【第11回】今までのノウハウに新たな環境経営へのヒントがあった (株)北信帆布 社長 福島 一明氏(長野)

福島社長

(株)北信帆布 社長 福島 一明氏(長野)

社屋外観

 (株)北信帆布(福島一明社長、長野同友会会員)はテント、帆布製品、トータルインテリアの設計・施工、イベント設備の企画・レンタルなどを手掛けています。近年では冷凍機などを設置してテントの外側から冷機を送り込む「テント冷蔵庫」の実用化、また信州大学の医・工・繊維の各学部の支援を受け、災害現場向けの「医療用テント」の開発を進めています。創業は1909年で、多年にわたり事業を継続し地域社会に貢献をしてきた老舗企業を表彰する「長野県百年企業(信州の老舗)」を長野県より昨年受賞しました。福島氏は「今後益々、地域に貢献できる企業をめざしていきたいと」語ります。

 企業理念に「私たちは仕事を通じ、創造的な人間関係を推進する企業」を掲げ、社員と共に会社を盛り立てています。

環境配慮型企業としての使命

 福島氏は「テント業は元々エコロジーなもの。だから意識せずに自然と環境配慮をしていた」と語ります。既存の建築物と比べ、テントは環境配慮に特化した部分があります。一般的な建築物では多くの建材を利用し、解体時には多くの廃材がでます。しかしテントはこれと真逆であり、条件が合えばリサイクルすることができます。近年、環境への取り組みが大きく注目を受けるなか、環境配慮型の企業として今までの経験を生かし、更なる取り組みとして何ができるか検討を始めました。

培ったノウハウを生かした新市場開拓へ

畝シート

 2011年3月11日、(株)北信帆布が環境への取り組みを模索している最中に、東日本大震災が発生しました。取引先の所長さんから「一般的に仮設住宅へ入居した人々、特に男性を中心に屋外へ出ることがほとんどなく、中にこもる問題を抱えている、外に出る方策として仮設住宅(地面が悪い所)で畑や田んぼなどができないだろか」と相談がありました。これまで培ってきたノウハウから検討した結果、自社のテント技術を応用した「畝(うね)シート」を開発し、現地へ寄付をしました。

 「畝シート」の特徴は簡単に自立し、持ち運びが簡単で例えばビルの屋上、アスファルト舗装の上、砂利舗装の上、砂漠の上などにも設置することができます。

 長野県(信州)は緑が多い地域ですが、近年では近代建築物が多くなっており緑地が減少してきています。福島氏は「『畝シート」で環境への取り組みや緑地化への貢献ができるのではないか。小さくても数が増えれば環境促進につながる」と語ります。「畝シート」をビルの屋上やアスファルトなど、畑や田んぼなどが作れないところに設置すれば、CO2の削減につながります。特に建築物の屋上などは緑を増やすことでより直接太陽熱が当たらなくなり、夏場の熱対策にも有効的です。今後、さまざまな企業に提案をしていきたいと考えています。

強みを磨きさらなるチャレンジを

 「畝シート」の開発・販売に着手したことにより、社員を含めてテント業を通じて環境に貢献できる確信を強めました。そして自社のテント技術がこれまでつながりのなかった異業種の産業に対してもビジネスチャンスの可能性があることも全員で再認識しました。社員全員が既存の商品、テント技術に関しても応用を含め、更に環境配慮に取り組める部分はないか考えるようにもなりました。「畝シート」をきっかけに、会社全体として前向きに、そして自主的に新しい事を考えていくことにつながりました。

 「新しいモノ作りへの夢と期待が膨らんでいます」と福島氏は力強いまなざしで語りました。

会社概要

創 業:1909年
設 立:1942年
事業内容:帆布製品の製造・施工、屋上農園・テント冷蔵庫、断熱シートトータルインテリアの設計・施工、イベント設備の企画・レンタル
従業員数:17名(契約社員含)
所在地:長野県長野市風間下河原2034-19
TEL:026-221-3500
FAX:026-221-2348
URL:http://www.hanpu.jp/company.html