【第44回】『食の喜びづくり』~親鶏のおいしさを茨城の三和食品から発信していく!~ (株)三和食品 代表取締役 稲毛田 拓也氏(茨城)

稲毛田拓也氏 (株)三和食品 代表取締役(茨城)

 三和食鶏グループは、「生きる」をつなぐという理念で、事業に取り組んでいます。
 創業以来、親鶏(採卵鶏)の専門処理場として集鳥業務から処理業務、鶏肉製造加工の業務、そしてレンダリング業務と一貫した体制を整えてきました。これは生きる上で必要不可欠な食を通して命をつないでいくということです。
 (株)三和食品(稲毛田拓也代表取締役、茨城同友会会員)は、1976年に(有)三和食品として、鶏卵・鶏肉の生産、加工、販売を目的に設立しました。現在は、三和食鶏グループの中で、親鶏を使用したミンチやスープなどの製造およびグループ全体の製品販売を担っています。

急な事業承継

 稲毛田氏は、2019年6月、40歳のときに代表取締役に就任しました。これは予定より3年早いタイミングでした。先代である父親が67歳で他界したからです。先代からは「70歳になったらおまえに社長を譲る」と言われていました。実務に関しては大方把握できていましたが、残り3年で経営のイロハを教えてもらおうと考えていた矢先のことでした。当時は、先代(父)の遺志を継いでいこうという思いが強かったといいます。 

経営指針を創る会受講・成文化への想い

 社長就任当初は、銀行員が来てもどんな話をしたらいいのかも分からない状態でした。それは社長である稲毛田氏が、会社の財務などの現状把握ができておらず、またこれからの進むべき道も描けていなかったからです。
 稲毛田氏は今後の三和食品について考え、2021年、茨城同友会へ入会。入会後すぐに「経営指針を創る会」を受講し、その考えを深めていきました。

コロナ禍と鳥インフルエンザによる外部環境の変化

 コロナ禍では、売上が約8%減。特に外食向け製品(だしパック、スープ等)の落ち込みが大きかったといいます。「販路を多岐に広めてリスクヘッジをすることが大切だと実感した」と稲毛田氏は語ります。
 また、コロナと同時期である2020年末~2021年前半にかけて発生した鳥インフルエンザでは、全国で800万羽以上の親鶏(採卵鶏)が殺処分されました。そのため、三和食鶏グループでも親鶏の仕入羽数が前年比1割以上減少しました。その結果、生産数量減および販売数量減になってしまいました。

新たなビジネスチャンスの創造

 茨城県は、鶏卵生産量で日本一、親鶏の飼養羽数でも日本一です。しかし、関東では親鶏(採卵鶏)を食べる文化がありません。「親鶏のおいしさを茨城県の三和食品から発信していきたい」と稲毛田氏は熱く語ります。
 三和食品の主要販売先は冷凍食品メーカーやハム・ソーセージメーカーです。製品の原料として使用されていますが、今まで以上に、より加工度を高めた消費者に近い製品づくりにも取り組んでいます。
 2021年5月からは、プロジェクトチームを結成して、新製品開発に着手。2022年1月からはTwitterも開始し、親鶏料理などの発信も始めました。同4月からは、mercariで親鶏の味付け肉などの販売を開始、新たなビジネスチャンスを創造しています。
 同友会の仲間からの紹介で飲食店に食材を提供したり、地元の飲食店や学校給食への提案なども行っています。今後は、地元イベントへの出店などを通して、親鶏のおいしさを発信していく予定です。

三和食品のこれから

 稲毛田氏は、今年5月、「経営指針を創る会」で成文化した経営理念と10年ビジョンを社内の事業計画発表会で全社員に発表しました。期待半分・不安半分の気持ちで発表を行いましたが、まず全社員の前で自身の想いを発信できたことで自信がついたと語ります。
 これからは、経営指針の実践を大切に、経営理念と10年ビジョンを社員と共有し、経営理念「真摯な心で、命・感謝・喜びの輪を広げます」を基に、社員一人一人が「命の輪、感謝の輪、喜びの輪(さんわ)」を広げ、3つの輪が重なる三和食品の魂(真摯な心)を大きくすることで、一丸となって信頼ある会社をめざします。

会社概要

設 立:昭和51年5月
資本金:1,500万円
従業員数:31名
事業内容:ミンチならびにスープの製造および販売
所在地:茨城県坂東市逆井1718番地13
URL: https://www.sanwa-ssg.com/service/syokuhin/
Twitter:https://twitter.com/sanwa_oyadori