【第31回】多彩な社員と共にあらゆるニーズを満たす (株)アーティストリー 代表取締役 水戸勤夢氏(愛知)

(株)アーティストリー 代表取締役 水戸勤夢氏(愛知)

 水戸氏((株)アーティストリー代表取締役、愛知同友会会員)は、高度経済成長時代の公務員が多い家庭環境で育つなか、バブル経済の時代に「商売は儲かる」と育てられ、ビジネスの世界に興味を持ち“創造”に至ったといいます。これまで生きる存在感を求め、新しい発想に拘り挑戦してきました。創業時の「どのようなものでも作れる」という姿勢を貫き、困難な注文に対応し続けて、業界では異彩を放っています。

 経営理念は、「私たちは、木工・家具づくりを通じ、思いやりのもてる人づくりとオリジナリティーで、豊かな生活環境づくりに貢献します」です。ものづくりをする職人の地位を向上させ、誇りを持てるようにしたい。人に幸せになってもらい、みんなで力をあわせて、共同で仲良く働きたい。そうした、ステークホルダーに感動を与え、ロマンを追求していく思いが込められています。

強みを生かす、新たな可能性を生み出す

 新型コロナ感染症の拡大は、受注型企業のアーティストリーを直撃しました。仕事のキャンセルが相次ぐなか、雇用調整助成金の活用や社内研修を進め、新たなプロジェクトを立ち上げます。そのひとつが「わの休憩所」を製作する企画で、アーティストリーの強みが生きたビジネスモデルとなる休憩所を作ったのです。この製作には、社員5名が1カ月もの期間を費やしました。新型コロナの感染拡大で時間に余裕があったからこそ、製作が可能になったといいます。

 そしてクラウドファンディングを立ち上げ、リモートで企画協力した全国の学生たちが、「わの休憩所」を見学にくる費用を支援しました。当時はコロナ禍で行動が制限された時期であったため、ネット利用者が急増しました。コロナ禍がむしろチャンスとなり、SNS配信が多くの方々に視聴されたのです。いわゆるこれも“巣ごもり需要”としての反響だったと語ります。この作品を見た方が、アーティストリーの技術力を見込み、別の特殊な注文の問い合わせにつながるなど、知名度が上がったそうです。

 「わの休憩所」を可能にしたのは3D木工で、人の手では再現不可能なデザインを、木材で高精度に具現化する技術です。そして、新たなビジネスチャンスを創造するため、木工業界では稀有な5軸加工機の設備投資を行ったことから実現しました。これまで培ってきた職人技術を、5軸加工機を駆使し、3D加工で生かす「5軸x3Dx職人」がキーワードといえます。コロナ禍を経て、アーティストリーの独自の強みができあがりました。

経営指針を軸にブランド力向上

 アーティストリーは2024年に創業30周年を迎えました。経営指針を再構築する中で、二次下請けから一次下請けや元請けへの新事業を模索し、事業再構築補助金を活用して5軸加工専用の工場(CNCLAB)に改造したところ、さらに作業スペースの拡大が必要になりました。そこで新社屋を建設するに至り、高付加価値の新事業に対応するベースを築いています。また新しいスキルが必要になるため、継続的に採用に取り組み40名超の社員数になりました。多様な人材がいる中でも、経営指針が判断材料になるため、ビジョンに向けて進むことができています。大切にしているのは、アーティストリーのアイデンティティを受け継ぐこと。ブランド力を向上させるため、評価制度を導入して技術を学ぶことができる体制も整えています。

 将来の展望は、2050年ビジョンに明記した「世界を見据え地域に生きるブランドを目指す」こと。その中では、日本の技術とサービス、クオリティーを世界に配信し、世界の富裕層から指名され、海外にも輸出していることや、世界に日本の「OMOIYARY」を「Artistryブランド」として世界中の人に提供するイメージを発信しています。地域の象徴となる企業になるため、アーティストリーの挑戦は続きます。

(株)アーティストリー
資本金 1,000万円
社員数 41名
売上高 4.3億円
創業 1994年
住所 春日井市西本町三丁目260
電話 0568-33-3719
URL http://www.artistry.co.jp/