【第38回】経営者の仕事は経営判断にあり 服部製紙(株) 取締役会長 服部 豊正氏(愛媛)

服部豊正会長

服部製紙(株) 取締役会長 服部 豊正氏(愛媛)

会社外観

 服部製紙(株)(服部豊正取締役会長、愛媛同友会会員)は「紙の町」四国中央市にある大正1914年創業の老舗企業。服部氏は1966年に入社し、愛媛同友会(1985年創立)の草創期メンバーで、代表理事も1999年から14年務め、まさに愛媛同友会の歴史とともに歩んできました。

 多ロット、多品種の製造ラインを持つ強みを生かし、ウエットティシュ、タオルペーパー、電解水アルカリクリーナー、台所関連商品、化粧品などの商品を開発・生産しており、界面活性剤を使わないなど環境にやさしい商品を扱う環境企業となっています。

同友会で「社員一人ひとりをどう生かすか」を学ぶ

 当初は3K(汚い・危険・キツイ)職場だった紙製造業界。社員の定着率も悪く、ある時社員から会社を「やめさせてくれ」と相談があり、「今の専務(当時、服部氏の兄)の方針についていけない」と話され、引き止めきれなかったというショッキングな出来事がありました。社員が「よし、やろう!」と前向きに働ける会社づくりができなければ会社は伸びない」と悩み、他団体で勉強をしながらも悶々としていたところ、1986年に愛媛同友会の川之江・伊予三島支部(現在、四国中央支部)設立準備例会で故・三宅昭二氏(当時、香川同友会会長)の経営体験報告を聞く機会があり、「三宅さんのような会社づくりをしたい」「社員のことを本気で考えるところに経営の真髄がある」と感じた服部氏。それが入会のきっかけとなりました。

 その後、1987年に川之江・伊予三島支部の初代支部長として、設立総会で故・太田堯氏(当時、日本教育学会長)を招き、「人はその持ち味でとらえ、出番を与えること」だと講演され、「社員一人ひとりを人間としてどう生かすかを学ぶことから当支部がスタートした」と服部氏は当時を振り返ります。同友会では、全国行事にも参加し、中同協・社員教育委員長の故・大久保尚孝氏の話もよく聞き、経営者と社員が「共に育つ」ことが自社の社員教育の基本的考え方としていくようになりました。

企業経営の転機 ―社内グループ討論でできたキーワード「快適な生活づくり」と事業を“やめる判断”

地球の王様お掃除クリーナー

 さまざまな失敗や経験を繰り返してきた服部氏の経営体験の中でも、会社のターニングポイントとなったことは大きく二つあります。一つは、1988年に自社で同友会のグループ討論を取り入れ、社員が主体的に「どういう会社にするのか?」と自社の方針を徹底的に話しあい、今後の服部製紙は「快適な生活づくり」をする会社だという共通言語を練り上げたことです。

 また、公害などへの深い反省から、水資源の汚染防止など環境に貢献する商品を展開していきます。「快適な生活づくり」というキーワードは、社員のやりがいある会社づくりを目標としていた服部製紙にとって、発展の原動力になりました。

 二つ目は、主力商品のトイレットペーパー事業の“やめる決断”をしたことです。価格競争が激しく利益率は低いものの、2013年当時には約33億円の売上のうち5億円程度にも上るものでした。もちろん一時的にその売上は下がりますが、結果的に別事業に経営資源を投入して集中できるようになり「途端に利益が出るようになった」と言います。「よくある中小企業の問題の一つに間違った判断による設備投資がある」と服部氏。まさに経営者の仕事というのは経営判断にあり、トップの決断は重要だと語ります。時代の流れをくむ先見性を身につけるために学ぶことが重要であり、同友会の例会では今まで認識していなかった自社の経営課題を“発見”する、気づきも大事だと話しました。

同友会への期待―中同協50周年に寄せたメッセージ

 いま中小企業・小規模事業者が減る中で、全国的に会員が増えている会は同友会だけではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の深刻な影響の中、「苦しいからこそ伸びる会」として故・大久保尚孝さんの話した“激動を友にする”同友会の真価が試されています。昔に比べれば、国や行政は中小企業の声に耳を傾ける時代に変わってきました。中小企業家が一体となって声をあげて行政に提言することが何より重要です。

 同友会が運動方針で提起したSDGs(持続可能な開発目標)への挑戦も重要で、これからの中小企業には環境経営の視点が求められています。これからも環境問題には意欲的に取り組んでいきますが、特に若い会員には「挑戦できる」という強みがあります。人間とは学び続ける存在です。人間の心は易きに流れやすいですが、若い方には学ぶという気持ちを大事にし、積極的に外に出て学ぶ機会を作り続けてほしいと思っています。

経営理念

水の力と紙の可能性を創りだし「感動」を明日につなげる企業を目指します。
(人と環境に負荷をかけない商品を開発し、使ってくださるお客様に感動していただける企業を目指す。)

会社概要

創 業:1914年
設 立:1950年
資本金:8,350万円
事業内容:ティッシュパーパー、ウエットティシュ、その他台所関連商品、タオルペーパー、電解水アルカリクリーナー、化粧品、その他ギフト関連商品製造・販売
従業員数:178名(パート20名含む)
所在地:愛媛県四国中央市金生町山田井171番地1
URL:https://www.hattoripaper.co.jp/