【第39回】企業変革で人と人をつなぐ虹色の架け橋に (株)Orb 代表取締役 河井 七美氏(岡山)

(株)Orb 代表取締役 河井 七美 氏(岡山)

Eコマースで起業し、県内外から注目を集める

 河井七美氏((株)Orb代表取締役、岡山同友会会員)は20 代でシングルマザーとなり、子育てしながら働き続ける困難を実感。その経験から、多様な働き方ができる職場をめざして「⾦なし・コネなし・資格なし」で、2013年に(株)Orb を創業しました。
 以後、ネット通販会社の勤務経験を生かして日用品や家庭用医薬品などのEコマース事業を展開し、薄利多売で瞬く間に軌道に乗せることに成功しました。また他社の販売価格や売れ筋ランキングを自動集計するシステムを構築し、その中から利幅が取れる商材を選定するなど、意欲的なアイデアを次々と具現化。創業2年目にして年商が2億円に達するほどの急成長を遂げました。
 16年には『攻めのIT経営中小企業百選』と『はばたく中小企業・小規模事業者300社』にダブル選定され、一気に世間の注目を集めました。

順風満帆から一転、撤退へ

 しかし、17年ごろから実店舗を構えるドラッグストアのネット参入が相次ぎ価格競争が激化。そこに運賃の値上げが重なり利幅は大きく減少しました。さらに18年の西日本豪雨で発送の遅延が生じ、プラットフォーマーから一時利用停止のペナルティを突き付けられる事態に・・・。河井氏は当時を振り返り、「停止期間中は売掛金の入金も止められ、このビジネスのリスクを思い知った」と語ります。
 Eコマース撤退を決断したのは20年。新型コロナウイルスの急拡大に伴ってマスクの悪質な転売が社会問題化し、批判を恐れたプラットフォーマーは、適正な価格で販売していた業者も含め十把一絡げにサイトの利用中止を求めたのです。誤解を解くために河井氏は過去の販売実績を説明し、多大な労力を費やしてようやく再開にこぎつけたものの、今度はサプライチェーンの混乱で商品の調達が困難な状況に陥りました。こうしたことが重なり、「利幅が少なく自由も利かず、他社に依存して成り立っている今のビジネスモデルに未来はない」と、撤退を決めたのです。

再起を賭けた事業転換

 Eコマースにかわって河井氏が事業の柱に据えたのはWEB制作とシステム開発でした。それまでも細々と続けていた部門ですが、徐々に需要が増えていたため可能性を賭ける決断を下しました。
 しかし事業を大きく転換するには、スタッフの理解を得なければならないことに加え、彼らがシステムやデザインについて学び直す時間も必要でした。事情を説明すると会社を去るスタッフもいましたが、何人かは「初めてのことばかりですが頑張ってみます」と言って残ってくれました。そして雇用調整助成金を活用したり訓練校に通ったりして全員で企業変革に取り組んだ結果、初年度で黒字化を達成。以前は発送作業を担当していたスタッフが一年足らずでプロフェッショナルなデザイナーに育ち、「今の方が楽しい」と積極的に仕事に取り組んでくれるようにもなりました。

「売ること」の支援から「売る人」の支援へ

 河井氏は(株)Orbの事業について「創業当初は『魅力的な商品を世に届けたい!』と考えて企業の『売ること』のお手伝いを行いました。今は売るノウハウや組織の課題解決を提案して『売る人』のお手伝いを行っていますが、根底にある『魅力ある商材が世界に羽ばたくお手伝いがしたい』という思いは変わりません」と笑顔でガッツポーズを決めてくれました。
 河井氏の挑戦はまだ始まったばかりです。

会社概要

設立年:2013年
資本金:200万円
年商:5,000万円 
従業員数:6名
事業内容:WEB制作、システム開発、市販システムの導入支援(レクチ
     ャー含む)、SNS運営代行
住所:岡山県倉敷市吉岡242-1
電話番号:086-441-5760
URL:http://www.orb-rela.com