シリーズインデックス:激動をよき友に

【第14回】理念にこめた「Life」〜コロナ禍での羅針盤となり、新たな道を拓く力に

藤枝一典社長 フジエダ珈琲(株) 代表取締役社長 藤枝 一典氏(奈良)

「心からいらっしゃいませと言えません」

店内の様子  フジエダ珈琲(株)は、コーヒーの製造卸売業および直営飲食店および物販を事業の柱としています。2020年2月にインバウンド減少の影響が出始めてからは、坂道を下るように売上が落ち、4月1日には昨年対比70%、4月7日には50%を切るようになりました。折しも2年がかりで準備してきた改装や新店舗オープンも進んでおり、新店舗に向けた採用や家賃支払が始まるものの売上が確保できない、感染リスクも先が見えない、とさまざまなことが頭を巡りました。

 ある日、藤枝氏はスタッフから「来て下さったお客様に、心からいらっしゃいませと言えません」と感染する・させる不安を抱えて接客する複雑な思いを伝えられました。正解が分からない中で、皆が迷い悩んでいる。軸がぶれてはだめだと経営理念を最優先し、非常事態下での方針と計画をすぐにまとめ直しました。

経営理念をベースにした方針で大切な価値観が明確に

 藤枝氏にとって義理半分で入会した奈良同友会でしたが、青年部会で「同友会に入って経営指針をつくらないなんて、奈良に来て大仏を見ないようなもの」と言われてからは経営指針セミナーを毎年受講しつづけています。始めてから2年後に社内発表会、4年後は半日全店を休業して共有するようになり、少しずつ経営理念が社内に根づいてきていたころのコロナ禍でした。

 経営理念に掲げている「Life」=「まず『人』を考える」に沿うなら…。出した結論はお客様と従業員の健康を守るために店舗を休業することでした。その決定の通達に関する幹部会議では、自社事業の存在意義、それを社内で共有する意義も話し合われ、店長たちはパート・アルバイト一人ひとりと対話し、平時の職責を越えるような密なコミュニケーションが取られていきました。

暮らしや「働く」ということを考えさせられたコロナ

テイクアウト事業  スタッフの中にも感染リスクを懸念する人もいれば、収入を守りたい人もおり、事情はさまざまです。中には休業の知らせを聞いた途端に生活への不安で泣き崩れた母子家庭のスタッフもいました。それを聞いた藤枝氏は、「Life」を守るために働きたいパートスタッフには新しい仕事をつくると宣言します。

 店舗を休業しながら、自社の軸を新たに深掘りしてテイクアウト事業の商品開発、ブランディング、広報事業と今までにない方針と計画が現場のスピードを重視して次々に打ち出していきました。そこには、勤務希望のパートスタッフを始め、得意なイラストを生かす新卒社員、休業中のスタッフにも細やかに声をかけ続けたリーダーなど困難な中でも自らの役割を見出してイキイキと働く社員たちの姿がありました。「不安な経営者の背中を押して力をくれたのは社員でした」と藤枝氏は話します。

人生が重なる経営理念への確信を力に

 5月緊急事態宣言の解除後は、社員たちが途切れさせなかったコミュニケーションのおかげもあり、わずか2日で店舗スタッフがそろって開店。朝一番から「待ってたよ」とお客様が来店されました。6月には計画していた新店舗をオープン。地域密着型の店舗ではコロナ後に来客が昨年の120%となっているところもあり、近年軸としている地域の喫茶業態の存在意義に改めて確信も深まりました。

 混沌の中で道しるべにした経営理念は、コロナ禍で社員一人ひとりの「Life」にも結びついてさらに深まりました。感染状況によってニーズが週替わりするようなウィズコロナ、アフターコロナのなか、これからも経営理念を箱舟に一人ひとりが強力な漕ぎ手となって飲食・食品事業の海原を越えていきます。

経営理念

Life×Coffee×Quality

会社概要

創 立:1975年
資本金:2,000万円
従業員数:関連法人合計237名(社員44名、パート・アルバイト193名)
事業内容:珈琲豆または関連食品および関連機器の卸し、関連会社にて飲食店
所在地:奈良県大和郡山市大江町112-1
TEL:0743-52-6660
URL:https://www.fujieda-coffee.co.jp/

このページの先頭にもどる

携帯用QRコード
携帯対応について

更新情報RSS