【第15回】庭屋がカフェを始めた理由~社員と共に10年ビジョンの実現~ (有)新光園 代表取締役 野瀬 陽氏(新潟)

(有)新光園 代表取締役 野瀬 陽氏(新潟)

 (有)新光園(野瀬陽代表取締役、新潟同友会会員)は、1965年に野瀬氏の祖父が地域の祭りで植木を売り始めたことから創業し、1992年に法人化。現在は庭園の設計・施工をメインとしています。

来店型店舗「ガーデンスタジオ雅楽庭(がらくてい)」オープン

 公共工事下請け70%、元請け30%の受注割合。営業をすることなく与えられた仕事を粛々とこなす毎日で、工事が終われば次の工事の依頼がある。それが当たり前だと思っていましたが、不景気になると元請けは安い業者を選ぶようになり、このままでは危ないと思った野瀬氏は、下請け体質からの脱却、BtoCへの切り替えを決意します。そして2011年、来店型店舗『ガーデンスタジオ雅楽庭』をオープン。これが1つ目のターニングポイントです。お客様との打ち合わせは店舗で行い、当時まだ新潟の造園業者では少なかったCADを使用。また、各種コンテストに積極的に応募し、その受賞によりデザインの付加価値を高めました。

同友会への再入会と経営指針成文化

 雅楽庭オープン前と比較すると、総売上高は若干下回るものの粗利が増加し、社員への還元と設備投資の準備ができました。しかし、新たな悩みが生まれます。雅楽庭という素敵なモデルガーデンを作ったものの、来店者はすでにお庭づくりを検討中の方。集客はOB顧客へのDMとホームページのみで、潜在顧客の掘り起こしができません。社内では若い社員が定着せず、常に人材不足の状態で、野瀬氏や高齢化する社員は残業の毎日。気持ちは焦り、先の見えない真っ暗なトンネルに入ってしまった気分でした。  

 「自分自身を見つめ直し、進むべき方向を見極める必要がある」と、退会していた同友会に2020年に再入会し、同年開催の第4期経営指針成文化と実践の会を受講しました。これが2つ目のターニングポイントです。特に「10年ビジョン」は社員全員を巻き込んで策定し、野瀬氏が何気なく発した言葉に対して、社員からいろいろな意見が率直に飛び交うようになりました。ビジョンづくりの過程で、社風や目指すところがだんだんと一致し、「これが1つのチームなんだ!」と感じました。成文化した経営指針が、野瀬氏にとっての“守りから挑戦への切り札”となります。

複合型施設「5yukuri(ゴユクリ)」の誕生

 経営指針発表時はコロナ禍真っただ中。野瀬氏は事業再構築補助金を活用して2022年10月に複合型施設『5yukuri』をオープンしました。プールやサウナのある癒し空間施設やコワーキングスペースの提供、カフェ営業、マルシェや苔テラリウムづくりなどのイベントの開催などを通じて、たくさんのお客様に安らぎ・語らい・活力の場としての庭のよさ、必要性を感じてもらえる場となっています。

 また、付加価値の高い空間を外部発信して若い人材の採用につなげ、専門性の高いプロ向け講習会を開催することで業界のレベルアップと技術の伝承も目的とした壮大なチャレンジです。オープン後、新聞やテレビ、雑誌等の取材、お客様のSNS投稿による宣伝効果は絶大でした。レンタルスペースはご家族やカップル、企業の福利厚生やパーティーでの利用のほか、「サウナー」の集いや、アイドルやコスプレイヤーの撮影会場所としても活用されています。

点が線になり、つながって広がる未来

 3つ目のターニングポイントとなった5yukuriオープンから1年。これまでとまったく違う業務内容がブラスとなり、新たな問題・課題と向き合いました。繁忙期と閑散期の想定の難しさ、スタッフ間の共通認識の違い、連携不足等による本業への影響、リピートしてもらうためのメニューの見直しなど、日々起こることに対処する1年でした。

 5yukuriは一見、造園業とはかけ離れているように見えますが、すべてつながっていると野瀬氏は言います。「お客様が何を望んで、どうして欲しいのか。その答えを見つけ出す場所が5yukuriです。さまざまな人と出会い、業界でまだできていないこと、やるべきことを実践し、自社ブランド力アップ、企業体質の改善はもちろん、阿賀野市を中心とする地域貢献につなげていきたい。そして何より、社員達が生きがいを感じながら元気に働く企業づくりをしたい」と、野瀬氏は五感を研ぎ澄ませて取り組んでいます。

(有)新光園
設立年 1992年
資本金 300万円
従業員数 11名
年商 1億3千万円
事業内容 庭園設計施工、エクステリア設計施工、外構設計施工、公園・緑地工事、生産施設緑化工事、樹木維持管理、樹木販売、プール・サウナ事業、インドアグリーン事業
住所 阿賀野市天神堂387-1
電話番号 0250-62-4423
URL https://www.e-oniwa.jp/