【第46回】「オーガニック」をコンセプトに、男鹿に仲間が広がる。街が面白くなる。 グルメストアフクシマ((有)福島肉店) 専務取締役 福島智哉氏(秋田)

グルメストアフクシマ((有)福島肉店) 専務取締役 福島智哉氏(秋田)

 秋田県西部に位置する日本海に面した男鹿市。男鹿のなまはげ、男鹿温泉郷、男鹿国定公園、男鹿半島、大潟ジオパークなどの観光資源を持つ地域ですが、1980年の総人口47,829人をピークに、現在では24,192人(2022年3月)に減少。少子化や高齢化の問題を抱える地域でもあります。
 その男鹿の街が少しずつ変わり始めています。きっかけは老舗精肉店「グルメストアフクシマ」の福島智哉氏(グルメストアフクシマ((有)福島肉店)専務取締役、秋田同友会会員)。2020年に仲間とカフェをオープンし、同じ志を持つ仲間が増えていったといいます。

地元で開催してきた「ひのめ市」を さらに発展させた「TOMOSU CAFE」

 2015年から男鹿市船川地区の中心地で開かれている「ひのめ市」。そこには、無農薬農産物、素材や製法にこだわった食品や雑貨が並び、いまや地元に定着したイベントとなっています。
 実行委員の中心は、「グルメストアフクシマ」の福島智哉氏、服飾ブランドを展開する「縫人-nuito-(ぬいと)」の船木一人氏、カフェ「こおひい工房 珈音(かおん)」の佐藤毅氏の3人です。
 「街を賑やかにするって楽しいよね! 男鹿だからこそ面白いことができるのではないか」。そんな思いと、彼らが共有する「オーガニック」というコンセプトがベースとなり、秋田県立大学教授の協力や、農水省オーガニック推進の情報をキャッチしながら運営してきました。
 そして、一時の賑わいではなく、「地域に深く根付くため、何かできないか?」と模索する中「TOMOSU CAFE」の実現に至ります。

ビジネス先行ではなく、 自分たちが望む姿のメッセージがカフェにはある

 カフェの場所は、男鹿駅前の空き店舗をリノベーションした2階建てのビル。床面積は400平米弱という十分な広さです。街の賑わいというテーマで、マスコミにも多く取り上げられました。
 1階カフェは3者それぞれの事業を生かしたオーガニック商品はもとより、志を同じくする仲間たちのビジネスチャンスの場としても活用されます。かつて地元にあった食堂の人気メニューのソースカツ丼を再現していることも話題になっています。
 面白いのは、2階に子どもたちが遊べるスペースを設けていること。子ども連れのお客さんがゆっくりと楽しめることはもちろん、貸しスペースとしても活用できます。そこには人々が自然に集まれる仕組みがあるようです。
 「男鹿を私たちがなんとか活性化してやる」という奢った気持ちからでなく、オーガニックと男鹿への愛情が基本にあってこその活動だといいます。

未来を担う子どもたちに 住んで楽しいと思える男鹿を

 カフェには、彼らと同じ思いの若者が集まるといいます。それは、お店の存在をこれまでのように有料で宣伝しなくても、SNSの効果が大きく影響しているからといえます。
 市内で有機農業を営む国際教養大卒生もその一人です。店を持たず、エチオピアと直接取引したコーヒー豆を自家焙煎し販売して、その資金をもとに荒廃した男鹿の農地を整備するという事業を展開。焙煎時は、ここのカフェの設備を利用しています。
 3人は、志を同じくする者であれば、市や経済団体、地域の自治体、自身の人脈なども含めて、地域に受け入れてもらえるよう様々な努力をするといいます。
 旧男鹿駅には、農業から醸造まで一貫して行う栽培醸造蔵を開くことを目指す酒蔵もでき、活気がひろがっています。
 「僕らが想定した以上のことが、男鹿で始まっている気がしています。僕らがリードしているようにみえるけれど、そうではない。きっかけは僕らだったかもしれないけれど、それこそ人との関係が有機的(オーガニック)に広がって、男鹿が変化していることを改めて実感します。未来を生きていく子どもたちが、住んで楽しいと思える男鹿にしたい」。
 福島氏たちのまいた種が、広がりをみせています。これからの男鹿に注目したいところです。
(「あきたDOYU通信」2022年6月号から転載)

会社概要

設立年:大正7年
資本金:300万円
従業員数:10名
年商:6,000万円
事業内容:コロッケ、お肉、お惣菜販売
住所:秋田県男鹿市船川港船川船川80-1
電話番号:0185-23-2624
URL:https://gourmet-fukushima.com/