【第8回】事業の定義は、徹底的に重ねた先に新しく拓かれる (株)グローバルトレーディング 代表取締役 菊田 修氏(奈良)

(株)グローバルトレーディング 代表取締役 菊田 修 氏(奈良)

カリスマ職人の第2創業

 菊田 修氏((株)グローバルトレーディング代表取締役、奈良同友会会員)の原体験は、小学校3年生の時に父が鈑金塗装工場を創業し、一生懸命に働く父の背中を見て育ったことです。父への尊敬と憧れが小学生の菊田氏に、一生涯この仕事をしていきたいという強い思いを抱かせ、その道に入りました。そして持ち前の徹底的に打ち込む姿勢で腕を磨き、各種自動車雑誌に取り上げられたり、オートショー等で数々の表彰を受けるなど、その業界ではカリスマ的な存在となりました。父の工場を継ぎ頑張るなかで、特殊塗装やボディー加工に対しては自分のデザインで完璧に仕上げることができるが、樹脂部品であるヘッドライトやテールランプは金型成型になり自分ではできないという壁にあたります。そして、できないならば作ってやろうと思い立ち、鈑金塗装の仕事を極めながら飛び込みで海外に渡って提携工場と取引を始め、2007年に自動車のドレスアップ用LEDテールランプ・ヘッドライトを生産・輸入販売する(株)グローバルトレーディングを立ち上げました。車のドレスアップはホイールや内装などいろいろなパーツがありますが、菊田氏は徹底的に突き詰める職人のスタイルをランプ販売の基本に移し、それに特化して販売することでニッチな市場で成長し、右肩上がりに業績を伸ばしてきました。

アンテナを立てて隣接分野を開拓

 自社の製品は主に個人の車向けであり、限定されたお客さんに喜んでもらえるために作っているということを強みにしてきましたが、同友会でいろいろな経営者と交流する機会が広がり会話をするなかで、すべての人に喜んでもらえるような商品を作りたいという思いが生まれてきました。そして、それまで販売してきた乗用車用の明るいLEDランプの技術とノウハウを集結し、企業向けトラック、バス等の働く車用の安心安全なヘッドライトやテールランプのブランド「トラックパーツ ナイトスター」を立ち上げました。それは、純正品よりも明るいフルLEDヘッドライトを扱う日本で唯一のブランドです。欧州では2011年、日本では2016年の保安基準改正からデイライト(昼間点灯用ライト)装着等の安全機能が加わりましたが、それ以前の古いトラックには装備されていませんので、それらも標準装備をしました。そして、「ドライバー様が安全に運転し安心して仕事ができる、その先には企業様や帰りを待つ家族、それに関わるすべての人が笑顔になれるような製品を作る」をブランド理念として、着々と成長しています。

人として経営者としての意義とリンクした事業定義

 今まで徹底的にこだわってきた「お客様の思いを叶えて喜ばれる仕事」に「すべての人に喜んでもらえる仕事」を加えることで、人として・経営者としての意義・目的が明確になり充実感があります。この実感は社内にも広がっており、人のためになっている仕事なのだと社員が胸を張って日々を過ごせる環境の力強さを感じています。コロナ禍の先行きの見えない社会変容のなかでも、本業の鈑金塗装業、個人向けブランド、業務向けブランドという柱があることで利益構造は安定しており、財務基盤においても社風においても、今後も新しいことにチャレンジできる体制があります。「ひとつ辞めてひとつ始めるではなく、今やっていることに徹底的に打ち込むことで、そこから新しいことが生まれ見えてくる。だから何においても一生懸命打ち込み、そして徹底的にやる」。職人魂を携えた菊田氏は、今日も一歩ずつ重ねながら視線は先を見据えています。

会社概要

設立年 2007年
資本金 300万円
従業員数 10名 (うちパート4名)
事業内容 自動車部品・LED 関連商品の輸入販売、オリジナル商品の開発