【第12回】顧客の要求に応え続け、対応力を磨き、未来を創る! (有)広島ピーエス 代表取締役 宮原 和樹氏(広島)

(有)広島ピーエス 代表取締役 宮原 和樹氏(広島)
宮原和樹代表取締役

 広島県のちょうど真ん中にある東広島市福富町に(有)広島ピーエス(宮原和樹代表取締役、広島同友会会員)はあります。1990年に宮原氏の父が創業。ヒンジ(蝶番)という自動車部品の組立加工からスタートし、地域の雇用も担っていました。

無人搬送機の開発

 搬送台車

 2000年代は、中国との価格競争やリーマンショックの荒波にもまれてきました。自動車部品の先行きが不透明になる中、溶接などの技術を生かして、トラック搬送用物流容器・スチールラックの生産を開始。2016年には、工場内で設定したルートに沿って自動で動く無人搬送機の開発に着手。物流の載せ降ろし・搬送の作業を自動化する「スマート場内物流」の販売も始めました。昨年から引き合いが増え、無人搬送機の売上は順調に伸びているとのこと。5年後には、現在の年商の3分の1を目標に事業を拡大し、主力事業の一つに育てる考えです。
 省人化をめざしてロボットや無人走行機などを製品ごとに導入している中小企業の中には、工程間の連携がうまくできず、十分に活用できていないケースも多いといいます。同社は取引先の部品メーカーからこうした悩みを聞き、スチールラックと連携できる技術を生かせることから、場内・場外搬送の無人化にビジネスチャンスを見いだしました。「製造業が国内に残っていくために少しでも貢献したい」という強い思いも持っています。

生き残る可能性と倒産する可能性は五分五分

トラックに荷積みするスチールラック

 「リーマンショックもそうでしたが、今回のコロナショックも大変です」と宮原氏。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、昨年は売上が前年比30%ダウン。経済の活動停止が始まると、決まっていた仕事の変更や延期が相次ぎ、さらには予定していた次の仕事の見通しも立たなくなり、工場は稼働ストップを余儀なくされました。「新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、社会はこれから大きく変わります。わが社も、大きく変わることができなければ、生き残る可能性と倒産する可能性は五分五分です」と社内で宣言したこともありました。
 「昨年2月から3月にかけてマスク不足でした。その後、さまざまなところでマスクが製造されているニュースもありましたが、なかなか流通しませんでした。このままでは、マスクが必要不可欠な現場には届かず、医療崩壊につながる可能性があり、当社でとにかくできる限り製造して、広島県内の医療関係者の方々に行き渡らせようと一時、型抜きマスクの製造を行いました」。
 現在マスクは製造していませんが、このことがきっかけで、飛沫防止用パーテーションや足踏み式消毒スタンドの製造も手掛けることにもなりました。さらには、病院や介護施設向け「移載装置搭載型無人機」の依頼にもつながりました。

見えないものをみんなに見せる

 「リーマンショックも、今回のコロナ禍もチャンスと捉えています」。今年、会社で掲げているスローガンは「真価~いろいろな場面で自分の価値が問われるとき。立ち向かう心をもつ~」です。「自社は加工技術を深堀りしたというより、『対応力』を磨いてきました。根底にあったのは、搬送分野で顧客の要求に応え続けたいという気持ちです」と宮原氏は言います。
 また、「現在の自社、自分があるのは、同友会で学び、実践してきた経営指針があるからです。見えないものをみんなに見せることこそ、経営者の本分ではないでしょうか。こう考えるようになれたのは、先輩会員からの叱咤激励のさまざまな言葉でした。経営者としての自分の心を磨いてくれたのだと思っています」と宮原氏。コロナ禍でも負けない勇気と元気を与えています。
 ちなみに、月2回のペースでアップしているYouTube「広島ピーエスチャンネル」も必見です。「12月の青年部例会、また来年2月の青年部分科会で発表者としても参加しますのでぜひ例会にご参加ください」と宮原氏は力強く語りました。

会社概要

設立:1995年7月3日
資本金:300万円
事業内容:無人運搬システムの開発・製作 運搬用台車及び工程間台車・専用ラック製作 その他組付け業務
年商:4億680万円(2020年)
従業員数:36人
所在地:広島県東広島市福富町久芳1650-2
電話番号:082-430-1003
URL:https://hiroshimaps.com/