【第46回】すべての人が着る喜びを感じる洋服を提供する (株)KUTO 代表取締役 福田 圭祐氏(島根)


(株)KUTO 代表取締役 福田 圭祐氏(島根)

 (株)KUTO(福田圭祐代表取締役、島根同友会会員)は、創業以来ジャージやカットソーなどの下請けを主に行う縫製工場でした。下請け仕事だけでは、やっていけない時代になり2012年に同友会に入会し経営指針を成文化。その中で、アパレル・大手縫製会社からの衣料品の受託加工から、徐々にセレクトショップと直に取引をする形に変え、顧客への直販としてプリント事業、産業分野を変えて工業用フィルターの製造を行う事業など変革を行ってきました。

 そしてThrough_sleeve(スルースリーブ)シャツの開発・販売も始めました。

洋服ですべての人を幸せにしたい

 取引先や顧客が変わっていく中、病院や施設で障害のある方が、服を開いたり生地を継ぎ足したり障害があっても洋服を着ることができるように工夫している姿を見て、障害のある方が楽に着ることのできる洋服を作りたいと思い、障害や病気で着替えに不自由を感じる人が喜んでもらえるシャツの作成に取り組みました。

 きちんとした場には、みんなと同じようにきちんとした洋服を着ていたいという願望を叶え、病気や障害のため、引きこもりがちになった人の気持ちが襟付きシャツを着ることで前向きな気持ちになってもらいたい。きちんとした場への出席や、パートナーとのお出掛け、友だちに会いに行きたいという気持ちになってもらいたい。その思いからの取り組みでした。

麻痺を起こした人が楽に着ることができるように工夫したシャツ

 脳梗塞などの病気や障害になり麻痺を起こした人は、片手で洋服を着るため、大きめのジャージなどをかぶるようにして着て生活している。細くて伸びない生地の襟付きシャツは、手間がかかるため着ることを諦めざるを得ない。また、指先が動かないからボタンを留めるのに1時間くらいかかるという状況を知ります。

 そこで、脇の下にひし形のストレッチ素材を使い、肘が脇を通るときに伸びる機能や、袖口カフスは、入れる だけで留まり、前立てのボタンはマグネットになっていて、合わせるだけで簡単に留めることができるように工夫しました。

 スルースリーブシャツは片手で楽に着ることができ、麻痺を起こした人の洋服の着替え方が変わるデザインにしました。

スピード感を持って商品開発

 脱下請けのために雇用した企画開発を行うパタンナーと共に約10年間ショップと直取引を行ってきた経験により、実際の商売をしながら商品開発をスピード感をもって取り組むことができました。そして、スルースリーブシャツの縫製はとても難しい仕様で、できる人が少ない状況ですが、ベテランの社員が中心になり若手の縫製士に指導することで少しずつできる工程が増えています。

 「さまざまな病気や障害で着替えに不自由があるところは多いと思いますが、今後、社員と共にひとつずつ取り組んでいこうと思います」と福田氏は語ります。

社員の仕事への関心と理解

 社内経営方針発表会や地元でのピッチ会の練習などで、いま何をしようとしているのか社員と共有しています。社員の家族にも同じような麻痺を持つ方がおられ、シャツをモニターで着てもらった感想を共有。施設に 一緒に出向き、試着会の手伝いを通じて、どんな人に喜んでもらえるか、その姿を感じてもらっています。

 「この活動を通じて社員と共に、何のためにこの仕事をしていくのかを深めていき、皆で誇りを持ち仕事をしていきたいと思います」と語る福田氏。誰もが幸せに暮らせる社会をめざし挑戦は続きます。

会社概要

創立年 2019年10月1日(創業2001年)
資本金 100万円
従業員数 10名(パートアルバイト含む)
年商 5,100万円
事業内容 衣料品の縫製(Through sleeve)、プリントウエア作成、工業用フィルター製造
住所 島根県松江市宍道町昭和103番地
電話番号 0852-66-3115
URL https://kuto.jp/