シリーズインデックス:時代を創る企業家たち

【第15回】同友会での学びを生かした経営実践 九一庵食品協業組合 理事・会長 田 信義氏(長崎)(2019.10.09)

田会長 九一庵食品協業組合 理事・会長 田 信義氏(長崎)

社屋外観  九一庵食品協業組合(田信義理事・会長、長崎同友会会員)は、1995年に田信義氏の呼びかけにより、県内5つの豆腐メーカーが共同出資し、大村市に設立されました。

 田氏は、高校卒業後、父親が営む家業の青果店に入社しました。大村は昔から人参の産地として有名で、生産者から畑ごと買い、収穫した人参を洗浄し選別して市場へ出荷しました。出荷された人参は九州管内、広島、大阪で販売されていました。

 そんな田氏が豆腐づくりにかかわるきっかけとなったのは、田氏が28歳の時。地元のスーパーを経営する社長から、事業縮小に伴い豆腐製造コーナーを引き受けてもらえないかとの依頼があったことでした。そこから青果業と豆腐の製造販売をともに行いますが、野菜は、天候などの条件によって収益が不安定である一方、豆腐は毎日食べるもので安定した収益を見込めることから、次第に豆腐の製造販売へシフトし、豆腐の製造販売事業を専業にしました。

 その後、九一庵食品協業組合を創業し、現在では1日7万丁の豆腐を製造し、九一庵食品のファンを作るため小学生の社会科見学、主婦層、老人会など年間5,000〜6,000名の見学者を受け入れています。

こだわりは安全・安心・おいしさ

 強みは、安全・安心・おいしさへの徹底したこだわりです。まずは素材にこだわり、水は「名水百選」にも選ばれた多良山系の水で地下200メートルからくみ上げて使用しています。使用する大豆は、こだわりの看板商品は地元九州産のフクユタカや全国各地の大豆を使い濃厚でおいしい豆腐を、量販商品は北米の農家と完全契約栽培で遺伝子組み換えなどしていない大豆を使用しています。

 そして豆腐づくりの工程にもこだわりがあります。豆乳をつくる際は、大豆本来の栄養や美味しさを損なうことなく豆乳にするために、無浸水ひき割り皮むき製法という新たな製法を導入しました。大豆を煮る際には、普通は大量に発生すると泡により大豆への熱の伝わり方にムラが出てしまうため、消泡剤を使用しますが、九一庵食品では食べる人の健康を最優先に考え、圧力釜で大豆を煮ることでこの泡の発生を抑え、添加物となる消泡剤を一切使っていません。最後に豆乳を固めて豆腐にする際も、やはり食べる人の健康を考え、凝固剤を使わずに長崎県五島灘の海水を使ったより安全性の高い天然由来の「本にがり」を使用しています。そのこだわりの豆腐は、多くの人に愛され、九州・沖縄、山口、四国のエリアで販売されています。一方でそのこだわりゆえに人手が必要となり量産することが難しく、コスト削減が難しい面が今後の課題でもあります。

今の会社があるのは同友会のおかげ

工場の様子  田氏が1988年に長崎同友会へ入会して31年。入会当時は、将来的に大手に負けてしまうのではないかという不安があり、その後の大分での第8回九州・沖縄ブロック大交流会の記念講演での学びが後の九一庵食品協業組合の設立につながります。

 そして経営指針について学んだことが田氏にとってその後の経営実践の大きな基盤となりました。経営指針をつくることで会社の方向性を社員がわかるようにし、そのために自分がどう動いていけばいいか考えるようになりました。四半期ごとにその検証を行うなど社員が一丸となって仕事に取り組んでいます。「同友会で学び経営指針をつくっていなかったら今の会社はない」と語ります。

 また、「人を生かす経営」から、会社は社長のものではなく、社員全員のものであるということを学びました。そして社員が動かないのは教育できない自分が悪いのだとわかり、中小企業大学の研修に出したり、ISO9001を取得したりと社員教育に力を入れ、さらに現在はHACCP(ハサップ)の認証を受けるために取り組んでいます。また、「労使見解(中小企業における労使関係の見解)」を学び、社員を大事にすることを常に心がけ、経営理念にも「従業員と家族の幸せを考える」ことを取り入れています。そのために就業規則をしっかり定め、労働基準法を遵守し、よりよい職場環境づくりに努めてきました。積極的に参加している全国大会では、見学分科会で実際の現場の様子を見て、他社のよいところを自社に取り入れています。

 また、息子の義彦氏(同組合執行役員総務部長)も2016年に入会し、ともに同友会での学びを日々の経営実践に生かしています。

同友会に期待すること

 「日本の将来は厳しいのではないか」と語る田氏。今政府が進めている「働き方改革」の流れの中では生産性を向上させることが難しく、また、発展途上国の技術革新により国際競争が激化していることも指摘します。人手不足が深刻となっている中小企業では人件費も高騰しており、このままでは中小企業は会社を発展させることが難しいのではないかと危惧し、「同友会にはこの『働き方改革』の世の流れにあえて一石を投じてほしい」と田氏。 同友会会員には、「もっと多くの会員に経営指針をつくり、実践してもらいたい。経営指針があれば、会社はつぶれません」と激励します。

会社概要

創 業:1995年
資本金:4,000万円
従業員数:169名(正社員81名、パート88名)
事業内容:豆腐の製造販売
所在地:長崎県大村市東大村2丁目1808番地1
TEL:0957-52-0900
URL:https://kyuichian.com/

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