【第8回】中小企業ならではのデジタル活用で関わる人が幸せになれる企業へ変革 (株)パルサー 代表取締役 阿部章氏(宮城)

 (株)パルサー 代表取締役 阿部 章氏(宮城)

 (株)パルサーは阿部章氏(代表取締役、宮城同友会会員)の父が1989年に創業した会社です。「私たちは関わる人が幸せになれる会社をつくります」というミッションを掲げ、ラーメン店に置く券売機の代理店販売業を生業としていましたが、自動販売機やセルフレジ、WEBメディア制作など事業の幅を広げてきました。社員の心を重視して一人ひとりが生き生きと働く会社づくりの取り組みが評価され、2023年には「第9回ホワイト企業大賞」の黒から白への躍進賞という特別賞を受賞しています。

デジタル化にどのように対応すべきか?

 2023年8月3日、宮城同友会/仙台市経済局中小企業支援課の共同開催による「デジタル活用方法セミナー」が開催され、阿部氏が事例を報告しました。中小企業の現場では、東日本大震災前よりIT化/デジタル化の必要性を認識しながらも具体化できない状況が続き、新型コロナウイルス感染症拡大への対応からさらにその流れは不可逆的(元に戻らない)になりました。最大の問題はIT化/デジタル化が目的化し、具体化まで到達しないということです。その問題を背景に、本セミナーは「経営課題を解決するための具体策としてのIT化/デジタル化」「中小企業の現場から考えるIT化/デジタル化」をテーマに掲げ開催しました。以下、阿部氏の事例を紹介します。

「うまくいきやすいケース」と「うまくいきにくいケース」

 実践から生まれたIT化/デジタル化の「うまくいきやすいケース」は、小さな成功体験を積み重ねること(使ったら便利)、みんなで良くしていこうという意識を高め時間を確保すること(誰かに丸投げしないこと)、担当を一人にしないこと(または影響力がある担当者を置くこと)、はじめから完璧を目指さないこと、システムに業務を合わせていくこと、外部コンサルを活用すること、若手や改革意識の高い人を担当にすること(幹部が担当しても組織は動かない)、時にはトップダウンも有効に使うこと、などです。

 逆に「うまくいきにくいケース」は、目標とする設定が高すぎること、担当や現場に任せっきりにすること(社長が分からないと諦める)、社長やリーダーがやらない/やり方を変えない/壊すこと、外部コンサルに丸投げすること、人の意見を聞きすぎること(全体最適で取り組まなければ逆に業務が増える)、一つのシステムにこだわりすぎること(一長一短)、やらないなどの反発を受け入れすぎること、などです。

 具体的な取り組み内容として、①営業/商談をWEB化したこと(月約600件の問い合わせ)、②案件ごとに業務フローを見える化したこと(kintone&Mailwiseの活用)、③電話を全録音/転送にしたこと(クレーム対応の透明性/営業力のある社員のやり方の共有)、④売買契約書をWEB上で完結したこと(クラウドサインやLINEの利用)、⑤納品/アフター対応を動画紹介に切り替えたこと(直接説明を求める人も少なくないが、動画を見て自分でやれる人も多い)、⑥社内Q&Aサイトを設置したこと(社内用検索サイトとしてZendeskを活用)などがあります。実際の作業は地味ですが、小さな問題や課題を見逃さない改善の積み重ねにより、次第に大きな効果として現れるようになっていきました。

DXの本質を捉える

 以上の事例によって①経営者のプレイングマネージャーからの脱却(デジタル活用は組織/社風づくり)、②戦略的な競争優位性の構築(デジタル活用は提供価値の見直し)、③働く人不足の解消(デジタル活用は人の仕事の再定義でまずは生産性を1.5倍から2倍にすること)の3点が、IT化/デジタル化によってもたらされた効果です。中小企業が抱える経営課題解決の突破口となる貴重な取り組みともいえます。

 また、DXの本質はこれまでの実績(データ)を活用することであり、データの入れ方、活用方法を明らかにし、今までやってきたことをデジタルに変えていく作業こそが、中小企業ならではのDXであることも語られました。

(株)パルサー
年商 4億9,000万円
社員数 36名
事業内容 無人化・セルフ化機器販売事業、リース・レンタル事業、オウンドメディア事業、デザイン事業
設立 1989年
資本金 1,000万円
URL https://plsr.jp/