【第1回】共同求人活動で経営者が変わり会社が変わった! (株)EVENTOS 代表取締役 川中 英章氏(広島)

川中社長

(株)EVENTOS 代表取締役 川中 英章氏(広島)

吉山ビアンコ

 川中英章氏((株)EVENTOS社長、広島同友会会員)は1961年生まれの53歳。若いころから独立志向が強く、いったん大学の職員になりましたが、1987年26歳の時、イベント業で創業しました。当時の思いは「社員満足」を追求できる会社にしたいというものでした。

 その後、勤めていた大学の学食業務を受託し、セントラルキッチンを設けてケータリングに力を入れるとともに、広島で初のワイン居酒屋を出店するなど、事業は順調に拡大しました。

人の問題で一転、経営危機に

 ところが、1995年、4階建てのフランス料理店を出店し、投資が大きかったこと、経費がかさんだこと、そして何より派閥ができて人間関係がぎくしゃくしたことにより、大きなマイナスが出る状況に陥りました。3年後にはついに金融機関からの借り入れも困難な状態になりました。その後2002年、フランス料理店をたたみ、収益のあがる事業だけ残して再興をはかります。

 そのころに直面したのが求人難です。以前は他のホテルなどから職人を引き抜いて補充していましたが、給与などを自由に決められなくなっており、引き抜きができなくなりました。あれこれの求人媒体を利用してもうまくいかず、求人のために出店したりもしました。

人採りのために同友会に入会

 そんなときに「中小企業家同友会が求人活動をやっているよ」と紹介を受け、2004年に求人のために広島同友会へ入会しました。当時の川中氏はプレーヤーの意識で現場を離れられず、同友会には参加しませんでした。事務局員から誘われて2006年の春の新入社員研修を見学しました。「他社の社員さんも経営者も、まぶしく輝いて見えた」と川中氏。すぐに共同求人活動への参加を決意しました。

 まだ「お客さんは自分をめがけてやってくる」という気持ちだったので、現場を離れられず、同友会の勉強会などには参加しないまま、2007年の春、初めての合同企業説明会を迎えました。学生は当然、給与や休日などの待遇のことを知りたいだろうと考えて、熱心にそういう説明をしますが、会社訪問はゼロ。「がっかりです。なぜだろうと考えると、合同企業説明会に出ていた先輩会員は、会社の理念や事業の意義などを語っていたことに気づいた」と川中氏は振り返ります。

 そこから、さまざまなセミナーに参加して、猛烈に勉強し、経営指針を成文化し、社内で発表しました。2カ月後に行われた合同企業説明会では、ちゃんと経営理念などを説明することにより、会社訪問にも来てもらえて、翌春は6名の新入社員を採用することができました。この新入社員を迎えたころから、経営者の役割を自覚し、現場には出ないことを原則とするようになりました。

学生の目で自社事業を見つめなおす

 川中氏は、「学生は、社会的意義があって、かつ魅力的な事業をやっている会社に魅力を感じる。自社のことを語りながら学生の反応を見ることによって、自社の事業を見直し、経営指針に生かしてきた。そのことが利益の出る事業構築につながった」と語ります。2010年ごろから着手し、着々と発展してきた「農村活性化事業」もそのひとつです。

 最初に採用した6名の新入社員は、結婚のためという人もいますが、多くが受け入れ態勢の不十分さから退職してしまいました。そんなとき、2009年春のこと、新入社員研修での先輩会員の「社員にビジョンを示すことが経営者の仕事」という提起を聴き、目からウロコが落ちるような気持ちがしました。振り返れば、自社を「飯屋」と呼び、社員に対して「…してやっとる」と考え口に出す自分がいると気づきました。

経営者のビジョンと社員の夢や目標

社員のみなさん

 創業時に考えていた「社員満足」は、あくまでも経営者が推進する会社の運営に社員が参画するというイメージでした。そうではなく、経営者がビジョンを示すとともに、社員一人ひとりの夢や目標、将来こうありたい姿を認めて、共有して、いっしょにやっていくことが大切だと気づきました。

 このころから、新入社員の受け入れ態勢づくりを意識して、同友会の共同求人活動、社員教育活動はもちろん、勉強会などへも熱心に参加するようになりました。2012年の春からは、同友会の県理事・求人社員教育委員長も引き受けました。ちょうどこのころ、けっこう大きな借金を抱えてではありますが、他の事業家からの支援を離れて、再独立しました。

 同友会に入会して約10年、初めて新卒を採用して6年。社内での社員教育の仕組みづくりは途上で、まだこれからです。しかしながら、学生目線で自社事業を問い直し続け、社員が主人公の会社づくりが進行中で、業績も急速に改善しました。

チャレンジ農園

 2010年ごろから着手した「農村活性化事業」とは、食の安全・安心と広島周辺地域の食の環境活性化を目的に、「地産地消」を超えた「地産地活」を追い求め、顔の見える生産者の方々からの食材を活用し、「食の豊かさ」をお客様に提供していくというものです。その一環で、広島市北部に2012年5月「チャレンジ農園・吉山」を開園。敷地内には産直市、パスタ料理店、バーベキューコーナーを併設、21世紀型の農村活性化を模索しています。

会社概要

創 業:1987年
設 立:1988年
事業内容:各種ケータリングサービス、催事の企画・立案・運営、洋食料理を中心とした飲食店(3店舗)、ワインショップ(1店舗)、インターネット・ワインショップ、アグリ事業(農村活性化事業)、商品開発事業
従業員数:35名
所在地:広島県広島市中区舟入中町4-35
TEL:082-296-4200
URL:http://www.eventos.co.jp/