(株)河内物産 代表取締役社⾧ 河内 勇二氏(石川)
(株)河内物産(河内勇二代表取締役社⾧、石川同友会会員)は1974年12月、鶏肉の飼育、処理、解体、販売まで鶏肉を育てて販売する会社として創業しました。1990年、日本の法律である食鳥検査制度が制定。それにより北陸では国が定めた設備を揃えた会社が無く、飼育から販売まで一貫して行うことができる北陸唯一の会社です。
経営理念である“自分軸”が財産
当初、河内氏は臭い、汚い、誰も寄り付かない家業を好んでいませんでした。入社したいからではなく、することがなかったから入社したのが始まりです。物が売れればいい、親が築き上げた販売先がある、それにすがっている自分がいました。そこには心の軸である自分軸はありませんでした。しかし、2010年6月代表取締役社⾧に就任し、2011年同友会に入会、そこから思考が変わります。
命を預かっている“有難み”をわれわれが伝えていく、自分がどうありたいか原点の理念が重要だと考えるようになりました。その基盤となるのが同友会の経営指針成文化講座で作成した経営理念です。命への感謝を目の当たりにしている会社だからこそ、それをしっかり伝えることが大切だと気づきました。「わたしたちは事業を通じてたくさんのありがとうをお作りします」という経営理念である自分軸は会社の財産となりました。
苦悩から生まれた「KITOプロジェクト」
新型コロナウイルスの影響で流通業界がうねりを受け、価格競争はもちろん、要るモノしか買わないという景状となりました。2020年9月に大手2社との取引が解消となります。月商約3,000万円の減少と、加えて右腕だった幹部が倒れるという大変な窮地に追い込まれました。これを少しでも改善するために実施したのは2カ所の加工所を1カ所に統合することと、断腸の思いで行った社員のリストラでした。
この苦悩があったことでさまざまな思いが生まれました。根底にある命の大切さである「ありがとう」を伝える環境を新たに作ることを考え、新規事業となる『K ITOプロジェクト』を立ち上げる決断をしました。
このプロジェクトは、地域への恩返しであり、日々いただいている鶏の命への感謝を示すための取り組みです。本社向かいの5,000坪の広場(旧・鶏舎の敷地)に15坪の直売所を設け空き地には芝生を敷き、私設公園として開放します。ハンモックやベンチを置き、ドッグランやニワトリが走り回るチキンガーデンをつくり、多くの方が楽しめる空間をめざします。「KITO(木と)」のプロジェクト名は、敷地に生えている1本のシンボルツリーに由来します。
鶏レバーの価値観を変えたクラウドファンディング
社会課題となっているミッションに立ち向かう企画でないとお客さまの納得を得ることはできません。鶏レバーは売れない部位として大量に廃棄されており、フードロスとしての社会課題です。「鶏レバーの価値観を変えたい」「大量破棄の課題を解決したい」、そんな思いから設備資金を確保するためにクラウドファンディングを実施しました。これはプロジェクトの一つである直売店の進出に直結し、結果、メイン商材となる鶏の白レバーを使ったレバーペーストづくりを実現することができました。
河内氏は「クラウドファンディングはやる人の決意がどれだけ高められるかを測れる一つの大きな手段となる。本当に多くの方の支援で夢の実現に近づけた」と感謝の意を表しました。また「やじろべえのように両手を⾧くして、未来を語るのも先を見据える⾧さがないとダメ、その分それと同じぐらい現場の足元も⾧く見ないとダメ。つまり片方だけでなくすべてに力を注ぎ、そのバランスが人の深さと会社の器となる」と闘志を燃やす眼差しで話しました。
いよいよ7月22日(金)にグランドオープンを迎え、これから河内氏の本当の戦いが始まります。
会社概要
設 立:1974年
資本金:62,250千円
従業員:47名
事業内容:鶏肉の飼育、加工、販売
住 所:石川県かほく市高松乙 2-96
TEL:076-281-2211
URL:https://www.wakadori.net/