【第19回】どんな時でも感動をクリエイトすること (有)アドセンターパル 代表取締役 中井史生氏(鳥取)

(有)アドセンターパル 代表取締役 中井史生氏(鳥取)

 (有)アドセンターパル(中井史生代表取締役、鳥取同友会会員)は昭和48年3月に設立し、来年で50年目となる鳥取で最も古い広告代理店の1つです。中井氏は2代目として後を継ぎ、同友会の学びを経て「感動クリエイト〜心を動かし世の中をもっと楽しく〜」を経営理念に掲げ、世の中に感動の火を灯すプロモーションを心がけてきました。

 「経営を安定させる上で事業の柱は複数必要」との考えから、広告に加えてイベントの企画運営にも力を注ぎました。イベントは広告とは異なり、お客様の喜ぶ姿をダイレクトに感じることができます。各店舗の集客イベントの企画運営から始まり、実際のお客様の反応に自信を得ながら、徐々に地域を元気にする大衆イベントまで規模を広げていきました。

リアルからデジタルへのシフト

 そんな時でした。コロナによって、昨年まであったリアルなイベントが90%なくなり、また企業は広告を打とうにも様子をみるしかありません。窮地に立たされましたが、世の中の消費(感動)マインドは、きっとどこかにシフトするであろうと考え、まずは広告もイベントもリアルからデジタルにシフトチェンジしました。具体的には、企業ホームページのリニューアル制作や企業紹介のPR映像の制作、オンライン就職相談会やフォーラムなどのリモート配信などです。

 常に広告の固定観念に縛られず新しい価値を創造しようと取り組んできたことで、すんなり移行でき、なんとかコロナ前の水準をキープできました。

事業領域は地域全体

 そしてもう1点、コロナ前から新しい価値へのチャレンジをしていた事業がありました。それが「滞在型観光拠点づくり」事業です。

 イベントなどで自分たちの関わっていける領域が広がってくると、地域全体のことも事業領域と捉えるようになってきました。なぜ鳥取県には、星取県(美しい星空)という唯一無二の夜のコンテンツがあるのに、観光客は日中に砂丘に立ち寄って、その後別のエリアに泊まってしまうのか。周遊型観光から滞在型観光への移行という課題の解決。それがグランピングに取り組むきっかけでした。

 コンセプトは田舎らしさの感動体験。鳥取の誇る美しいロケーションで、そこで楽しめるアクティビティと鳥取の旬の食材を堪能していただく。都会にはないもの、そのロケーションでしか味わえない世界観で鳥取のファンにする。ファンになればその人は自ら発信者になり、紹介者になり、リピーターになるという考え方です。

 2017年から6年間で、島・海・山・温泉・農泊・湖・国の重要文化財など8箇所で14回開催。毎年参加される方や、3回連続で同じ開催場所に参加される方、「鳥取が好きになった」「将来、鳥取に住みたくなった」などとうれしい言葉を聞き、中井氏はこの取り組みは間違っていないと確信しました。

 コロナの状況下で、グランピングはアウトドアと旅の融合ということで全国的に人気を博し、アドセンターパルでもグランピングイベントの取り組みが話題をよび、山形や埼玉、栃木、岡山など全国7箇所の常設グランピング施設のプロデュースを手がけることとなりました。地方の課題解決がビジネスにつながりました。

 そして今年の11月、鳥取市に念願の自社運営の常設グランピング施設をオープンさせることができました。コンセプトは「日本一の池に浮かぶ無人島で過ごす非日常感動体験」です。「私たちはここで日々、お客様をおもてなし、情報を発信し、周辺地域とともに街づくりをブラッシュアップしながら鳥取のファン作りにチャレンジしていきます」と中井氏は語ります。

 2020年代の10年ビジョンは「誇れる田舎を創っていく」。そのために、地域を今よりちょっと個性的にしていけるような「地域トガり化プロデュースカンパニー」として、中井氏はこれからも地方をデザインし感動をクリエイトしていきます。

会社概要

設立 1973年
資本金 600万円
従業員 7名
年商 1億7500万円
事業内容 総合広告代理業、イベントの企画運営、宿泊業
住所 鳥取県鳥取市千代水2-88-2F
電話番号 0857-30-1580
URL https://www.adpal.jp/