【第37回】社員の雇用を守ることで危機を脱却!! 大和警備保障(株) 代表取締役 川田幸範氏(香川)

大和警備保障(株) 代表取締役 川田幸範氏(香川)

 香川県高松市で警備業を営んでいる大和警備保障(株)(川田幸範代表取締役、香川同友会会員)。1982年に川田氏の父親が「従業員を大事にする会社を作りたい」と創業しました。施設警備とイベント警備を強みとしており、イベント警備においては県内では一番の実績を有しています。

経営者への道のり

 川田氏は、高校卒業後自衛隊に入隊しますが、22歳の時に先代に呼び戻されて仕方がなく大和警備保障(株)に入社します。戻った当初は事業承継するつもりはまったくなく、役員の役職を辞退して一社員として現場仕事からスタートします。
 同友会に入会したのは、33歳のとき。先代と付き合いのある経営者からの誘いを受けて入会しました。入会してすぐに休眠会員となり、お酒の席にだけ顔を出していましたが、お酒の席での失敗を先輩経営者に本気で叱ってもらったことで、経営者としての変化の必要性を自覚し、同友会に本気で向き合うようになりました。それからすぐに経営指針を創る会に参加して、経営理念を成文化。2016年12月に代表取締役社長に就任します。代表就任後最初に取り組んだのは社員の給与アップでした。「社員の将来や人生設計を描ける会社にしたい」と先代の反対を押し切って実施しました。給与アップの実施に際して当初は赤字を覚悟していましたが、社内の意識があがったことで結果は黒字となりました。

「誰一人、解雇しない、させない。」

 業界の慢性的な人材不足、業績の横ばいという閉塞感が漂う中、コロナの脅威が襲ってきました。県内各地のイベントはすべて中止になり、自社の強みのイベント警備の仕事はすべてなくなって大打撃を受けました。労働集約型の事業である警備会社にとって、この先行きが見通せない状況は厳しい経営判断を迫られるもので、人員整理に踏み込む同業他社も少なからずいました。しかし、川田氏は「1年間はどんな状況になっても皆さんの雇用は持続させる」「誰一人として解雇しない」と社内で宣言し、雇用維持を約束して行動を起こしていきます。最初に取り組んだのは雇用調整助成金の申請でした。同友会のセミナーにすべて参加し、当初はまだ繁雑だった申請業務を自身で行いました。並行して新しい仕事の模索を行っていると、コロナ禍でのテイクアウト需要に関連した警備の仕事や契約更新に伴う新しい施設警備の仕事の話が入ってくるようになりました。
 一時は売上も落とし込みましたが、現在ではコロナ前の水準に戻っています。コロナ前は、人材不足によって外注依存度が高くなって利益を圧迫していましたが、雇用を守り維持していたことで外注の比率が下がり、コロナ前と同じ売上でも利益率が高くなるという結果になりました。また、新しい仕事が入ってきても迅速に対応できる体制が維持できていたために、顧客からの信頼を早々に獲得することができたとのことです。

経営指針に向き合う

 このような危機的状況に対応できたのは、「経営指針書をもとに常に危機意識を持ちながら社員と一緒に次の手を考えていたからこそ」と川田氏は言います。社員の雇用を守ることを覚悟して、経営指針を軸に本業に真摯に向き合うことがコロナ危機からの脱却につながりました。

経営理念

「信頼の和、大きくつなげていく」

会社概要

設立:1982年
資本金:1,000万円
社員数:75名(役員・パート含む)
年商: 2.6億円
事業内容:総合警備業
住所:〒761-8062 高松市室新町2番地5
URL:http://www.daiwa-kb.com/