(株)トーコー 代表取締役社長 野口 和宏氏(宮崎)
ギフト業界はコロナ禍で激震が走りました。冠婚葬祭でのいわゆるフォーマルギフトと言われるものが激減。さらに企業や団体等のイベントが軒並み中止になることでそれに伴う記念品がなくなりました。しかし、ちょっとしたプレゼントやカジュアルギフトに力を入れているところ、ネット販売に力を入れていたところは逆に売り上げを伸ばしていました。
野口氏((株)トーコー代表取締役社長、宮崎同友会会員)は都城市でギフトショップを2店舗営業している二代目です。(株)トーコーの2020年4月時点での売上構成比は、個人客を中心とした店頭販売が全体の70%、ブライダルが20%、店頭販売はフォーマルとカジュアルが5対1という割合でした。10兆円と言われる全国のギフト市場は、フォーマルが30%、カジュアルが50%で同社とは逆です。同社が得意としてきたフォーマルは今後減少し、カジュアルは競争は激しいが伸びていくと予想されています。
この傾向は何年も前から指摘されながら、なかなか取り組めずにいました。コロナ禍はこの流れを加速させたのです。贈答品専門店として地域で生き残るためには―たどり着いたのが新しい売り物、売り先、売り方でした。
3つの挑戦―新しい売り物・売り先・売り方
一つ目は、今まで取り扱っていなかった食材の販売を開始し、フォーマルギフトの需要がなくてもお店に来ていただいたり、こちらから訪問したりという仕組みをまずつくりました。そのために店内に冷蔵庫と冷凍庫を設置し、日本全国のこだわりの食材を取り寄せて、お客様のご自宅や職場までお届けするという食材の宅配事業を開始しました。
二つ目は、内祝い専門店とオリジナルギフトの専門店を2020年の11月に楽天市場に出店し、ネット販売を始めました。強みを伸ばす取り組みでもあります。同社では7年前からレーザー彫刻機やサンドブラスト機を導入して名入れ工房を行っています。商品に名前や写真、メッセージを入れてオンリーワンギフトを1個から製作するというものです。この名入れ部門の売り上げが年々伸びていたので、この強みを生かしていこうということです。立ち上げて二年半、毎月着実に売り上げがつくれています。
そして三つ目の取り組みが店舗改装です。本店別館を新築して和雑貨の専門店をつくりました。1階は和をコンセプトにした生活雑貨1700アイテムほどを、2階は特設サロンとして日本の伝統工芸から世界のブランドまで合計300アイテムほどを展示して、ゆっくり見ていただくようにしています。カジュアルギフトという新たな分野の売り場をつなげることでお客様に回遊していただく空間と位置づけ、ターゲットの異なる客層の両方を今後深く取り込んでいこうという戦略です。
ニッチ市場を取り込む
新たな取り組みはある程度成果になって現れていますが、売り上げはコロナ前の水準にはまだ戻っていません。また、フォーマル5、カジュアル1という売り上げの構成比もほぼ変わりません。野口氏は、改めてカジュアルギフトの提案の難しさ、接客の難しさということも感じています。しかし、そんな中でも「こういうお店は地域に必要。頑張ってほしい」という声をたくさんいただいているとのこと。地域の方々からの手ごたえを感じています。
野口氏の挑戦はさらに広がっています。新たにソーシャルギフトと言われる市場が今後2倍になると予測されています。贈り先の名前や住所を知らなくてもSNSでつながっていれば気軽にプレゼントを送ることができるというものです。楽天のネット販売と合わせて非接触型ギフトの提案は、カジュアルギフト強化の柱になると感じています。
また、エシカルウェディングギフト市場が興っています。環境にやさしい製品を結婚式の引き出物として配って、SDGsを応援することにつながるというものです。ギフト業界の組合で作ったオリジナルのカタログを使って宮崎市内に進出し新規開拓をしていく戦略も描いています。
会社概要
創業年 | 昭和60年(1985年) |
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資本金 | 2,500万円 |
従業員数 | 14名(正社員11名、パート3名) |
年商 | 1億8,000万円 |
事業内容 | 贈答品・記念品の卸・小売 |
住所 | 〒885-0078 都城市宮丸町3街区15号 |
電話 | 0986-25-1999 |
URL | https://tohkoh1985.com/ |