
(株)菓子工房COCOイズミヤ 代表取締役 庄司 薫氏(山形)
今回は特別編として『共同求人・社員教育活動のすすめ【改訂版】』に掲載されている企業実践事例を紹介します。
(株)菓子工房COCOイズミヤは山形県高畠町でココ・デ・カシェット イズミヤという洋菓子店を営んでおり、オンラインショップやキッチンカーなどの事業も行っています。社員は職人含め全員女性で8名。創業当初は和菓子屋で、大正12年(1923年)に曾祖母が創業しました。
洋菓子職人をめざすため、高校卒業後は東京へ修行に。その後山形へ戻り、結婚後は家事と育児を両立させながら実家のお菓子屋を手伝っていました。もちろんこの当時、自分が経営者になろうとは思ってもいません。
しかし、ちょうどこの頃に家族3人が入院し、作り手が誰もいなくなってしまったためにお店を一旦閉めることに。半年間閉店していましたが、次第にお店がつぶれたという噂も出始め、再建したいという思いから、店舗のリニューアルも含め金融機関に融資の相談をしました。しかし一個人には融資できないということから、私が会社の社長になるということで、株式会社化し、私が代表取締役に就任しました。
同友会との出合いと気づき

その当時は借金を返すことしか考えておらず、売上目標もないままケーキを作って売るだけでした。同友会に入会し、経営指針セミナーに参加しますが、自社の存在意義など考えたことがなく、社員は最も信頼できるパートナーという考え方にも違和感を持っていました。理念を作り、3年間経営指針を実践しても、利益がなかなか出ない状況の中、一緒に働く家族の意識はバラバラで、雇用した社員も辞めていく状況でした。
3年連続で赤字を出し、どうしていいか分からなくなったときに、自分自身を変えなければと決意しました。社員共育委員会と出合ったのもその時です。経営指針セミナーでは理念を作る中で、自分の大事な軸となるものを見つけることができましたが、社員共育委員会では、指針を実践する経営者の責任と実行力が欠けていたのだと気づかされました。家族を大事にする経営ではなく、この会社は誰とどうなりたいのか、めざすものは何なのか、経営者がきちっと方向性を示し、社員と一緒にやらなければ会社はよくならない。地域や社員と向き合わず、理念を掲げていた自分が恥ずかしくなりました。
社内会議からの人材育成

当社では、月次決算会議を毎月、社員全員参加で行っています。会議では、役員報酬も含め決算を公開し現状の認識を図り、売上や目標対比、部門別の分析なども資料にして、各個人の目標と併せて皆で振り返ります。税理士にも参加してもらい、3カ月先の予定や目標達成の方策も皆で考えます。司会も事前に打ち合わせをした上で社員に任せています。社長は最後の総括以外一切しゃべりません。社員と一緒に会社をよくしていくためにも、現状の課題意識を共有し、目標達成に向けて皆が自主的に考え、意見を発言できるようにしています。会議の目的を明確にして、PDCAを回し、その中で目標に対して自分の考えをもって発言し共有すること。これらは社内会議を通した人材育成だと考えて取り組んでいます。社員の意識も大きく変わっていきました。
また部長クラス、課長クラスなど職務分掌表を4等級で作成し、その4段階に合わせて「部長クラスができること」といった形で項目を細分化した力量表を作っています。社員は現状を数値化した上で、各個人の目標を作ります。個人目標は経営指針発表会で必ず発表し、年2回の社長との個人面談で現状やスキルアップしたいことなどを話し合っています。
こうした取り組みを7年、8年と続けた結果、だんだんと目標達成のために全員で考えて動くことができるようになり、社員自ら営業をしたり、委員会活動を始めるようになったり、クラウドファンディングを募ってキッチンカーの事業も始まりました。数年前は組織図に私の名前ばかりが並んでいたのが、今では部長や課長クラスの社員の名前が入るようになって、私の思いを他の社員に伝えてくれます。
ブランディング化

数年前、社員から「薫さんはどんな店をめざしたいのか」と言われました。このころは、ちょうど新しい店を出したいと思っていた時で、1人でいろいろなお店を見て勉強をしていましたが、一緒に働く娘からも「結局薫さんのお店でしょ?」と言われてしまいました。それは違うなぁ…と。私の店ではなく、自分のやりたいことでもなく、社員が将来活躍できて、地域に必要とされるお店を作らなければ意味がないのです。
それから、社員と一緒にブランディングにチャレンジしました。自社アンケート、お客さまへのアンケート、そしてそれを元にイズミヤにとっての理想的なお客さまのイメージを設定し、そのお客さまに満足してもらうためのブランドコンセプトを全員で考えます。最終的には社員総意で「心がふれあい、身体が満ち足りるとき」というコンセプトに決まりました。おかげで、お店づくりはもちろん、チラシやSNSでの宣伝なども社員が決めたコンセプトだからこそ迷うことなく作成できます。このブランディング化で、社員が一つになったと思いました。
以前であれば、売上対策を議論すると、「値引きをする」といった意見が出ていましたが、今では、「余った在庫で作ったお菓子をプレゼントしよう」など、経営理念やお店のコンセプトに沿った意見が出るようになりました。
地域の中で社員が活躍できる企業に
2024年4月に新店舗をオープンしました。新しいお店では、広い敷地を地域の催しに活用してもらったり、近くの幼稚園から園児が見学に来たりと、地域のコミュニティの場にもなっています。
もちろんそれに伴う借入の金額も莫大です。それでも社員が一緒にいて、一緒に考えて、この地域の中で会社や社員自身の未来をつくるために頑張ってくれるだろうと思うととても楽しみです。
社員には、家を建てたい、扶養から外れたいなど、さまざまな人生のビジョンがあります。それをこの会社で実現できるようにしたい、そのためにどう社員を自立させて、どう幸せに生きてもらえる場にするか、それを考えるのが社長の役割だと思っています。
社員の中には中学生の娘さんがいて、幼稚園の頃からずっとイズミヤで働きたいと言ってくれているそうです。彼女はそれがすごくうれしいと言ってくれます。
社長になったばかりの頃のように、自分や自社だけのことを考えていただけでは、きっとこの未来はなかったと思います。
私は今まで自分が家事育児などの両立に苦労したこともあって、女性が働きやすい職場環境を一番に考えてきました。今後は女性が活躍できる企業をめざしたいと思います。
(『共同求人・社員教育活動のすすめ【改訂版】』より転載)
| (株)菓子工房COCOイズミヤ 代表取締役 庄司 薫氏(山形) | |
|---|---|
| 創業 | 1923年 |
| 資本金 | 450万円 |
| 社員数 | 8名 |
| 事業内容 | 菓子製造販売、カフェ |
| URL | https://www.cocoizumiya.com/ |










