【第20回】同友会の学びと実践こそ全て 村上彫刻 副代表 村上 敦子氏(長崎)

村上敦子副代表

村上彫刻 副代表 村上 敦子氏(長崎)

村上彫刻の歴史

金属銘板

 村上彫刻(村上敦子副代表、長崎同友会会員)は、村上氏の夫の父が個人事業として1967年に創業。造船業の銘板を中心に中学校の名札を製作するなど地域に根差した事業を営んでいました。それまでの事業は造船業の銘板に比重が置かれていたこともあり、1980年代前半は造船業不振のため売上や利益が著しく低下したり、また1990年代になると逆に建造量増加により売上・利益ともに増加したりと、造船業の景気変動に大きく左右される状況でした。この時にはコンピューター彫刻機を導入するなど、少しずつ生産のスタイルも変化してきましたが、2004年、創業者である父の逝去に伴い、夫が代を継いだ後、2006年、村上氏は同社に入社することになりました。

 入社後、これまでの工業用銘板に依存する経営形態から脱皮し、商業用商品開発が急務ととらえた村上氏でしたが、新たな挑戦をせず、リスクを伴わない家族のみでできる範囲の仕事を守るという考えの夫とことごとく意見が対立してしまい、経営形態の変更を断念しました。

そんな中、地元造船会社がこれまで独占市場であった銘板の相見積もりを始め、また「彫刻」から単価が安い「プリント」への移行が始まり、売上と利益は減少する一方でした。対策として新設備導入によるプリント銘板の作成を開始しますが、業界自体の不況の波は確実に押し寄せ、経営の危機を迎えました。

 そうした中でも村上氏は夫との衝突を避けながら、グラフィックソフトと彫刻機ソフトの連係による業務のスピード化と多様化や、造船景気に左右されない新たな柱として、ブラスト機導入によるデザイン性のある商業用商品の開発にも着手していきます。

同友会との出合い~経営計画発表会

商品の数々

 長崎同友会との出合いは2015年です。例会で経営計画発表会の存在を知り、6月に入会後9月には支部での経営計画書策定セミナーの事前学習会に参加し、経営理念を作成します。そして10月には1泊2日のセミナーに参加してあらためて事業のあり方や夫と自分の役割、これからのビジョンを見つめ直しました。

 まず家業からの脱却をめざして組織図を作りました。組織体制ではこれまで銘板、案内板の製作を担当していた夫が「製造責任者」として腰を据え、村上氏が記念品、商業用商品担当から「営業・企画」、スタッフのOさんは製造補佐として製造をサポートする役割を明確にし、個々の力を最大限発揮できる組織へと変えました。

 そして2016年1月23日、記念すべき第1回目の経営計画発表会を開催、実に創業から第49期を迎えた年でした。経営計画書は経営理念から始まり、行動基準、計画書を作成した思い、組織図と続きます。営業方針や製作方針、個人目標を含め10ページの経営計画書は代表である夫、スタッフのOさんの理解を得て、村上彫刻が家族経営から組織経営へと生まれ変わった瞬間を鮮明に映した1冊となりました。発表会には支部会員を含む多数の来賓を迎え、立会人になってもらいました。

 経営計画書を作成し事業の方向性を見える化したことにより、明確で鮮明な3カ年計画もできました。そのためには何が必要なのかという課題も浮き彫りになり、ものづくり補助金への取り組みや小規模持続化補助金の採択、長崎県からは経営革新計画を承認されることにもつながりました。福岡で開催される「ひびしんビジネスフェア」にも出展するなど、経営計画書通りに歩みを進めています。それはまさに先輩会員から学んだ「大変」なこと。この「大変」は「大きく前向きに変わること」だという学びは村上氏の中で大きな拠り所となっています。

今後のビジョン

 現在力を入れている事は、「生産管理の強化」と「革新的な商品開発」および「新規事業の確立」です。

 生産管理の強化においては、5S活動や生産管理システムの強化に取り組み、小ロット多種多様化において迅速に対応できる製品技術の向上をめざしています。

 新規事業の一例としては刻印骨壺事業です。納期が短く、高い技術が求められる刻印骨壺ということもあり、当初は周囲からの反対もありました。しかし県内ではだれも手をつけていなかったニッチな分野であり、小回りが利く零細企業だからこそできるという強い思いと確信で事業に着手。今では市内の大手斎場との契約に結びつき、村上彫刻の新しい事業の柱の一つになりました。

 現在は事業所規模も6名になり、次の計画は法人化です。2017年1月、第2回目となる経営計画発表会ではこの法人化も含む生産管理、評価制度、2016年からの新規事業の育成、新設備の活用という目標を掲げ、企業体としてしっかりとした基盤づくりを明言しました。そして2018年の法人化に向け「共に考え、共に成長し、共に喜ぶ組織づくり」を合言葉に、夫やスタッフとともにさらなる飛躍をめざします。

 村上氏には小学生と中学生の娘がいます。忙しくて家庭での時間がとれない村上氏へ先輩会員のアドバイスで、娘たちと毎日寝る前にハグを始めました。時には忙しくする母を見て、言い出せず寝る前にうろうろする娘に、村上氏もハッとして「ありがとう」と言いながら優しくハグをするそう。経営者として母として人間的成長をめざしながら、村上氏は今日も同友会活動に参加し、新たな学びを持ち帰り実践しつづけます。

社員さんと

経営理念

みんなが喜ぶものづくり
わたしたちは 常に
《お客様と喜びを分かち合う事ができる ものづくり》
を「誠心誠意」行っていきます。

会社概要

設 立:1967年
事業内容:銘板・名札・記念品・ギフト商品・刻印骨壺の製作および販売
従業員数:6名
所在地:長崎県佐世保市日野町924-13
TEL:0956-28-4857
FAX:0956-28-4865
URL:http://www.m-cho.net/