【第21回】ガスで地域の暮らしにぬくもりを提供 鳴門ガス(株) 代表取締役専務 中岸真史氏(徳島)

鳴門ガス(株) 代表取締役専務 中岸真史氏(徳島)

 鳴門ガス(中岸真史代表取締役専務、徳島同友会会員)は1968年に徳島県の玄関口である鳴門市のガス販売店8社が集まって作った会社です。若き4代目の中岸氏は、2010年に同社に入社しましたが、世界的な脱炭素社会に向けた動きによるエネルギーの分散や人口減少に伴う顧客の高齢化により、ガスの顧客数と販売量は減少し続けており、ガスを主軸とする既存の事業構造の転換が必要になってきていることに危機感を感じていました。

即湯サービスが生まれたキッカケ

 そんな時、知人との「エコキュートの故障で、40分かけて銭湯に通っていて大変だ」という何気ない会話の中で「自社のお客様であればすぐにお湯を出すことができるのに」と感じたことが今回のサービスが生まれたキッカケです。お湯が出ない場合、ガス業界では給湯器を仮設して一日も欠かすことなくお湯を出すことができますが、オール電化の場合は新しい給湯器を購入するか部品を取り寄せて修理をしてもらうかで、数日間はお湯が出ないことが当たり前だということを知りました。また、インターネットで検索をしてもエコキュートは修理ができる会社が少ないこと、お客様が困った場合の連絡先が分からないことを知り、ここにビジネスチャンスがあると思いました。

 同時期に追い打ちをかけるように起こった2020年のコロナ禍でガスの消費量はますます減少し、自社が提供できる付加価値の見直しを行った結果たどり着いたのが、「即湯(そくとう)サービス」でした。ガス業界の厳しい状況下でオール電化のお客様とも出会うことができるこのサービスは自社の起死回生になると信じ、2021年6月からサービスを開始しました。

 すべての給湯熱源に対応し、即日お湯を出すことができる即湯サービスは、従来から当たり前にあった「仮設という名もなきサービス」をオール電化という新市場にブランド名をつけて進出したサービスです。結果、社内での負担が少なく、お客様から喜んでいただけることで社員のやりがい向上にもつながってきています。また、価格設定や広告の出し方なども手探りで始めたこともあり、自分たちで作り上げたという誇りを持てるようになりました。

 即湯サービスがもたらす効果として、ガス顧客との接点が強化されたことに併せて、今まで出会うことがなかった地域のガス以外の顧客との接点が持てたことが挙げられます。ここから給湯器の取り換えやリフォームを含めた長期的な関係を築くことにもつながっています。実際の数値としては、サービス開始から2年間で新規顧客からの依頼が約64%あり、給湯器の販売率は77%、他燃料からガスへの燃転率は33%、リフォーム成約は3件ありました。

ガス業界に生きる者の使命

 LPガスの需要は2050年には今の6割になり、家庭用はほぼなくなると言われています。世の中の動きが変わっていく中で、自社だけでなく他社のガス会社も生き残りがかかっています。「LPガス事業で培った技術で次の時代を切り拓いていく」と語る中岸氏が見ている未来は、ガス屋だからこそできる画期的な「即湯サービス」を、思いを同じくするガス会社の仲間と共に全国へ展開していくことです。すべてのお客様が「お湯が出なければガス屋に連絡をすれば良い」と、安心して暮らしていける世の中になることを願い、この思いに共感してくれる仲間が全国にも広がってきています。即湯サービスが全国で認識されることで、ガス会社が次の時代に必要とされ同時に地域社会に貢献することができます。自社理念である「温もりのある地域社会をつくります」の実現に向けて、中岸氏は新たな一歩を踏み出しました。

鳴門ガス(株)
創業 1968年
資本金 2,500万
社員数 58名
年商 10億円
事業内容 LPガス、燃料小売業
住所 〒772-0003 徳島県鳴門市撫養町南浜字東浜24-21
電話番号 088-685-0195
URL http://www.narutogas.jp/