(株)NDK 専務取締役 久米 智之氏(徳島)
新卒採用の歩み
(株)NDK(久米智之専務、徳島同友会会員)が初めて新卒採用に取り組んだのは1993年、3名の新卒を採用しました。2003年ごろからは久米氏も採用に関わり、2014年までに37名の新卒採用を行ってきました。技術面向上の観点から、新卒採用と並行して中途採用も続けています。現在の新卒と中途の比率は、社員70名中、新卒40%・中途60%となっています。
新卒採用は、内定を出しても入社が確約されない、育成に時間がかかる側面もありますが、それ以上に先入観のない真っ白な状態から、理念に共感してもらえる生え抜き社員を育てることができることが魅力です。
25%
25%とは、現在までの新卒者の退職率です。「希望を持って入社した新卒社員の、25%が退職したという事実を経営者として重く受け止めています」と久米氏。
2003年から新卒採用が急増しましたが、主に2つの出来事を通して、大量に退職した時期がありました。
一つ目は、売上が急増した時期です。社内の育成の仕組みも整わないままの採用で、このころの新卒採用は戦術(なりゆき)的と言わざるをえませんでした。
二つ目は、リーマンショックによる仕事の激減です。最大で月商95%ダウンという事態になり、資金確保と新たな仕事探しに奔走しました。時間に余裕ができたため、技術を磨くチャンスでしたが、売れないものを作ることや、出社しても仕事がないことは社員のモチベーションが下がります。その後1年ほど、最大で3分の2の社員に休業補償をして休んでもらうことになりました。社員の大半は残ってくれましたが、新卒・中途ともに少なくない退職者を出してしまう結果になりました。若い社員が辞めていった原因は、外部環境だけではなく、経営側の責任も否定できません。「25%」とは、そんな思いや反省の詰まった数字です。
想いを伝える理念、指針あっての採用
リーマンショックは経営的にも人材的にも大きな爪あとを残した出来事でしたが、得たものや改めて気づいたこともたくさんありました。「残ってくれた社員たち、特に現在の部課長たちが持ってくれていた会社への想いや、仕事への真摯な取り組みは本当に嬉しかった。ここまで頑張ってくれている姿を見て、残ってくれた社員のためにも、『ここで本気で自分が頑張れなければ会社を受け継ぐ資格はない』と痛感した」と久米氏は言います。
ちょうどこのころ、徳島同友会の「経営指針実践塾」を受講しました。久米氏の企業ガイダンスでの説明が、経営理念の確立前後で大きく変わりました。以前は会社の概要と仕事の流れを説明していましたが、理念の説明を軸に「何をする会社なのか」を伝えています。そのため、入社した社員は「理念に共感したから」と口をそろえます。「想いを伝えるには理念が必要です。理念があるから伝えたい想いがある。指針(夢、目標)があるから採用するのです」。「経営指針実践塾」を通して、これらのことも学びました。
新卒採用のゴールとは
新卒採用に取り組み始めたころの社員が、今は中堅幹部として部下を育てています。「新卒採用」のゴールは、採用・育成し、次の社員に教えられるようになるまで(成長するまで)です。同友会で「共同求人」と「社員共育」がリンクしているように、社内でも採用と育成は一対であり、一体になって初めて機能するものです。
「新卒採用のゴールとして、目的やあるべき姿が見えていれば、その途中の課題も自然に明確になります。それらの課題を一つずつ改善していけば、働く社員全員にとって『良い職場づくり』に、また『良い会社づくり』につながる」と久米氏は語ります。新卒採用に取り組み、そこから得るもの、気づくことはたくさんあり、失敗も多々あります。しかし、そこから学んで一歩ずつ前に進むしか、中小企業が成長する道はないと久米氏は確信しています。
経営理念
1)世界一の制御技術、計測技術で、お客様に安全・快適・感動をお届けする製品を作ります。
2)自分達の仕事に誇りと夢を持ち、働く楽しさにあふれた会社にします。
3)地球・自然にやさしいモノ作りを通して、地元活性に貢献します。
会社概要
創 業:1979年
設 立:1980年
資本金:3,000万円
事業概要:省力化機械、自動検査機、制御盤の設計・製造
特殊制御装置、計測装置の設計・製造、機械装置の配線工事
精密部品加工、研磨加工、EV用充電器など
従業員数:70名(役員含む うちパート社員1名 男性57名/女性13名)
所在地:徳島県名西郡石井町高川原字高川原1505
TEL:088-674-0018
FAX:088-675-0764
URL:http://www.ndkgr.com/