【第34回】社員はパートナー (株)ウイング 代表取締役 松下 忠氏(和歌山)

松下社長

(株)ウイング 代表取締役 松下 忠氏(和歌山)

 (株)ウイング(社長、和歌山同友会会員)は1972年に創業。企画、編集、デザイン、パンフレット、チラシ、DM、ポスター等印刷全般を主な業種とし、松下氏は3代目の社長です。

 初代の社長は、和歌山同友会の代表理事だったこともあり、社員をパートナーとして一緒に学んでいくという先駆けの運動をしていました。社員教育については和歌山同友会の学びの中で、「見て覚えろ」という考えから「一から教育をしたい」という考え方に変わり、その姿勢は今でも脈々と受け継がれています。

お互い理解して採用

社屋

 松下氏は26歳のときに中途で入社しました。「そのときの面接がとても印象に残っています。受けに来た側から会社側に自由に質問や意見をぶつけるというやり方で、『他の会社とは違うな』という印象を受けました」と松下氏。時間にして1時間という長時間で、会社側もオープンな姿勢で、入社希望の人の質問時間を十分にとり、お互い理解した上で採用・入社に至ります。「労使の関係は対等」という姿勢は現在でも引き継がれています。

 入社後、新卒に関しては試用期間なし、即正社員というシステムが構築されています。「試用期間は会社側の都合であり、『合わないから本採用しません』ではその人の人生を狂わせることになる。採用する側もそれなりの覚悟が必要です」と松下氏は語ります。

社員教育

 社内の教育計画は「新卒の人用」、「中途採用の人用」と明確にあり、例えば新卒の人には入社前の1月から3月にかけて通信教育を受けてもらい、入社時には印刷産業人としての言葉をある程度理解してもらえるようにしています。中途採用の人については、6カ月間時間給で教育訓練を受けてもらった上で評価をして、正社員での基本給を決めることにしています。そして、既存の社員には会社として必要な資格を合格取得した人に対しては、資格手当を設けています。また社員教育の一環として、同友会の例会にも積極的に参加をしていています。松下氏も今から17、18年前にあった東京で行われた同友会の全国行事に初代社長に「参加してみるか?」と誘われて参加、以後今日に至るまで社員と一緒に参加し続けています。

社長就任

 2014年8月、2代目の社長が病気になり、松下氏は急遽社長に就任することになりました。急な出来事であったにもかかわらず、覚悟を決めることができたのは、会社の明確な経営計画書(経営指針書)があったこと、そして松下氏自身がずっと同友会の例会に参加し、経営者の生の経営体験を聞いていたからでした。「自分自身が未熟な中、会社の舵取りをすることになりましたが、経営計画の重要性は分かっていたし、作り続けていたので比較的スムーズに事業承継ができました」と松下氏は振り返ります。

全社員で取り組む企業づくり

社内の様子

 年に一度、全社員が集まり、経営計画会議を行っています。その際にはグループ討論を取り入れ、最近ではブース会議と称して各部門のブースへ他部門の人が集まり質問をぶつけます。そのことでそれぞれの部門の仕事内容がより理解でき、横のつながりも強化されました。

 また、最近では幹部社員教育に力を入れています。幹部が講師役になって進める勉強会を開催しています。「財務諸表」「人事考課制度」「モノの見方、考え方」「業界の事」などテーマは多岐に渡りますが、進めていく上で講師となる幹部社員が一番勉強になっています。

「ほうぼ わかやま」の取り組み

ほうぼわかやま

 和歌山の歴史と文化にこだわった情報誌「ほうぼ わかやま」を発行しています。前社長の時代、東京での営業を立ち上げたときに、お客様に和歌山のことを理解してもらえる話ができない、また社長自身も故郷和歌山のことを、自信を持って語れなかったことが発行のきっかけでした。

 発行するに当たっては、社員が自主的に企画、現場への取材、編集までを行っています。一から自分たちで作ることで、お客様が原稿を作る苦労を身を持って体験し、今まで以上にお客様の気持ちに寄り添えるようになりました。また「ウイングはこんなものを作れるんだ」ということをお客様に伝えられる効果がありました。

 最近お客様から「ウイングさんは他社と違って、現場の人からも『なぜこうするのですか?』『こうした方が良いのでないですか?』という提案があり、密にキャッチボールができる」とお褒めの言葉をいただきました。この取り組みを通じて、松下氏自身も和歌山に対する新たな発見があり勉強になっています。

社員の成長と会社の成長のベクトル合わせる

 「この会社で働くことで、社員自身の将来像、人生の目標を見出してほしいと思っています。そのためには、やりがいを持って働けるように、生の声を上げやすい会社づくりをしないといけないですし、仕組みを今まで以上に上手く運用できるようにすることも大切です。社員の成長と会社の成長というベクトルが合致する。そのためには社長として明確に明るい将来展望を描けるような企業づくりをしていかなければならないと思っています。」と松下氏。

 学び、教育にゴールはありません。松下氏はこれからも研さんし続けます。

会社概要

創 業:1972年
設 立:1981年
事業内容:企画、編集、デザイン、パンフレット、チラシ、DM、ポスター等印刷全般
従業員数:51名(うち正社員33名)
所在地:和歌山県和歌山市梶取17-2
URL:http://www.w-i-n-g.jp/index.html