【第20回】「欠くべからざるもの」をつくる 電光工業(株) 取締役会長 河辺 嘉行氏(東京)

河辺嘉行社長

電光工業(株) 取締役会長 河辺 嘉行氏(東京)

 東京同友会の会員企業には、すぐれた技術開発により厳しい時代を経て生き残ってきた企業があります。電光工業(株)は三相誘導電動機(モータ)を回すときに使う始動器の専門メーカーで、その分野でのトップメーカーです。現在親子三代にわたり堅実に経営しています。

「川があれば生きていける」

商品写真

 同社は1946年に設立されました。河辺氏の父で前会長の河辺孝郎氏は技術者として茨城県の日立製作所に勤務。敗戦後の日本復活を夢見て得意のモータの修理を始めました。荒川区に移ってきたのは、「川があれば生きていける」という信念からでした。敗戦後の困難なとき、生きるのに欠かせない水がある川の側に工場をつくることで生き延びようと前会長は考えたのです。

 同社は、消火ポンプの制御盤に組み込まれモータ始動時の負荷を低減する「始動器」を開発、販売しています。同社の始動器はモータにほとんど負荷をかけないことや損傷や劣化を防ぐこと、電力使用量の大巾削減を図ることから、高効率・省エネルギー製品として東京スカイツリーやドーム球場など多くの場所で使われています。

 「お客様が困っていることを解決するのを喜んで、社員はおもしろがって仕事をしていますよ」と河辺氏は柔らかな笑顔で言います。

同友会あっての現在

 河辺氏は求人のために神田近くの学校をまわりました。しかし「毎年2人ずつ採用する」と話しても、大量採用を約束する会社に先を越されます。偶然NHKのテレビ番組で同友会の共同求人の案内を見て入会を決意。「共同求人で100社集まれば200人の採用ができる。それならば中小企業に採用の機会があると直観した」と河辺氏は言います。

 河辺氏は東京同友会荒川支部の二代目支部長で、初代は井上三郎氏です。「井上さんにも共同求人の先輩方にもたくさんの経営のヒントをいただきました。同友会で学んだことを実践して今があるのですよ」と、現在も月1回、支部例会への参加は欠かしません。

 同社の清水孝浩営業部長は公務員に合格したものの病気を理由に採用を断られ、共同求人を機に同社に入社。心臓にペースメーカーを入れて営業一筋35年、同社の貴重な働き手です。「共同求人があってのわが社であり同友会あっての電光工業だ」と話します。

会長として

 2011年、長男に社長を譲り、一線から距離を置いたことで、社員との会話が増えました。そのおかげで、社員が何に困っているかがわかりました。社員の困ったことを理解してそれぞれの働き方を快適にと、多様な働き方を実践しています。

 「モータの修理屋として当社の製品を知ってもらえたらうれしい。お礼に修理をする。発電機を小さくできる。よく壊れるモータがあれば仕事の好機として原因を探り研究開発する。世界をめざすモータ始動器メーカーとして最後まで頑張る」と、河辺氏は微笑みながら語ります。

数々の受賞

100万人の働き手づくり

 「全国の同友会の5万人の会員が20人ずつ雇用すれば100万人。その5万人の中小企業の経営者がよい経営をすれば社会は変わる」という河辺氏。 東京同友会の機関誌『月刊中小企業家』、また中同協機関紙『中小企業家しんぶん』は毎号欠かさず全てに目を通しています。全国の異業種企業の宝庫、ビジネスのチャンスもそこにあると、東京同友会にとっても欠くべからざる貴重な経営者がここにあります。

会社概要

設 立:1946年
資本金:3,000万円
事業内容:モータ始動器(Vスター、Rスター、Nスター)製造販売
従業員数:25名 
所在地:東京都荒川区東尾久2-41-5(本社)
URL:https://www.denkoh.com/