
NPO法人家族支援フォーラム 理事長 米田順哉氏(中同協情報化推進本部長)
愛媛県で障害者福祉事業を営むNPO法人家族支援フォーラム。理事長の米田順哉氏(中同協情報化推進本部長、愛媛同友会代表理事)は、もともと銀行マンとして働いていましたが、両親が亡くなったことをきっかけに当時勤務していた京都から地元愛媛に戻りました。
米田氏の弟はダウン症の障害があり、両親亡き後に障害者がどう生きていくのか、障害を抱える弟に兄としてどう向き合うか、米田氏の人生は転換していきました。
福祉事業への参入

もともと、米田氏の父が障害福祉に関わる活動をしており、当時の障害福祉制度は旧体系の「措置」で、入所先やサービスの内容を利用者が選べないという時代でした。帰郷後、愛媛県内で学習塾を経営していた米田氏は、それまでの父の生きざまを見て「いずれは障害福祉全体に貢献したい」との思いを抱いていました。
2003年、障害者福祉に「支援費制度」が導入され、株式会社やNPO法人が障害福祉事業に参入できるようになります。そのころ、自閉症の子どもが生まれたことをきっかけに「子どもが地域の中で幸せに生きられる環境をつくりたい」と具体的な手順とビジョンを持っていた現在の副理事長と出会います。意気投合した2名によって2003年10月にNPO法人家族支援フォーラムが設立され、米田氏は障害福祉の世界へと足を踏み入れました。
事業拡大

「障害者が一生涯地域の中で幸せに暮らせるような仕組みと環境をつくる」というのが設立当初からの法人理念の核です。そのためには、親から自立し安心して暮らせる場が必要と考えた米田氏は、2005年にNPO法人の運営としては愛媛県内初となるグループホームおよびショートステイの事業を開業します。
その後「障害があっても安心して働ける場をつくりたい」という思いが、2008年に障害者自立支援法が施行されたことをきっかけに、それまで営んでいた店舗の一つを就労移行支援事業として活用することで実現。さらに、そこで働く人たちの次の受け皿として、2010年・12年・14年に新たに飲食店をオープン。同時に清掃事業も手掛け、障害者の働く場として飲食事業と清掃事業の二つの柱を確立していきました。
しかし、事業拡大にあたって無計画にスタッフや借り入れを増やした結果、経営は赤字体質で、資金繰りもポケットマネーからの補填が無いと回らないという厳しい状況が続いていました。そんな中、2013年に、創業以来一緒に働いてきた幹部職員2名が同時に退職するという大事件が起こります。
経営指針の確立

「本気でつぶれるかもしれない」との危機感を抱いた米田氏は、それまでのトップダウン・トッププル型の経営から、職員が自立的・自発的に働く体制へと移行するため、社内でワークショップを実施。問題点や改善点などを抽出し、職員一人一人との面談や、事業部ごとに中長期方針・計画の作成を行い、A4で4枚程度でしたが初めて職員と一緒にまとめた経営指針書ができました。
「設立当初は典型的な『働きがいブラック企業』だった」と振り返る米田氏。当時の職員の平均勤務時間は11時間50分で、職員は疲弊し、マネジメントにも無理・無駄がありました。2018年ごろからは働く環境づくりにも取り組み、ひと月196時間ほどかかっていた事務処理は「kintone(キントーン)」を導入することで50時間を切り、現在では平均勤務時間が8時間50分まで削減されました。また、2023年3月には5.8%のベースアップを行い、職員の平均年収は県内で10位前後の大手企業とほぼ同じ水準となっています。
幹部職員の退職が社内変革の契機となり、その後は劇的に業績が改善。2023年3月には創業19年目にして初めて売上が3億円を超え、経常利益率は10.7%。経営指針を社員と共に作成し、PDCAが回り出したことで、業績回復が結果として表れるようになりました。
「現在20代の障害者が高齢者になったとき、その人たちの看取り支援をするのは現在の新入社員の孫世代です。その人材を確保するためには、新卒採用を継続して、人が辞めない組織をつくらないといけません。それによって、ミッションとして掲げている障害者のライフサイクル支援の達成実現をめざしていきます」と熱く語る米田氏。”ごきげん“に働く職員と共に、幸せな地域社会づくりに邁進し続けています。
NPO法人家族支援フォーラム | |
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設立 | 2003年 |
事業内容 | 社会保険・社会福祉・介護事業、老人ホーム、障害者福祉事業 |
社員数 | 45名(常勤職員29名、非常勤職員16名) |
所在地 | 〒791-8012 愛媛県松山市姫原2丁目3-21 |
URL | https://kazoku-yumepoke.com/ |