【第12回】どの地域にもビジネスシードは必ずある (株)越前隊 代表取締役 関 和宏氏(福井)

(株)越前隊 代表取締役 関 和宏氏(福井)

何のために仕事をするのか

 関和宏氏((株)越前隊代表取締役、福井同友会会員)は、高校を卒業後に自衛隊に入隊しますが、空いた時間を使ってPCを購入してデザインを学び、オリジナルのプリントTシャツを作るなど、アパレルの楽しさを知ります。ちょうどその頃富山県にてチャレンジショップがオープンし、21歳のとき一念発起してアパレルのセレクトショップを起業します。その後順調に福井県でも店舗を拡大し、これから金沢にも出店しようというときアパレルブランドより専門店出店を打診されます。しかし、「そのとき同じ金沢でもそのブランドを扱っているお店があり、そのお店のことを考えました。向こうにも従業員がいてブランドの取引停止などになったら大変だと。そうしたとき自分は楽しんで仕事ができるのかと思い、出店を辞退しました」と関氏は振り返ります。

 この経験が、何のために仕事をするのかを考える、大きな転換点となったのです。地域の人があってこその自分、という思いが強くなり、実家が取り扱っている越前漆器をどう生かすかということも考える時期と重なって「趣味と結びつけるのが面白いんじゃないか」と、将棋盤の製作に取り掛かります。しかし乾燥するのに3カ月。その間何かできないかと考えていたとき、焼き鳥でふと付けた薬味に感動します。それが河和田地区でのみ作られていた「山うに」でした。「小さい頃から祖母が『体にいいから』と、何にでも付けて食べさせてくれたのですが、子どもには受け付けない味でした」と関氏。大人になってこんなにおいしいものかと気づき、友人と3人で山うにを使った取り組みを始めます。

自分の事業にあてはめる機会

 「山うに」は赤なんばと柚子を使った練り物の薬味で、河和田地区でも一部の地域でしか作られていない超ローカルフード。ある意味ゼロからのブランディングをする際に、「子どもたちに山うにの話をする機会があり、自分もそうだったようにそのまま話をしても嫌われるだろうと考えました。そこで、子どもに受けることをと考えだしたのがたこ焼きでした」。薬味だけに消費量が多いわけでもなく、回転率も低いので、たこ焼きという直接の売上に加え認知度向上にもつながる取り組みは、やがて事業化へとつながっていきます。同時期に同友会にも入会し、丹南支部に出席を続けています。「毎月のように誰かがビジネスの話をしてくれますし、それを自分の事業にあてはめて考える機会もくれます。なによりも仲間ができるのは大きいですよね」と関氏は語ります。

地域活性化へ4つの課題

 その中で自身の事業には4つの課題を解決する取り組みに集中しています。「1.地域資源を生かそう」、「2.次世代が地域に誇りを持てるようにしよう」、「3.障がい者・高齢者などの社会的弱者とともに歩もう」、「4.地場産業と共に歩もう」です。山うにという地域資源を子どもたちが愛着を持てるように取り組み、障害者の方々と山うに作りを行ない、河和田の地場産業である越前漆器とリンクできる場を作る。今では県外から講演依頼が来たり、県内外の行政からアドバイスを求められたりするなど、地域におけるビジネスの進め方で徐々にその名は知られてきています。今秋には有名スーパーでの取り扱いも始まり、山うにの認知度とともにますます上昇していく気配です。

 「今も県内外の高校生や大学生が研修で河和田を訪れてくれています。地域の産品を通じて教育と観光がつながる流れになってきていますし、それを地域の活性化につなげていきたいと思っています」と、河和田の魅力を日本全国に発信している関氏の取り組みはさらに加速していきます。

(株)越前隊
設立年 2016年
資本金 200万円
従業員数 7人(内、パート5人)
年商 5,000万円
事業内容 山うに製造・販売、障がい者雇用施設の運営
住所 福井県鯖江市尾花町65-35-5
TEL 0778-42-7942
FAX 0778-65-2309
URL https://echizentai.com/