【第48回】業界の常識を破り、人が輝く組織へ 社会福祉法人愛耕福祉会 理事長 白根 康久氏(島根)

社会福祉法人愛耕福祉会 理事長 白根 康久氏(島根)

 島根県雲南市で保育園3園の運営を中心に営む社会福祉法人愛耕福祉会(白根康久理事長、島根同友会会員)は、保育園運営の民間委託が進む2008年に白根氏の父が創業しました。市内最多となる約270名の子どもを受け入れる「地域子育ての総合拠点」です。

異業種出身だからこその気づき

 約30年にわたって大阪の大手電機メーカーに勤めていた白根氏は、愛耕福祉会が社会福祉法人化した2015年に島根へUターン。2021年に法人を引き継ぎました。

 福祉の世界に飛び込んだ白根氏は、業界特有の慣習に直面します。職員たちは奉仕の精神が強く、「子どもが好きだから自分を犠牲にしても働く」「仕事が辛くても我慢する」そうした考えが当然の世界でした。しかし、このような働き方では長く勤められず、疲弊した職員から退職する「負の連鎖」に陥っており、職場風土の改善が喫緊の課題でした。

 また、手書きで勤怠管理を行うなどICT環境の整備も遅れており、効率化に向けて改革に着手した白根氏でしたが、価値観が異なる業界未経験者に対して職員たちは強く抵抗。「保育の常識は世間の非常識だ」と伝えた際には、一斉に周囲が引いていくのを感じたと言います。本部と現場の間に大きな壁が存在していました。

自ら相手の土俵に立つ

 そこで白根氏は、まず職員たちを理解することからスタート。絵本の読み聞かせを担当して子どもと接する機会をつくり、年間130冊以上の読み聞かせは現在まで続けています。子どもたちとの距離が縮まったことで、職員たちの働きを肌で実感。「現場に入ってわかることがたくさんある。職員たちを見る目が変わった」と振り返ります。現場への理解が深まる中、夏祭りやクリスマス会などの園内行事を動画で撮影し、地元ケーブルテレビ局への投稿も始めました。保育の仕事への理解を広げたい、社会的評価を向上させたいとの思いから、現在も月に一度のペースで情報発信。職員との信頼関係構築を図り、地域への発信力を強化したことで、法人全体の信頼度向上につながったと言います。

 島根同友会には、福祉以外の業界とつながりを持ち続けたいと、自ら事務局に電話して入会しました。自社の棚卸しや、考え方の整理とアウトプットの重要性を学びます。また、職員たちと共にクレドを作成して保育観を共有し、方向性を明確にしたことで、全社一丸となって動ける組織へと変化しました。

職員の健康を守る

 愛耕福祉会は、職員81名のうち76名が女性で、20~40代の子育て世代が75%を占めます。白根氏は、地域の雇用創出と地元人材の採用にこだわっており、中でも女性が安心して働ける職場環境づくりは最優先で進めてきました。

 保育の現場は全てが子どもに合わせたサイズのため、腰痛が職業病。そこで独自に開発したのが「愛耕ストレッチ体操」です。作業療法士が腰痛の原因を分析し、グループワークで意見を出し合って、無理せず毎日続けられる体操を作り上げました。「健康でなければよい仕事ができず、職員の健康が子どもたちの笑顔につながり、そうした保育園には安心して子どもを預けられる」と強調します。

 また、常態化していたサービス残業は徹底して排除し、月の平均残業は1.7時間まで減少。職員の要望から介護休暇は叔父・叔母までを対象としています。「お互いさま」精神が強いのも特徴で、子育てや介護などを担う職員同士でシフトを融通し合うなど、助け合いの文化が自然と根づいていきました。「女性職員の多い福祉業界において、いかに職員や求職者から選ばれる組織にするかは譲れない考え方。親が子どもを送り出したいと思える会社にしたい」と語る白根氏。職員たちと共に、人を大切にする保育園の挑戦が続いています。

社会福祉法人愛耕福祉会
設立年 2015年3月10日
資本金 2,000万円(基本金)
従業員数 81名(うち女性76名)
年商 4億3,431万3,477円(令和8年3月期)
事業内容 保育所の経営
住所 島根県雲南市加茂町南加茂41番地3
電話番号 0854-47-7037
URL https://www.aikofukushikai.org/