シリーズインデックス:チャレンジ環境経営

【第12回】地域と技術が一体となって『環境』を守る (株)篠田製作所 代表取締役 篠田 圭司氏(岐阜)(2015.07.08)

(株)篠田製作所 代表取締役 篠田 圭司氏(岐阜)

会社外観  (株)篠田製作所(篠田圭司社長、岐阜同友会会員)の小水力発電システムへの取り組み…それは「地球環境を守る」という大上段に構えた目的ではなく、人的ネットワークと培ってきた「鋼」を扱う技術力により「誘われた」ことがきっかけでした。

 鉄鋼橋梁および各種プラント機器・設備の設計から施工までを手掛ける大正元年(1912年)創業の老舗・(株)篠田製作所。1998年、社長に就任した篠田氏は、前職が歯科医という一風変った経歴で、そのせいもあってか、社員の力に絶大なる信頼を置いています。

故きを温ね新しきを知る(ふるきをたずねあたらしきをしる)―らせん水車の歴史は古く

らせん水車  マイクロ水力発電は、水の力を利用して発電するという環境に優しい発電方法です。同社が手がけるのは、低落差(0.50~4.00メートル程度)を有効利用した開放型水車(らせん水車および上掛け水車)による発電システムです。

 らせん水車は、水をくみ上げるために古くから用いられてきた「アルキメデスポンプ」を応用した水車で、「維持管理が容易」「低落差における24時間の連続発電が可能」「水路の水量調節による安定した電力供給」という利点があります。       

 岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)町は、この小水力発電システムの導入と町おこしが融合し、地域の活性化がモデル化したことにより、報道機関などで紹介されています。

私たちの地域を残したい―翼を担う小水力発電

 石徹白町は、岐阜県と福井県の県境に位置する約100世帯270人の小さな集落です。この地域がこれからも存続していくために、NPO法人地域再生機構は「集落内を流れる農業用水に小水力発電を設置し、地域に人やお金を呼び戻してはどうか」と提案。これに地元のNPO法人「やすらぎの里いとしろ」が賛同し、プロジェクトがスタートしました。そのプロジェクトにいる知人から「御社のスクリューの技術を投入してもらえないか」と声をかけられたのが、企画開発室の水野勇氏。「長年、従事してきた橋梁設計の経験とそこで磨いた技術を武器に、新分野(24時間動き続ける水力発電装置システムの構築)の開拓しよう」。水野氏の魂に火がつきました。

 ところが、この話を聞いた篠田氏は、「まあ様子を見てみるか、程度の感覚でしたね」と言います。「東北で震災が起こる前から環境問題は、ずいぶんクローズアップされていました。私は、そういった流行ものに飛びつくのは好きではないです。みなさんが殺到するでしょう。ただ水力発電は、昔からある発電システムですが、小水力発電となれば、大手も参入してこないのではないかと思いました」。

 とはいえ、石徹白の小水力発電は、一筋縄ではいきませんでした。24時間365日、流れ続ける水。そこには石や小枝といったゴミも混じっているため、壊れやすいことは否めません。

 国内では、らせん水車を採用した発電設備の事例がなく、現在稼動している水車構造にたどりつくまでには思考錯誤の連続で眠れない日々が続いた水野氏。「特に動力の伝達方式については、ベルト方式から伝達効率の良い同軸方式を採用したことにより、システムが構築できた」と言います。また、構造的な改良と平行して、過度な高制御は行わず、システム部品の多くはネット上で購入できる汎用部品を使用するなど、地元の人でメンテナンスができるように改善を加えました。 

 そうした苦難の上、できあがった水車径90センチメートル、全長350センチメートルのらせん水車は、この5年間一度も故障することなく、500ワットの電気をつくり出し、隣接民家の家庭用電源として使用されています。

環境技術実証事業実証  「『らせん水車を設置したがために、台風時に水があふれた』では意味がありません。当社はそういった災害に対する対応はもちろん、調査から設置、アフターフォローすべてを含めた提案ができます」と水野氏は胸を張ります。

 同社の低落差型水力発電装置は、環境省の環境技術実証事業(再生可能エネルギー・中小水力発電分野)において、上掛け水車、らせん水車のロゴマーク(実証番号)を2015年度に取得しています。

心をも含めた「総合的な環境」づくりへ

水車  「小水力発電は、地域一体で取り組まなければできないシステム。企業側も、商売を前面に出してはやっていけない」と篠田氏は言い切ります。

石徹白では、現在2機の小水力発電システムが稼動しています。そのうちの1機、上掛け水車のハネは「地元の石徹白杉」製。牧歌的な外見にもかかわらず、2.2lキロワットの電力を生み出します。

 この発電システムを見学するために、石徹白には、全国から年間5~600名(自治体含む)が訪れるようになり、環境教育に一役買うとともに、経済及び地域の活性化効果も生んでいます。

 「石徹白でとれるとうもろこしは、とっても甘くておいしいんです。収穫時期になると、このとうもろこしをトラックに積んで会社に来てくれるんですよ。何度も何度も足を運んだ結果、石徹白の皆さんとの間に築いた信頼関係は宝です。これはお金では計れません」と篠田氏。篠田製作所の環境経営に対する取り組みは、地元との温かいつながりという「人の輪」もはぐくみ、ひとまわり広い意味での「環境」に寄与しています。

会社概要

創 業:1912年
資本金:1億円
事業内容:各種搬送設備、リサイクルプラント設備、スプレードライヤー、乾燥・冷却装置、砕石プラント設備、油圧クラッシャー等設備に関する設計・製造・据付/橋梁・水門等鋼造物の設計製造・据付ならびに付帯工木工事/小水力発電
関連会社:篠田(株)・アルコ(株)
従業員数:100名
所在地:本社・岐阜県岐阜市金園町3-19-2才勝ビル2F/関営業所・岐阜県関市倉知南1
TEL:本社・058―266-8433/関営業所・0575―23―2333
URL:http://www.shinoda-eng.co.jp/

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