【第23回】学びあえる組織づくり (株)総研 代表取締役 小岩 圭一氏(栃木)

(株)総研 代表取締役 小岩 圭一氏(栃木)

社会のニーズの変化と共に成長する

 (株)総研(小岩圭一代表取締役、栃木同友会会員)は、栃木県庁の職員だった故吉澤光三氏(義父)が、不動産鑑定士の資格を得て1969年に開業した栃木県不動産総合事務所から始まります。          

 社会資本の充実が優先され、旺盛な公共投資需要に支えられた高度経済成長期末期において、適正な地価を判断するニーズが高まり、国の成長と共に総研も成長しました。一方、高度経済成長の陰で、急速な工業化によって生まれた公害の社会問題化に伴い、国内では環境整備に対する関心が高まりました。吉澤氏はこれに呼応して1976年に日本環境科学研究所を設立し、水質、大気、土壌などの分析に取り組み始めました。社会資本整備において、アクセルとブレーキの役割を果たす両社は2002年に合併し、より多様化する社会のニーズに対応するため、新たな(株)総研が誕生しました。

資格者集団である(株)総研

 (株)総研は、いずれの仕事も国家資格が必要であり、将来の独立を希望する若者たちが集まる場となりました。技術士、不動産鑑定士、環境計量士、建築士、測量士、補償業務管理士、公害防止管理者、樹木医など、50種以上の資格を持つ専門職業家の集団です。吉澤氏はこの専門職業家集団を強力なリーダーシップでけん引し、「明日を築く今日の努力」を社是に掲げ、社員一人一人が技術の研鑽を積み重ね、多様化する社会のニーズに応えてきました。

出番をつくる

 小岩圭一氏(現社長)は2017年に栃木同友会に入会します。当時常務取締役だった氏は、後継者としての学びを深めるため、翌18年に開催された第5期経営指針をつくる会に参加しました。同社は資格者の集団でありながら、一方で譲れないこだわりを持った侍の集団でもあります。社内にアクセルとブレーキを持つ同社は、セクショナリズムに陥れば企業は傾くとの認識から、経営指針作成の中で、互いを信頼しあえる組織づくりの必要性を痛感します。また『人を生かす』ことが自分の役割であり責任であることを自覚しました。「人は役割を得て初めて輝けます。役割の中で自分の頭で考え行動することで成長できます」と話す小岩氏は、経営指針をつくる会を卒業してからも、サポーターとして“つくる会”に携わり、社員教育活動、支部活動などあらゆる場面で同友会を活用し、学びました。そして、さまざまな場面で社員たちに出番を与えました

不確実性の時代を生き抜くために「わからない」が言い合える環境づくり

 「資格を持っていれば、自分の名前で成果物が世に出ます。資格は裏切りませんが、社会のニーズに応えるには、資格だけでなく各個人の経験や知識、応用力、ホスピタリティが必要になってきました。社会は多様であり、それぞれがそれぞれの正しさの中で生きています。そういったことを理解した上で、仕事に取り組むことが大切です」と小岩氏は言います。

 2015年に国連でSDGsが採択され、社会課題が複雑化・複層化する中、同社でも新しい技術や知見が求められるようになりました。人口減少、気候変動、コロナ禍など、不確実性の時代。未来が見えにくい情勢に適応するためには、組織の総合力が必要です。「これまでの組織は資格者がいること、強烈なリーダーシップで営業し仕事を獲得することでけん引してきましたが、一人が欠ければダメになる組織では永続できません。社員一人一人が互いに信頼し合える組織、学びあえる組織として成長していくことが必要だと考えています」と語ります。

 (株)総研では先日、幹部社員15名でDVDを鑑賞し、グループディスカッションを行いました。一人の教師が教室内に「学びあえる(わからないことを言い合える)環境をつくる」という1年間のドキュメンタリーでした。これを自社に置き換えると、議論は白熱しました。「小学校は6年間だが、会社にはその何倍もの時間がある。その長い時間に学びあえる環境のある無しによって社員の成長には大きな差ができる」。同社では、改めて学びあえる組織を作っていくことの重要性を確認しました。

(株)総研
資本金 1,389万円
従業員数 64名
年商 6.8億円
事業内容 専門コンサルディング
URL https://soken-g.net/