(有)イトマサ 社長 伊藤 敦子氏(大阪)
設備が大型化するとともに、過当競争にさらされる屋外看板業界。その中で、屋外看板の技術を生かして、特殊な製品作りにシフトした(有)イトマサ(伊藤敦子社長、大阪同友会会員)を紹介します。
屋外看板の技術を生かして新分野へ
屋外看板の業界は、手づくりの時代から大型インクジェット・プリンター出力に転換してきました。作業は簡単になったものの、大型設備を必要とし、しかも同業間の過当な競争となっていきました。そのなかで、(有)イトマサは、もう一方の道を歩みだしています。他社がやらないもの、1点ものや特殊な製品にシフトしました。ものづくりの技術面を担当するご主人が、新しいものや難しいものを考えることが得意だったことが幸いしました。
最も特徴を発揮したのは、陶板やセラミックへ画像を焼き付ける技術でした。カラーで焼き付けられた写真や文字は、風雪にも劣化することなく「最強の看板」として重宝されました。観光地にある案内図などの多くを手がけました。しかし、官公庁の予算が削減され、公共の場所の案内板などの発注も減っていきました。そのころから、墓石に組み込む記念碑としての陶板の受注はありました。
事故で亡くなったレーサーの生前の姿をプレートにしたものや、若くして亡くなった方が愛犬と写った写真を墓石にはめ込むものもありました。しかしそれらは、故人1人だけのものであり、1点1点が高額になってしまいます。また、「隣のお墓に入っている人の顔写真が見えたらちょっと…」という声も聞きました。顔写真を墓石に設置すること自体は(有)イトマサの技術で可能ですが、「それでは、お客様の感覚としては多少生々しい」というのです。
お客様に近いところに市場を広げる
こうした声をヒントに、新製品ができあがりました。お墓に飾って雨ざらしにするのではなく、ケース状の陶器の中に、ご先祖様の顔写真を焼き付けたカード状の陶板を収めることを発想しました。これだと、お墓参りにきた身内の者だけが見ることができます。また、ケースの中に入る陶板を増やしていけばいいので、「○○家の墓」形式の日本の一般的な墓になじむものです。住宅事情のため、自宅内でご先祖様の写真を額に入れて飾ることも少なくなっているので、お墓参りの際に家族のルーツをしのぶ一助にもなります。
この製品は「ルーツカプセル」と名づけ、現在特許申請中です。開発においては、特に鍵がかかるように工夫したケース部分に苦労しました。陶器屋さんに今までつくったことのないような形状を求め、一緒に開発していきました。展示会に出すと大いに関心を呼びました。特に中国からの参加者が、非常に興味を示しました。新製品は、従来からの墓石の関連業種への販路はもとより、個人からの発注にも間口を広げています。同社では、利用しやすいように定価を設定した販売形態をとり、よりお客様に近いところへと進んでいます。
会社概要
設 立:1997年12月1日
資本金:300万円
社員数:5名
業 種:看板全般、陶板・ステンレスホーロー製の表示板、制作・取付
所在地:豊中市服部寿町4-9-11
TEL:06-6864-1354
URL:http://www.itomasa.co.jp