シリーズインデックス:時代を創る企業家たち

【第39回】経営者人生130年の思い (株)アート不動産 会長 櫻井 澄男氏/東日本機電開発(株) 取締役会長 水戸谷 完爾氏/信幸プロテック(株) 取締役会長 村松 幸雄氏(岩手)(2020.05.20)

岩手同友会を支えてきた「労使見解」の実践

 岩手同友会は来年、創立から30年を迎えます。この間、代表理事として同友会を牽引し、現在相談役の3名の合計130年の経営実践と同友会への思いを紹介します。

会員同士が妥協なく真剣勝負を

櫻井澄男会長 (株)アート不動産 会長 櫻井 澄男氏

 不動産業を営む(株)アート不動産会長・櫻井澄男氏は、独立して37期目を迎えます。創業当時は経営に自信があり、元旦だけの休みで営業していましたが、一年半ほど経過したとき急に社員への給与が払えない状況になり、一人悩み苦しんだ時期がありました。当時は社員が入社しては辞める繰り返しの時期でもありました。そんなときに支えになったのが同友会でした。「失敗して気づいたり、身についたり。それを学べるところ」だと話します。

 30年以上も前、岩手同友会が創立する前のことです。ある2泊3日の不動産業のセミナーに参加しました。同じセミナーに参加していた当時福岡同友会の代表理事をしていた方が、「中同協、中同協」と何度も話すのを聞いて、岩手に帰ってから県に問い合わせました。岩手同友会が設立されたのは、それから半年のことです。「すぐに入会し、とにかく必死で学んで実践し続けた」と話します。

 それから10年間、全国大会はほぼ全部参加しました。そしてそこで出会った仲間に経営指針書を持参し、何度も教えてもらいました。「経営者は知りたいと思ったら、素直に知らないことは教えてもらうという謙虚さがないと身につかないし、社員にも信頼されない。自分に厳しく問いかける姿勢と社員への感謝の気持ちをどれだけ持つか」というのが櫻井氏の口癖です。

 そして中同協50周年を迎えた今、同友会への思いはより強くなっています。「地域をよくする前にまず自社をよくする。そういう意識を持った経営者を地域に輩出していかないと地域はよくならない。会員同士が妥協なく真剣勝負でぶつけ合い、切磋琢磨しながら成長し合ってほしい。自分たちの幸せは、社員の幸せは、ということを真剣に考え、高邁な精神を持って経営をしていかねばならない」と、今も当時と同じく熱く思いを語ります。

経営者の責任は、会社を継続し続けること

水戸谷完爾取締役会長 東日本機電開発(株) 取締役会長 水戸谷 完爾氏

 東日本機電開発(株)取締役会長・水戸谷完爾氏は、事業を引き継いでから今年で50年になります。一番の危機は創業して12年目に親会社が倒産したときのことでした。ある日突然工場長から社長として会社を引き継ぐことになりました。当時は「お客様に迷惑をかけるわけにはいかない。一人でも会社を残さないといけないと必死だった。一番きつかった」と話します。

 その後同友会に入り、役員研修会で中同協の蓮見事務局長(当時)から「経営者の責任は一言で言うと、会社を継続すること」と聞き、脳裏に焼きついたその言葉のために全力で傾注してきました。「つぶさないというのは簡単だけれど、どうしたらそれが可能なのか、ずっと考えながらきた。これが私にとっての同友会。理念に沿って行動するというのは他の団体にはない。同友会理念という考え方がしっかりあったからこそ、ここまで会社も同友会もやってこれた」と水戸谷氏は話します。

 水戸谷氏が社会人になった当時は、総資本対総労働の時代でした。「労使見解」(中小企業における労使関係の見解、中同協発行『人を生かす経営』所収)を読み、「よくもまあ労使が対等の立場でというような文章をつくったものだ」と、当時は思ったそうです。だからこそ強調します。「『労使見解』ができた歴史的背景をきちんと捉えて学んでいかないといけない。同友会のような考え方を理解した人たちがもっともっと増えていかないと、日本はよくならない。中小企業は地域の主役。主役がもっと頑張らないといけないのに、われわれが自覚していない。中小企業憲章も中小企業振興基本条例も、もっと真剣に取り組んでいかないと、地域が疲弊してしまう。そういう自覚の元に取り組んでいかないと日本も地域社会もよくなっていかない」。思いは今なお強くなるばかりです。

未来に責任を持つ同友会理念の継承を

村松幸雄取締役会長 信幸プロテック(株) 取締役会長 村松 幸雄氏

 「設備の総合病院」を掲げる信幸プロテック(株)取締役会長・村松幸雄氏は創業してから46年になりますが、創業から11年というときに、突然尿路結石になってしまい入院することになり、社員がゼロになってしまいました。「このときに初めて一人では経営できないということがわかった」と話します。そこで始めたのが、その後入社した4人との勉強会でした。それが現在の社員一人ひとりの人生設計まで描く社員教育につながっています。

 「リーマンショックの時に社員にボーナスを払えなかった。そのときに何が足りなかったのか考えました。社会の流れにそのまま乗っていた自分がいました。自分たちの強みを社会に伝え、社員が主役になって動いてはじめて会社は成長する。ここで営業を意識し、お客様に今の状況にどう対処したらいいか未来を伝えてくることを始めました。これだけで変わっていきました。社員の営業の力ってすごいと思いました」と村松氏。

 その背景には社員それぞれが何をめざしたいのか。一生を通してどのような生き方をしていきたいのか、社員全員が未来の人生設計を描く社風があります。村松氏は話します。「同友会の歴史の中で継承されてきた理念を、実はわれわれはずっと実践してきました。特に大切なのが、経営者が経営者でなければ学べない学びです。経営者は入口を社員に示して出口でニコニコ待つ。入口を示すためには科学的、社会的、人間的根拠がなければなりません。経営者が掲げ手柄は社員。それがニコニコ成長を見守るということ」と、同友会での学びを翻訳する村松氏。さらに同友会が果たすべき未来への役割をエネルギーシフトに表しています。

 「地球温暖化を止めなければなりません。故赤石義博氏が話していた、今の私たちはブリザードの氷河の中を砕氷船に乗って必死にクルーと進んでいるようなもの。行き着いた先が取り返しのつかない死の海だった。というのが現実になっています。50年先の孫子の代に、『あの時何をやっていたんだ』と思われないために、私たち企業家一人ひとりの経営哲学が今問われているのではないでしょうか。そのために社員と何を話し、何を未来にめざしていくのか。同友会の役割と責任は大きいと思います」と村松氏は語ります。

会社概要

(株)アート不動産
設 立:1983年
資本金:2,000万円
年 商:11億3,000万円
業務内容:不動産業
従業員数:61名
所在地:(本店)岩手県盛岡市本宮三丁目11-11
URL:https://www.art-f.co.jp/

東日本機電開発(株)
設 立:1971年
資本金:1,000万円
年 商:5億3,000万円
業務内容:電気機械器具製造業 、環境(農業関連)事業
従業員数:48名
所在地:岩手県盛岡市手代森5-19-10
URL:https://kidenkaihatsu.com/index.html

信幸プロテック(株)
設 立:1987年
資本金:1,000万円
年 商:6億4,000万円
業務内容:環境(農業関連)事業
従業員数:36名
所在地:岩手県紫波郡矢巾町広宮沢8-5-1
URL:https://www.srs.co.jp/

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