【第33回】企業の成長の源は人育て 濱島印刷(株) 代表取締役社長 前田 幸一氏(鹿児島)

前田幸一社長

濱島印刷(株) 代表取締役社長 前田 幸一氏(鹿児島)

 濱島印刷(株)(前田幸一代表取締役社長、鹿児島同友会会員)は、創立以来、一貫して地域社会に「時代の情報」を印刷業を通じて提供してきました。「Inter Heart Communication」の経営スローガンのもと「お客様とのパートナーシップ」「社員の夢実現へ」「時代の要望に応え、地域サポート」を3つの柱に掲げ、企業と街と人々に新しい価値を提案し続けています。

 同社は、前田氏の義父が創業し、62年目を迎えています。

印刷業界について

 同社は、商業印刷が中心で小ロット印刷から中ロット印刷を中心に稼働しています。印刷業ということもあり、名刺、ポスター、カタログ、チラシなども手がけています。近年、紙媒体の市場はインターネットの普及などにより縮小傾向にあり業界としてもどのようにして生き残っていくべきか、新しい事業展開を行うか決断を迫られています。
印刷機械

「共同求人」との出合い

 前田氏は、濱島印刷へ企画デザインの臨時社員として入社しました。当時の会社は、仕組みも教育制度も不十分で、入社間もないころから残業が続き、得意先に一人で企画デザインの打ち合わせに行かされることもありました。しかし、当時の前田氏が書いた企画書やラフデザインが受け入れられ、その世界にはまっていきました。その一方で、会社では営業と工場が仕事に対する温度差や社長が朝礼で売上やミスに対して怒鳴るなど、会社として大丈夫かと前田氏は不安に感じていました。

 そのようなこともあり、前田氏は意を決し「会社改革論」と題してレポート用紙を社長に提案することもありました。その後、銀行を退職し入社をしてきた社長の娘さんとご縁があり、濱島印刷の後継者として会社経営を歩むことになった前田氏は3年間東京の印刷会社で修業を行い、再スタートを切ることになりました。

 しかし当時の会社は、組織として成り立っていない典型的なトップダウンの会社でした。新卒や中途採用を行っても入社してはすぐに辞める繰り返しでした。一緒になって将来の夢を語り希望を持って働く社員が必要と痛感し、本格的に新卒採用を行い、育てることを決意した前田氏は、鹿児島同友会が設立された1988年の翌年に同友会へ入会し、共同求人委員会に参加して学びを深めていきました。

同友会の学びで実践してきたこと

子育て支援情報誌「クレセール」

 共同求人委員会に参加し、初任給、福利厚生、経営指針をきちんと明示する必要性を感じ、採用活動を行いながら、経営指針を成文化していきました。人を雇うことによりどのように売上を上げるか、新卒者だけではなく既存社員からも不平不満が出るなど「共同求人では現場の声から叩き上げられて、経営者として成長できた」と話す前田氏。

 社内では、共同求人委員会で学んだブラザー・シスター制度を取り入れ、入社2、3年目の社員に新卒のお世話役として物心両面のサポートを行う仕組みも現在でも続けています。

 前田氏は、鹿児島同友会の共同求人委員長、代表理事、中同協の共同求人委員長など歴任をしてきました。全国各地同友会の仲間から、業種は違えども考え方が近く、どのような手法で実践しているかということを愚直に学んで実践をしてきました。よくいろいろな会員が「会社は舞台、社員が主役、社長は影の演出者」と表現していますが、企業は人育てに尽きます。教育研究者の故・大田堯氏が「共育ち」について語っているように、「共育ち」の「答えは一つではなく長い時間をかけて粘り強く、愛情を持って接すること」を心がけてきた前田氏。「日常で同友会理念から外れそうになった際も、何のために同友会で学んだか今でも頭をよぎる」と言います。

中同協設立50周年に寄せたメッセージ

 昨今の同友会運動は先進的でさらに素晴らしく、学びを深め経営のヒント、知恵を絞り展開をしているのは異業種の経済団体だからこそできる強みです。年齢、会社規模、入会歴は異なっても同友会理念に基づいたプラットフォームで学ぶことが自分自身を見つめるきっかけや経営課題を見つけるきっかけになります。同友会に入会して30年以上が経過し、現在の会社や自分自身があるのも同友会で学んできたことが大きい。同友会全体で経営の成功事例、失敗事例など幅広い事例の「辞書の1ページ」が存在しています。それをもっと会員が活用できるようになることを期待しています。

会社概要

設 立:1959年
資本金:1,000万円
事業内容:オフセット印刷、企画デザイン、IT関連、出版事業
従業員数:39名
所在地:鹿児島県鹿児島市上之園町17-2
TEL:099-255-6121
URL:http://www.k-hamashima.co.jp/