【第37回】リーマン・ショックの教訓を胸に (有)伊藤歯車製作所 代表取締役 伊藤 雄一郎氏(大阪)

伊藤雄一郎社長

(有)伊藤歯車製作所 代表取締役 伊藤 雄一郎氏(大阪)

社屋

 (有)伊藤歯車製作所(伊藤雄一郎代表取締役、大阪同友会会員)は関西国際空港の近く、だんじり祭で有名な岸和田市にあります。伊藤氏の祖父が歯車工場として1951年に創業しました。当時は地場産業であった紡織機メーカーなどの専用機の部品として、歯車を加工していました。その後、法人化し、現在の工業センター内に移転しました。

 2代目は伊藤氏のお父さんです。バブル経済が終わる時期でそれまで主流であった歯車の歯切り加工のみの部分加工から、材料調達から完成品まで工程管理をしながら歯車部品としての製造が主体になりました。

 伊藤氏は、2018年に事業を引き継ぎ、現在は32名の社員と一緒に、歯車の製造と社内の風土づくりに取り組んでいます。

リーマン・ショックで経営課題が浮き彫りに

歯車部品

 同社はリーマン・ショックの時に浮き彫りになった経営課題の解決のために経営指針を作成・実践してきました。その結果、今回のコロナ禍でも計画を進めることができています。

 同社の強みは歯車という特殊な加工を要する歯車部品の多品種小ロットの対応ができることです。この強みを生かすには業界の慣習に捉われず納期・値段を自分で決められるようにすることです。そのためには、多品種小ロットの緻密な工程管理が必要になります。この課題を解決するためにコロナ禍前より、大学と連携し今まで同社で積み上げた製造に関するデータとAIを組み合わせて工程などを管理できるシステム構築をしています。またベテラン技術者頼みになっている技術についても、技術の承継のために社員の多能工化をめざし新卒採用など求人活動も進めてきました。

 同社は製造業のためにコロナ禍でもリモートワークができません。伊藤氏は定時まで働くという考え方から、今日やるべきことを終わらせれば終業という考え方にシフトできるのではと考えています。

 大型機械を導入し、市場開拓も行っています。現在の場所で工場の加工設備の効率化を考えたレイアウトに変更し、さらには事務所棟の増築やトイレのリフォームを行う計画をしています。「外注への依頼や納期管理もよりスピーディーな対応ができるようにしていく」と伊藤氏は語ります。

夢が持てる企業風土とその夢が叶う会社へ

 伊藤氏は同社が掲げている2023年ビジョンの実現に向けて、現在もさまざまなことを進めています。めざすは「夢が持てる企業風土とその夢が叶う会社」です。社員との間には、まだまだ課題はありますが、少しずつでも着実にそのビジョン達成に向けて進んでいる事実を社員に見せ「ほらな、大ぼらでもなんでもなく、言ったことがホンマになっていくやろ」と伝えることで、伊藤氏だけの小さな夢から社員全員が大きな夢に向かう企業にしていくと語りました。

会社概要

創業:1951年4月
設立:1957年4月
資本金:1,500万円
年商:2億4,000万円(2020年度1月期)
業務内容:各種歯車及び歯車関連部品の加工・製造・歯切り、歯研、設計、ミーリング工事一式および設計
社員数:32名
所在地:本社・工場/大阪府岸和田市磯上町(岸和田工業センター協同組合内)
URL: https://ito-haguruma.jp