【第20回】考え過ぎず、まずは実践 (株)緑工房 代表取締役 河村雄太氏(鳥取)

(株)緑工房 代表取締役 河村雄太氏(鳥取)

(株)緑工房の紹介

 河村雄太氏((株)緑工房代表取締役、鳥取同友会会員)は、短大を卒業後、住宅設備の会社に就職しましたが、不況の影響で退職。父が経営する電気部品組み立てを行う会社に入社するも1年後にその会社は畳まれ、並行して運営していた就労支援事業所「和貴の郷」が父の本業になります。河村氏は、その事業所の農業部門の責任者として、障害者の方たちと露地もの野菜を栽培し始めました。

 その後、「和貴の郷」の利用者が増え、就労移行支援の受け皿として農業部門をのれん分けし2012年に(株)緑工房を設立。河村氏が代表取締役に就任しました。しかし、経営者の自覚はなく、「名ばかりの社長でしょ」と思っていました。2016年からきくらげ栽培を始め、2018年から主事業としています。現在はきくらげの栽培、加工・販売ときのこの菌床(きのこの培地)の製造・販売を行っています。栽培されたきくらげの6割は乾燥して大手飲食店に卸しており、2割は生のまま鳥取市内の学校給食と県外のスーパーマーケットに卸し、残り2割を自社のホームページ併設のECサイトで全国の一般消費者向けに販売しています。社員は2名ですが、菌床製造と栽培は「和貴の郷」の利用者20名ほどが行っています。

そんな面倒くさがりがなぜ経営者なのか?

 会社自体は好調でしたが、河村氏は「社長としてこのままでいいのか?」と思うようになります。いろいろ取り組んでみたものの閉塞感と焦燥感を感じ、何をしたらいいのか分からない状態だったとき、知り合いから同友会を紹介され入会しました。

 入会当初はただ誘われたから例会に行き、受動的に参加していました。そんな折、「和貴の郷」を事業承継することが決まり、危機感を覚えて、何か経営のヒントはないかと例会へ毎回参加するようになります。すると「私の経営者としての道は経営指針書をつくってから」という報告を聞いたことをきっかけに、「経営指針を創る会」の受講を決めました。

経営指針を創る会に参加して

 講師陣から「経営者としての覚悟が見えない」と図星をつかれ、ぐうの音も出ませんでした。後継者だからこそ「何でやるのか」をはっきりさせることが大事だと気づき、経営指針書を完成させました。取り組む前に考えていた高いハードルは受講後には低く感じ、表現する機会を得たことで苦手だった自己開示の練習にもなりました。また、「すべてのことは他責でなく、自責である。だからこそ、考え過ぎずに、まず実践すること」との報告から、経営者としての責任から逃げないことも学びました。

今後について

 社内で毎月必ずミーティングを開き、課題に感じていた社員同士のコミュニケーションの機会を作っています。面倒で避けていた役(仕事も同友会も)を引き受けるようになりました。

 今後の事業所の方針としては「利用者本位のサービスを行うこと」「利用者自身が支援・サービス内容を選択できるようにすること」を掲げ、事業内容的に弱い立場になりやすい社員を社長である自分が守り、この会社にいてよかったと思ってもらえるように取り組むことを決意しました。「社員全員が『なぜするのか』の共通の判断基準を持っておけば、仕事や支援が共通の方向性、方針に進む」と言う河村氏。社員の個別面談を行い、一人一人と向き合いながら傾聴と自己開示を実践しています。理念は誰が見ても理解・納得できるようにつくり替え、方針を再考し、行動指針を共有して、社員みんなが同じ方向性で進んでいけるよう仕組みや制度の整備にも着手し、マニュアル化・標準化を進めて固有の人しかできない仕事を減らしています。

 「劇的に変化することは難しいし、変わることはエネルギーがいる。でも、1ミリずつでも前進して一つずつ積み上げることで、振り返った時にどれだけ進んだかがわかる。『変化は成長』と信じて、自己変革を社員と共に続けていきます」と語ってくれました。

(株)緑工房
創業 2012年
社員数 2名
資本金 700万円
売上 2,200万円
事業内容 きくらげの栽培、加工販売ときのこの菌床の製造販売
所在地 鳥取市河原町長瀬61-11
TEL 0858-71-0975
URL https://midorikoubou.jp/%20