長崎海産(株) 代表取締役 三宅 ちはる氏(長崎)
長崎海産(株)(三宅ちはる代表取締役、長崎同友会会員)は1937年に創業、老舗海産物メーカーとして、全国の量販店やメーカーに長崎県産煮干しや長崎県産塩蔵わかめ・カットわかめを製造販売しています。
同友会との出合い
三宅氏は祖父が創業した(株)三宅海産物店の3代目として社長を務め、会社は三宅氏と母との2人の家族経営でした。2019年に関連会社の長崎海産(株)と合併、三宅氏は社員36名(うちパート21名)の会社の代表取締役に就任します。急に多くの社員を抱えることになったため、真剣に経営を学ばなければと思っていた矢先に福岡同友会樋口康治氏との出会いがあり、経営を学ぶなら同友会をと勧められ入会しました。
経営指針の成文化
入会後すぐに経営指針成文化セミナーが開催されることを知り参加します。成文化をする過程で、先代がどのような思いで創業したのかを知り、なぜ経営をするのか・自社は何をめざすのかと道筋が見えました。全10回のセミナーに参加して理念・指針書をつくり上げ、これまでに2回の経営計画発表会を行いました。
企業理念
私たちは幸せと笑顔と健康をお届けします。
経営指針成文化後の変化…①残業の削減
これまで長崎海産(株)は残業が多いのが当たり前という状況でした。しかし理念に「幸せと笑顔と健康」を掲げているにも関わらず、このままで社員は「幸せと笑顔と健康」になれるのだろうかと思い、残業削減に取り組みます。もともと卸が主だったところを製造に力を入れ、自社で行っていた配送もアウトソーシングします。また給与体系も変更し大幅な残業の削減を実現しました。今では繁忙期を除き、社員がほぼ定時に帰るようになりました。またパートの有給取得にも取り組み、そうした労働環境の噂を聞き就職を希望する人も現れるようになりました。
経営指針成文化後の変化…②全社一丸の経営
経営指針を策定し経営計画発表会を行う以前は、営業や製造の部門間のコミュニケーションが取れておらず、営業も個人の数字のみに関心を持つといったような状況でした。
しかし経営計画発表会で個人や部門の目標を発表・共有することで相互理解が深まりました。営業もチームであるということを認識し、自身のことだけでなく営業同士で情報交換をするようになり、また部門間を超えてコミュニケーションを行うなど社内の風通しがよくなり、三宅氏も社内のまとまりを感じるようになりました。
経営指針成文化後の変化…③新商品開発
コロナ禍で自社はこれからどうするべきかと考えた時に、経営指針書の成文化で取り組んでいたクロスSWOT分析から、自社の強みは何かと考え、これからは卸から製造に注力し新商品を開発することを決断します。
コロナ禍で営業に出ることができない状況でもあったため、みんなで新商品のアイデアを出し合いました。そしてこれまで出汁取りに使用されることがほとんどの煮干しを「食べる煮干し」として食用方法を開発、新商品「燻しいりこサクっ」が誕生しました。こちらは3回の加熱乾燥を加えることにより、口に入れた際の良好な風味とサクっとした独特の食感を生み出しています。ガーリック・しょうゆ・明太子の3つの味を製造し、発売後には商品も評価され、これまでに多くの賞を受賞しており、このたびガーリック味が令和4年度日本農林漁業振興会会長賞を受賞しました。
これから
社長就任から3年という短い期間、かつコロナ禍という厳しい状況で、労働環境の改善・風通しのよい職場づくり・卸から製造へのシフト・新商品の開発と多くの取り組みができました。三宅氏はこれだけの取り組みができたのは、経営指針を成文化したおかげだと語ります。今後はさらに卸から製造へシフトするべく新工場の設立を計画、来年完成予定とさらなる指針書の実現にむけた三宅氏の実践と挑戦が続きます。
会社概要
創業 | 1937年 |
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設立 | 1950年 |
資本金 | 2,850万円 |
事業内容 | 海産物 加工・卸売 |
従業員数 | 35名(うちパート21名) |
所在地 | 長崎県大村市溝陸町796-3 |
TEL | 0957-53-0180 |
URL | https://e-niboshi.com/ |