【第11回】誰一人取り残さない 一人一人の違いを力にする組織 (株)プロデュース 代表取締役 中原 亜希子氏(福岡)

(株)プロデュース 代表取締役 中原 亜希子氏(福岡)

 (株)プロデュース(中原亜希子代表取締役、福岡同友会会員)は、北九州市で認知症特化型の介護事業所を6カ所展開しています。幹部の8割は女性で、ママさん、高齢者、外国人、障害者など多様な人材を受け入れ、誰もが働きやすく、誰一人取り残さない組織づくりを目指しています。

ゼロ歳から100歳までが支え合う会社

 取り組みを始める前の中原氏は、有能な人材だけを採用したいと考えていました。しかし、業績低迷によって従業員の給料が払えない、離職率が40%を超えるなど負の連鎖が続き、自分には経営者としての能力がないと悩みます。さらに介護業界の人材不足は深刻で、2年後には32万人、15年後には70万人が不足すると言われています。これらの背景から、ゼロ歳から100歳までが一つ屋根の下で支え合う会社、一人一人の違いを力にする組織づくりをビジョンに掲げ、多様な人を受け入れ、誰もが働きやすい職場づくりに取り組みます。

マニュアルによってどんな人でも戦力化

 他の事業所で断られた人材を積極的に採用するため、定年を60歳から71歳まで引き上げ、月2回だけ出勤や1日1時間の超時短勤務など多様な働き方を取り入れます。優先順位の見える化や業務の見える化など徹底的なマニュアル化・標準化により初日でも素人でも戦力化できる仕組みを作りました。 さらに子連れ出勤を可能にして、保育園に預けなくてもフルタイムで働ける環境を作っています。施設内に子どもが集まるスペースを設け、年齢の違う子ども同士が面倒を見たり、一緒に宿題をしたりして過ごしています。ママさんが働きやすくなるための取り組みですが、働きやすさだけでなく、利用者の安心や子どもの成長にもつながっています。施設内は子どもの走り回る足音が響き渡っていて、それはまるでおじいちゃん、おばあちゃんの家に孫が遊びに来たような感覚になります。これが利用者にとっても安心感ややすらぎに変わっています。子どもにとっては、認知症の利用者と接することで、実体験をもって認知症について理解でき、コミュニケーション力の向上にもつながっています。

真の人間尊重

 ここまでは年齢や性別など目に見える違いでの人を生かす経営の取り組みですが、パーソナリティ、価値観、育った環境など外部からは見えない部分での人間尊重ができてこそ、人を生かす経営だと考え、さらなるチャレンジに取り組んでいます。同社にはいじめられた経験から心を開けない方、うつ病などの精神障害を持っている方など見た目には分からないさまざまなハンディを抱えながら働いている方がたくさんいます。採用当初は現場からは不満の声があがるなどうまくいかないこともありましたが、その人にあった共育を続け、変化が見えた時、自分たちの取り組みが間違っていないと実感できたと言います。(株)プロデュースで働くことがその人の人生の転機になることを目指しています。

 中原氏とって多様性とは「違いを力にして新しい価値を生み出すこと」。人はそれぞれ違いがあり、その違いを表に出すことで課題が見え、それを解決することで新たな価値が生まれます。介護業界の人材不足は目に見えていますが、中原氏は自身と関わるすべての人の力を結集させて人材不足にならない組織こそが令和時代の中小企業の強みになると確信を持って前進し続けています。

(株)プロデュース
創業 2003年10月
資本金 1千万円
従業員数 110(正規40名、パート70名)
年商 4億円
事業内容 認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、居宅介護支援事業所
住所 福岡県北九州市八幡西区本城1-20-20
電話番号 093-695-3850
URL https://www.pro-kirameki.com/page1