【第27回】地域に必要とされ、社員がいきいきと働く企業づくりへの挑戦 ~技術力を生かしたモノづくりでポストコロナを乗り切る~ (有)日本スエーデン 代表取締役 山本健二氏(静岡)

(有)日本スエーデン 代表取締役 山本健二氏(静岡)

 (有)日本スエーデン(山本健二代表取締役、静岡同友会会員)がある静岡県静岡市は、かつて東海道の中心として各地の流行が伝わり、数多くの履物メーカーが存在していました。同社は1973年に設立され、地場産業である履物の抜型製造業を生業としてきました。しかし、1990年代ごろから履物の生産は、中国やカンボジアに生産拠点が移り、国内での製造が減少。1991年に先代の父から会社を引き継ぎ、代表取締役となった山本健二氏は「新たなビジネスモデルを創造しなければ、この業界で生き残ることは難しい」と自社で何ができるのか考え始めました。

自社の技術力を活かした革製品ブランド

 幾度となく顧客である靴メーカーと共にヨーロッパで開催していた革の展示会に行く機会があり、「革製品の製造であれば、革の知識と抜型の技術を生かせるかもしれない」と2003年に自社ブランドの革製品製造をスタート。さまざまな展示会に出展・発信していきました。さらに、抜型とは別にデータをもとにカットする小ロット多品種生産が可能な裁断設備を導入、アナログな職人技術を守りながら、デジタル技術を融合させていきました。また、県外の営業・販売拠点として2004年に東京の浅草に営業所を開設。現在は革製品製造販売や金型製造、縫製事業などを中心に手掛けています。

職人から経営者へ 〈向きあい続けたことで変化した社員への思い〉

 先代から引き継いだ当初、社員はすべて職人でした。「背中を見て技術を覚える」が当たり前で、共育ちや励まし合うような関係性ではありませんでした。社員から不満が出るとすぐに社員を集め「辞めたければ辞めてかまわない」と伝えるなど、「給料を払ってやっているのだから」と社長が上で社員が下をやり続けていました。

 自社に経営理念やビジョンがないことを不安に感じ「理念やビジョンを創りたい」と2016年に静岡同友会に入会し、すぐに経営指針を創る会(以下、創る会)を受講しました。ここでの学びは、確かに自社の方向性を明確にすることができました。しかしながら、深く染みついた職人としての考え方は、同友会の「労使見解」を理解し、本当の意味で実践するには苦労しました。その後、2019年に創る会会長に就任。受講生や修了生の思いに向きあい、自社と照らし合わせて考え続けたことで「経営理念の三要素『社会性』『科学性』『人間性』はどれか一つ欠けてもうまくいかない」と気づかされました。そして、学びを継続する中、ようやく社員を心の底から愛おしく感じ、大切なパートナーに思える気持ちが芽生えてきたと話します。

4つの柱でコロナ禍を乗り越え、地域に必要とされる企業へ

 2020年2月に始まったコロナ禍で、革製品の売上、靴の抜型の依頼も減り、売上は三割減。会社を維持するために、新商品開発や新たな展示会の形、強みであるモノづくりをどう生かしていくかを考え続けました。「コロナ前から自社事業としていくつかの事業の柱を築いていたことで、リスクを分散し、コロナ禍を乗り越えることができた。自社の理念である『技とデザインで、人に感動を』を追求した結果」と山本氏は話します。

 革製品の販売顧客は都内を中心にあり、コロナ禍での売上減少は特に顕著に表れました。「地域の顧客に喜んでもらうビジネスをしたい」そう思ったのも、このコロナ禍から生まれたといいます。現在、新たな柱として、工場内にファクトリーショップを作る計画など地域でのビジネスモデルの構築に注力。地域顧客の創造や雇用創出など地域を意識したビジネスの展開に挑戦し、社員が豊かにいきいきと働く持続可能な企業づくりをめざしていきます。

㈲日本スエーデン
設立 1973年5月
資本金 300万
従業員数 5名
年商 7,000万
事業内容 スエーデン鋼抜型、革製品製造販売・自動裁断サービス、縫製事業
住所 静岡市葵区牧ヶ谷2450
電話番号 054-278-2761
URL https://nihon-sweden.com