【第24回】活路はデジタルにあらず! 人手不足の時代は「人」こそが勝利のカギ! 経営理念+健康な衣食住と賃金の保障、地道な努力に人はついてくる (株)友和建工 代表取締役社長 新海宗昭氏(東京)

(株)友和建工 代表取締役社長 新海 宗昭氏(東京)

 直近の東京同友会の調査では、人件費と資材高の中で価格転嫁をしようにも満足に転嫁できている会社は法人向けで3割、一般消費者向けの事業者では1割程度にとどまっています。そして人手不足は深刻で、人手が不足している企業数は三分の二に及び、仕事はあっても人手不足で機会損失する状況となっています。そのような厳しい中でも50%以上が賃上げを行っていますが、その6割が売り上げにリンクしたものではなく人材流出を防ぐための防衛的賃上げです。中小企業の現場では社員の流出が現実の問題となっており、日本の労働人口が切迫する中で、度重なる賃上げによって中小企業から大手への労働人口の移動が起きようとしているのです。現在、人材の確保と定着は中小企業にとって存続を左右する課題と言っていいでしょう。

飲食店創業から内装解体業へ

 そのような中、離職も少なく安定して20名以上の職人を抱えていることで、安心して「丸投げできる」&「完全自社施工による明瞭見積」で大型案件の受注も増加している会社があります。

 友和建工(新海宗昭社長、東京同友会会員)は「内装解体に関することは当社がワンストップで行います」と、コロナ禍より営業所を開設して足回りの営業を強化してきました。施主にとってはすべて丸投げOKな貴重な取引相手としての評価が高まり、2023年は大型案件を次々受注しています。

 同社がこのような会社になるまでの道のりは決して平たんなものではありませんでした。

 新海氏の夢は自分の力で飲食店を開業させ、繁盛店に育てることでした。学生時代から準備を進め、地元調布駅から徒歩数分の場所にお酒と料理が気軽に楽しめるお店を開業しました。調布市にはホッピービバレッジ調布工場があることから、ホッピーをメニューに追加することを提案すると「店の雰囲気に合わない」と従業員が猛反対するも、丁寧に説得を重ねて、ホッピーをドリンクメニューに追加。「3冷方式(ホッピー中と外および提供ジョッキも冷やして提供する)」でホッピーが楽しめる店として「ホッピーミーナ」こと石渡美奈氏(ホッピービバレッジ(株)代表取締役社長)も従業員を連れて来店するなど、こぢんまりとした店ですが連日満席の繁盛店となりました。

 その後、父から家業を手伝ってほしいと言われ、飲食店との二足のわらじを許してもらうことを条件に友和建工に入社します。当時の友和建工は売上至上主義で、採算度外視で受注する仕事も多く、毎月の資金繰りに追われる自転車操業状態。仕事面では、職人気質の父から「仕事は背中で覚えるもんだ」と突き放されるも、日中は現場仕事や経理仕事をこなし、夜は飲食店を切り盛りしていました。しかし、ほどなくして父が急逝してしまい、会社が方向性を欠き社内が動揺する中、新海氏は友和建工の社長に就任することを決意。繁盛店となっていた調布の店舗は当時の店長に譲り、内装解体業一本に全精力を注ぐべく、第一に取り組んだのは、財務体質の強化でした。

人を重視した働く環境づくり

 具体的には顧客別、現場別に収益額をもとに峻別し、不採算現場からの撤退と顧客と支払いサイクルの見直しを行い、キャッシュフロー改善をめざしました。次に、社員教育に力を注ぐとともに安心して働き続けられる環境を提供したいと、全員を社会保険に加入させました。

 社員寮を完備し、従業員のほとんどが寮を利用して生活している環境下で、日ごろより経営理念の意味ならびに現場での対応姿勢の教育をしっかり行っているため、現場でのトラブルもなく高評価を得ています。

 新海氏は「友和建工はなによりも人を重視した会社です」と語ります。社会保険の完備と年に2回の健康診断を実施し、社員寮では専門の調理師により栄養バランスを考えたメニューを毎朝昼夜に提供しています。

 また、アルコールチェックの徹底と、きちんとした生活習慣を提供する環境下での健康管理を行っているため、いつでも万全の態勢で工事を行うことができているのです。

 人材採用難の時代にあって、職人を常に20名以上抱えていることは大型案件獲得での高評価ポイントであり同業他社との大きな差別化につながっているのです。

(株)友和建工
設立 平成3年1月
住所 東京都府中市押立町5-14-27
資本金 1,000万円
事業内容 建設業(土木工事・内装解体工事)
URL https://youwa-kenkou.com/message/