時計台バス(株) 代表取締役社長 木村高庸氏(北海道)
時計台バス(株)(木村高庸代表取締役社長、北海道同友会会員)は観光会社の観光バス部門の経営と25台のバスを継承し、1984年に設立された観光バス会社です。お客様は、学校関係、一般団体、インバウンドですが、2017年に社長に就任した木村氏にとって、コロナは今までにない対応を迫られました。しかし、すぐさまこの状況を乗り切るために3つの方針を掲げました。
社員を守り、バスを守る
第一に、従業員の解雇は会社が存続できなくなったときまで絶対に行わない。第二に、自社のバスは絶対に手放さない。第三に「アフターコロナに向けた情報発信」です。この3つの実行策として、無担保・無保証、当面無利子の政府系融資から民間金融機関からの融資など、これらすべてを早々に申請し、2020年4、5月の段階ではほとんど資金の手当をつけました。近年、同社の売り上げはインバウンド増加により修学旅行の比率が下がっていたため、2020年2月にアフターコロナに向けて修学旅行生への営業(特に西日本)を行いました。また、「世間ではバスは密閉されており換気が悪いという誤った情報が流れている。このような時だからこそ正しい情報発信をしよう」と話し合い、バス内の換気機能の実証実験を撮影し、5月9日にホームページで公開しました。
これらの取り組みは、社内の変化をもたらしました。ひとつは、従業員と家族の生活を守る姿勢が安心感を生み、アフターコロナに向けて主体的に行動するようになったことです。インバウンド回復に向けてタイ語の勉強を始めたり、社内の情報共有方法について新しいツールを勧めてきた従業員もいます。このような状況になったからこそ、従業員一人ひとりの成長につながったと木村氏は振り返ります。
2021年には再度の緊急事態が宣言され、再びバスの動かない時間が増えました。改めて同社にとって何が大事かを全社で考えました。やはり、お客様を乗せて走るバスにとって、安全運行はもっとも重要です。そこでバス協会が認定する「安全性評価認定制度(セーフティバス)」では1つ星から3つ星まで評価されますが、最高ランクの3つ星を維持するほか、社員からさらに難易度の高い、道路交通安全に関するISO 39001に取り組みたいとの声もあり、1年以上かけて今年中の認定取得を進めています。この認定をうけると、セーフティバスと合わせて全国でもほとんど事例のない安全基準を満たすバス会社になります。
ピンチを変革につなげる
観光バスの旅客輸送以外の新しい事業も動き出しました。北海道はふるさと納税の申し込みが多い地域です。海の幸山の幸を楽しみに全国から集まりますが、コロナもあって現地に行けないことを逆手にとって、ふるさと納税先をめぐるバーチャルバスツアーを企画しました。全国ベスト5にランクインしている白糠町から「ぜひやろう」と賛同され、早速同社のバスガイドが白糠町を回り、地域の魅力を10分の動画にまとめました。また、情報発信担当の職員がドローンの資格も取ったことから、その映像も交えました。
さらには、依然厳しい状況の中で新たな設備投資もしています。バス以外の社有車を電気自動車にし、太陽光発電の設備も導入しました。これは、社内でSDGsの勉強会を行った際、17項目のうち当社で取り組むべきは何かのアンケートを取ったところ、「13気候変動に具体的な対策を」に取り組むべきとの意見が多くあり、思い切ってやってみました。まだまだ要望が出されており、順次進めていく予定です。
「企業は社員をはじめ、多くのステークホルダーに支えられている。自社の経営指針にもある企業の社会的責任を果たしていきたい」とアフターコロナを見据えて新たなチャレンジを進めています。
会社概要
設立 | 1984年 |
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資本金 | 9,000万円 |
従業員数 | 52名 |
年商 | 5億円 |
事業内容 | 一般貸切旅客自動車運送事業 |
住所 | 北海道札幌市白石区中央2条5丁目2番14号 |
URL | https://tokeidai-bus.co.jp/ |