが明確である」との評価も獲得していきます。1998年から始まった経営指針の発表は今年で22回目を迎えます。

 こうして苦労しながら設備投資と新規開発に挑戦し続けることで、会社には次第にものづくりが好きな人が集まり、絶えず新しい仕事に挑戦する社風が築かれていきました。世の中から求められるものに高い次元でこたえ続け、今では列車の脱出器具やライフジャケットをはじめとする防災関連用品にも進出するなど手がける商品は多岐にわたり、ダイワホーサンはさらなる事業拡大を続けています。

 「会社の成長とは社員の成長である」と辻本氏。「社員一人ひとりが自らの役割を自覚し精進して全社一丸となることで、『顧客満足』と『社員満足』を実現しながら社会貢献をすることができ、自社が地域の灯として存在することができる」と言います。

あきらめずに続けること

 辻本氏は語ります。「『経営』とは営みを正すということです。経営者は情勢や時代の変化を正しく認識して、『現在の事業はこのままでいいのか』と常に自身に問いかけることが必要です。自社の存在意義を見つめ直し方針、戦略を絶えず考えることが経営者の仕事です。これまで同友会で必死に学び自社で実践してきました。苦しい時もありましたが乗り越えられてきたのは、全国の先輩に学んできたからです。うまくいかないことはたくさんありますが、絶えず学んで実践することです。そうすることで同業他社が廃業、激減する中、自社は生き延びることができました。困難は伴いますが、あきらめずにやり続けることが大切です」

中同協設立50周年に寄せたメッセージ

 中同協設立50周年、誠におめでとうございます。

 日本は先の世界大戦に敗れ、国土は焦土と化し国民は疲弊しきっておりましたが、爆撃や空襲から逃れることをしなくてもよい「平和」の有り難さを実感する中、国民の勤勉性をいかんなく発揮することで高度成長の先駆けとなっていました。

 一方、自由・平等のもと、大規模労働争議が連日多発する社会情勢の中、自主・民主・連帯の基本理念といわゆる三つの目的を掲げた同友会運動は正しく国家の灯であったと確信します。さらなる発展を祈念いたします。

会社概要

創 業:1966年
設 立:1988年
資本金:3,000万円
従業員数:36名
事業内容:鞄製造業。自動車・列車用品、介護・介助用品、防災用品の企画・製造・販売
所在地:奈良県宇陀市大宇陀野依220-3
TEL:0745-83-2785
FAX:0745-83-3524
URL:https://h-daiwa.co.jp/