【第17回】創業者から創業者へ~コワーキングスペースからつながる・広がる地域のコミュニティ~ (株)水島紙店 代表取締役 水島 康明氏(長野)

(株)水島紙店 代表取締役 水島 康明氏(長野)

水島紙店とは、どんな会社?

 水島紙店(水島康明代表取締役、長野同友会会員)は1946年創業。長野市郊外に位置し、書籍やチラシなどの印刷用紙の卸問屋を営んでいます。最盛期は従業員45名、年商20億円まで成長した会社も創業から75年が経過し、紙が貴重だった時代からペーパーレスの時代へと社会は大きく変わりました。水島紙店は自らの再定義を行い、よりよい社会づくりを目指す企業に変わろうと模索しています。モノの経由地から、人とコトが行き交う交流の場をつくる。そんな「新しい問屋業」を目指しています。

新事業の発端

 業績が年々落ち込む中、顧客開発を目的として手持ちの紙商材のうち、店舗やイベントで使用する紙袋に着目し、「手提屋(てさげや)」というブランドを立ち上げ、オーダー紙袋製作事業を開始します。新規開拓を進めていくうちに、やがて紙袋から一歩踏み込んだ顧客支援の必要性を感じるようになりました。そこでかねてから構想していた自社事務所(敷地1,800坪)の紙袋ショウルーム計画を発展させ、ビジネス交流の拠点としてコワーキング(Co:共同 Working:働く)スペースおよびシェアオフィス事業を着想するに至りました。

コワーキングスペースをスタートして

 コロナ禍による紙需要激減で壊滅的な影響を受ける中、本事業は事業再構築補助金対象事業(第5次通常枠)に採択され2023年3月に開業しました。新事業のテーマである旅にちなみ、施設名は「TERMINAL51°(ターミナル・ゴーイチ)」と命名しました。キャッチコピーは「目的地は、よりよい未来。」それぞれの目的地(未来)を目指して人々が行き交う場にしたいという思いが込められています。

 コワーキングスペースは場の提供では終わりません。このコミュニティからさまざまな協業が生まれ、新しいビジネスが創造されていく「仕事づくり」が進められています。さらにその仕事はさまざまな境遇や環境にいる人々が参加、活躍できる、ダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指しています。開業から半年を過ぎて利用者はのべ1,000人以上、利用回数は5,000回を超えています。

コワーキングスペースから広がる地域社会

 「場所づくり」「仕事づくり」に続く段階として「社会づくり」を見据えています。具体的には、まだ余剰スペースのある倉庫を活用してスモールビジネスが集積する「街」をつくることを構想しています。ロールモデルは住みやすい街として名高いオレゴン州ポートランド。水島氏には「長野市は自由な気質で自然が豊か。イノベーションを起こしていくならここがいいね」と言われる街にしたいという思いがあります。街全体を変えることは容易ではありませんが、TERMINAL51°敷地内の小さな「街」から、面白いコトが次々と生まれ、広がり、よりよい地域社会(未来)がつくられることを目指しています。

 かつて水島氏の祖父が生活していた事業所つづきの自宅は今、シェアオフィスとして創業者が集まるスペースとなっており、新たな時代を踏み出しています。創業者から創業者へ、住み継がれる素敵な空間を提供し続けている水島氏。潜在的にコワーキングスペースを必要とする方たちへ「TERMINAL51°」を普及しつつ、水島紙店はさまざまな業種の創業者と多様性の広がるコミュニティを創造し、地域の社会づくりに取り組んでいきます。

(株)水島紙店
設立 1946年
従業員数 6名
資本金 2,200万円
年商 3億2,000万円
事業内容 紙及び紙製品卸売業、レンタル倉庫・物置の賃貸、 コワーキングスペース&シェアオフィス事業
所在地 〒381-0034 長野県長野市高田420
電話 026-227-4131
TERMINAL51°
URL https://terminal51.jp/
手提屋
URL https://tesageya.net/