【第15回】社員と共に新たな幕を開く (有)廣瀬 代表取締役 西森貴芳氏(長野)

(有)廣瀬 代表取締役 西森貴芳氏(長野)

 (有)廣瀬(西森貴芳代表取締役、長野同友会会員)は、長野県塩尻市にある信州健康ランド内のテナントとして「和食処あずさ」を経営しています。健康ランドは営業しなくてもただ待っているだけでお客さんが来るところで、地域の高齢者もよく来ます。和食処あずさも連日賑わっていました。

社長の仕事は社員に希望を見せること

 そのくらい常連のお客さんなど人がたくさん集まるところだからこそ、コロナウイルス感染拡大に伴い「人がたくさんいるから危険な場所」になってしまいました。売上が前年比30%を下回る月が何回もあり、健康ランド自体も2カ月間休館になったことで、その間の保障はまったくなく社員も24名いる中でこのままでは会社がもたないと危機感を抱きました。

 一時は家族だけでという考えもよぎりましたが、同友会の先輩から「社員を守るではなく社員と共に」という話を聞いたことを思い出し、「会社は一人では回らない、辞めてもらうという選択肢はない」と心に決めました。そしていつか「コロナがあったから成長できた」と言えるように新しいことを始めようと社員と話し合いました。これまでのように待っているだけではなく、自ら営業することを始めたいとさまざまなアイデアが出ていましたが、その中でSDGsに取り組もうという声が上がり、貧困問題の解決に向けて子ども食堂を始めました。ただでさえ経営が苦しいのに無料で子どもたちにお弁当を配るのはどうなのかという思いもありましたが、盛況で仕事がどんどん増え、これまで仕事がなくモチベーションも下がってきていた社員がイキイキとし、お客さんや行政からも称賛されました。

新たな挑戦

 子ども食堂を続けていく中で、SDGsの流れで古民家を使わないかと声が掛かりました。長野県には古民家がたくさんあります。壊すのにもCO₂がたくさん出ますし、新しく建てるにも木材が高い上、輸送費でCO₂が出ます。コロナで飲食店がダメージを受けている中でも焼き肉やウナギが売上を伸ばしているという情報があったので、満場一致で炭火焼きの店を古民家でやってみようということになりました。

 早速、事業再構築補助金で事業をスタート。まずは塩尻市にある築138年の古民家を、北アルプスを望める安曇野にそのまま移築し、テラス席を増築しました。お店の名前は「炭火焼き 旦(だん)」。「旦」には夜明けという意味があり、新しいことを始めるには一番の名前ではないかと、社員と一緒に考えました。コロナを乗り切って新しい幕開けをみんなで起こそうという想いが込められています。お店の雰囲気もよく、炭火焼きでのウナギはふわふわで絶品。料理やメニュー表などにも西森氏のこだわりがふんだんに見受けられました。

社員と共に明るい未来に向かって

 今では行政の「信州割」などでお客さんが増えてきており、健康ランドも8割まで戻ってきました。コロナで仕事がなくなり、シュンとしていた会社の雰囲気を「みんなで始めよう」と行動してきたおかげでみんなが主体者になり、みんなが経営に参画するようになってきました。みんなで乗り切ろうということだけでなく、「力を合わせて」「目標に向かって」という雰囲気になり会社がひとつになったと感じているとのことです。西森氏の話の中には何度も「社員と一緒に」という言葉が出てきていたのがとても印象的でした。

会社概要

設立 1992年
資本金 300万円
従業員数 27名
年商 2.4億円(昨年度1.1億円)
事業内容 飲食店
住所 塩尻市広丘吉田366-1 信州健康ランド内
電話番号 0263-86-9027
URL https://www.kur-hotel.co.jp/shinsyu/food/azusa