【第45回】「業界の風習を打破する風雲児!」 ~未来につなげる新たな戦略で、和楽器を奏でる文化を全世界に~ (有)梅屋 代表取締役 梅原 久史氏(秋田)

(有)梅屋 代表取締役 梅原 久史氏(秋田)

和楽器文化を未来につなげたい

 秋田市で琴や三味線などの和楽器の販売・修理を行う専門店 梅屋楽器店 (有)梅屋(梅原久史代表取締役、秋田同友会会員)。家内工業がほとんどの業界であり、社員を雇用しているのは、全国約250店舗のうち10%弱です。そのなかでも(有)梅屋では社員6名、インストラクター3名で、難局を乗り切ろうと挑戦しています。

 2020年新型コロナの感染が拡大し、お客様が出演するイベントが相次いで中止に追い込まれました。その影響は同社にも及び、売り上げが前年比の7割減という結果に陥りました。

 社長である梅原久史氏は、「現状のままでは衰退する。和楽器文化を未来につなげていくには、業界の風習にとらわれていてはならない。新たな戦略で和楽器も社会と共に生きてゆかなければならない」と決意。ニッチに入り込める分野を特化し、事業の3本柱を構築するために舵を切りました。

授業の楽しさを先生から

 その一つは、教育現場への進出です。

 部活動の地域移行が進められるなか、「文化庁」部活動地域移行事業に『おウチで琴倶楽部』が採択されたことを機に、学校での授業をお手伝いする機会を得たのです。多くの児童、生徒たちが、直接琴に触れることで、『楽しい!』を実感してもらう場となりました。

 梅屋は、琴の扱いや弾き方に不安を抱えている先生たちの声を事前に聞いていたので、「はじめての琴」というガイドブックを先生たち用に作成配付し、琴の楽しさを子どもたちと一緒に体感してもらうことにも努めました。

 そのような気配りと、熱心さが伝わり、東北6県の学校からの受注が舞い込み、信頼感も生まれました。また琴の点検修理が履歴として残るように、点検シールを貼ることも容認されました。「琴の事なら梅屋楽器店」の知名度アップにもつながっています。さらに教育研究機関から講演を依頼されるなど、従来の仕事を「待つ」姿勢から、「新たな行動へチャレンジ」することで、教育関連の売り上げは4倍増となりました。

ブランド化を目指し顧客創造へ

 二つ目は、YouTube『梅channel』の開設と、EC販売(ネット上で販売する電子商取引)の強化です。

 動画を通して会社の進むべき道、大事にしている考えなどを広く知ってもらおうと、社長自ら出演し、和楽器の魅力、修理方法、そして購入した際の扱い方から弾き方までの過程を、丁寧に紹介しているほか、地元演奏家の生演奏も盛り込んだ内容となっています。その反応はとても好評で、全国からメンテナンス依頼が殺到しています。

 また、梅屋ブランドの商品開発にも力を入れ、国内と欧州で商標登録を取得。和楽器にロゴを埋め込み、『フロンティア』と名付けた琴をECサイトで販売するなど、業界の常識ではありえなかった斬新なアイデアで、オンリーワン商品を提供しています。さらに、和楽器の販売では導入されていない長期保証を取り入れ、購入後のサービスにも努めています。

日本の文化、音(こころ)を世界に

 そして三つ目は、海外進出です。

 もともと海外につながりを持っていた梅原氏は、ドイツで演奏家として活躍している日本人の先生から、販売代理店を担ってくれるとの声が掛かり、海外販売に力を入れ始めました。

 日本人が海外(ヨーロッパ)で30年以上も長く生活をしていると、日本の和楽器の音色を聴いたり触れることで、日本人であるという人格と誇りを認識するのだそうです。価格にいとわず、確かな音色を醸し出す和楽器へのニーズは、国内よりも強く感じると言います。

 また、現地の人々も純粋に和楽器の音色に魅せられる方が多く、和楽器への引き合いがあるのだそうです。ECサイトでは現在、南アフリカ、カナダからも注文を受けています。さらに、海外においても「販売+メンテナンス+WEBレッスン」というパック販売も手掛け、世界へ「UMEYAブランド」を展開しています。

 和楽器は、時代と共に進化していかなければ淘汰されてしまうと痛感し、三つの事業を構築した梅原氏。和楽器から奏でられる音は、古くから育まれてきた日本人の心、その心を守りたい。『100年、200年先まで変わらぬ音(心)を伝える』というミッションに向けて、未来を見据えています。

会社概要

創業 1993年(平成5年)
資本金 850万円
店名 梅屋楽器店(琴・三味線・横笛・販売・修理・和楽器専門店)
所在地 秋田市中通6丁目4-23
電話 018-837-6151
事業内容 和楽器全般の販売、修理・調整、演奏会業務、和楽器教室
社員数 6名
URL https://www.umeya-gakki.com/